Beverich ノンアル飲料で新たなライフスタイルを提案

ノンアルコール・低アルコール飲料専門のECサイトを運営しているBeverich(ビバリッチ)。創業者の木下慶氏は自身が禁酒をし、生活スタイルが豊かに変わったことが事業の着想となった。飲酒がもたらすリスクや飲まないことのメリットを伝えながら「新たな選択肢を増やしていきたい」と語る。

木下 慶(Beverich株式会社 代表取締役)

国も動き出した
飲酒リスク対策

飲酒は、生活習慣病やうつ病をはじめさまざまな健康障害のリスク要因となっている。WHO(世界保健機関)が2018年に発表した飲酒に関する報告書によると、年間300万人がアルコールの有害な使用のために亡くなっており、全死亡に占める割合は5.3%に上るとしている。

厚生労働省は2013年から行っている国民健康づくり運動「健康日本21」で飲酒(アルコール)において、①生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者(一日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の者)の割合の減少、②未成年者の飲酒をなくす、③妊娠中の飲酒をなくす、という3つの目標を設定。飲酒に関する正しい知識の普及啓発などに取り組んできた。

このような世の中の潮流があるなかで、Beverich(ビバリッチ)は「アルコール以外の飲み物の選択肢を増やしたい」という考えのもと、ノンアルコール・低アルコール飲料のECサイトを運営しており、ノンアル・低アルのクラフトビール、ワイン、ジンなど多彩な商品をそろえている。

自らの禁酒経験を機に
事業を着想

創業者の木下慶氏は、NTTデータにシステムエンジニアとして入社した後、スタートアップ企業でソフトウエアエンジニアを経験。少人数で事業を動かしていく醍醐味にひかれ、その後メルカリでフリマ事業のプロダクト責任者などを務めた後に創業した。自身お酒が好きでよく飲んでいたが、創業に費やす時間とエネルギーを考えたときに、禁酒をすればそれがつくりだせるのではと思ったという。「飲んでいる時間そのもの以外に、翌日の体調にも影響が残ることを考えると禁酒のメリットは大きい」。

さっそく実践に移して効果を体感したことから事業化の検討を始めた。ノンアル飲料を試してみると、市場にほとんど流通していない海外産がおいしく品ぞろえも充実していることが分かった。一方で、若者を中心にアルコール離れが進んでいる現状も知った。「この供給と需要のギャップにこそチャンスがある」と目をつけ、海外産ノンアル・低アル飲料を扱うECサイトを立ち上げたのが、2023年1月のことだ。

Beverichが販売する、スコットランドの首都エディンバラにあるノンアルコールクラフトビール専門の醸造所が生みだしたBRULO(ブルーロ)。ダブルホップIPAやスタウトなど、多様なスタイルを楽しめる

高齢者、女性の開拓も

利用者層は男性6割、女性4割で,「30~40代男性」の層が最もボリュームを占め、「30代女性」が続く。「30~40代男性については、私のようにもともとお酒を飲んでいたけれど年齢とともに控えようと考えるようになった人が多いのではないでしょうか。30代女性については、妊娠してお酒をやめたいと思ったときに代わりの飲料を探しているのではと考えています」と話す。

とくに人気が高いのはノンアルクラフトビールで「ここまでIPAのような強いホップ感のあるノンアルビールがあるとは」という感想が寄せられており、「これまではビールを我慢きなかったが、これで止められそう」といったコメントも書き込まれている。

醸造所は「味気ないノンアルコールビールに革新をもたらす」をミッションに、原材料と味にこだわり抜き、毎年新しいユニークな商品を世の中に提供している

ノンアル・低アル飲料の場合、ターゲットとなるのは飲酒経験のない人ではなく、飲酒経験があり、おいしいお酒の味を知っているだという。そこで次に開拓したいと考えているのが高齢者と女性だ。「お酒が好きで飲んできたものの、体を壊して飲めなくなってしまった高齢者のなかにお酒の味が忘れられないという人が多くおられます」。また、厚生労働省は「健康日本21」で、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」を、1日当たりの純アルコール摂取量が男性で40g以上、女性で20g以上と定義し、女性の方が飲酒リスクがより高いことを示している。「社会進出が増えるとともに飲酒する女性も増えていることから、飲酒のリスクを認知した女性にはノンアル飲料が有効な手段になりうると考えています」。そこで近年は女性に人気の高いハーブティなどのラインナップも増やしている。

知識の浸透へ
情報発信にも注力

木下氏が禁酒をしたときには周囲には「なぜやめるのか」という声が多く、飲酒がもたらす害や時間やエネルギーが奪われることをいちいち説明しなければなならかったという。そこで、知識の浸透が必要と考え、ブログを通じて禁酒のメリットや、欧米で進んでいる「禁酒チャレンジ」のプログラムなどについて発信している。飲酒の記録を可視化し禁酒をコーチングするLINEアプリの提供も行っていたが現在は休止中で、先々に再開することも考えている。今後はECだけでなく百貨店や小売店などに卸し、ノンアル・低アル飲料の認知をさらに高めていこうとしている。

国は飲酒に伴うリスクに関する知識の普及の推進を図るため、1人ひとりの状況に応じた適切な飲酒量・飲酒行動の判断に資する「飲酒ガイドライン」の作成を進めている。そこでも触れられているように飲酒にはそれぞれに適切な飲酒量がある。「私も今はたまにお酒を飲むようになりました。お酒はコミュニケーションが円滑になるなど良い側面もたくさんある一方、飲まない時はジムに行けるし、好きな車で行動する機会も増えました」。そして、「お酒を飲むことはできるが、リスクもふまえ飲まないという選択をすることを『ソーバーキュリアス(sober(酔ってない、しらふの)とcurious(好奇心が強い)を組み合わせた造語)』と呼んでいますが、それにかわるわかりやすい言葉を見つけて発信したい」とも語る。

最後にウェルビーイング事業を立ち上げるポイントについて「世の中が抱えている課題やトレンドをつかみそこに乗ること。しかもそれが社会にとって良いものであればビジネスとソーシャルグッドを両立できる」とアドバイスを送る。

 

木下 慶(きのした・けい)
Beverich株式会社 代表取締役