KochiAmigo ありのままの日本に触れる感動の旅
高知県をメインフィールドとしたガイド付きインバウンドツアーの企画・運営を行っているKochiAmigo。欧米豪の富裕層を対象に、豊かな自然と昔ながらの生活を体験するありのままの日本を紹介するコンテンツの満足度は高く、今後のインバウンドツアーの一つのあり方を提示している。
長川 雅夫(KochiAmigo株式会社 CEO)
海外から見た日本の良さを
再発見したことがヒントに
KochiAmigoが提供するツアーは外国語が堪能なガイドが随行する。自然や風景を目で楽しむだけでなく、地域の人々の暮らしや文化、伝統に触れ、日本の良さを体感してもらうためだ。例えば、しまなみ海道から愛媛県の松山を抜けて、四国カルストを経て高知市内を巡り、最後に徳島県へ抜ける1週間で四国一周ツアーでは、参加者はガイドと共に小回りの利く電動アシスト付き自転車「e-bike」で移動する。伴走するサポートカーには地域特産のフルーツやお菓子などを積み込んでおり、景色の美しい場所で休憩を取りながら、地元の味覚を楽しんでもらう。

美しい風景や雄大な自然を満喫
CEOの長川雅夫氏は「参加した皆さんは異口同音に、本当の日本と触れ合うことのできる四国に来て正解だったと言われます。四国カルストの雄大で美しい風景に感動し、涙を浮かべた方もおられました」と、参加者の満足度の高さに手ごたえを感じている。
長川氏は会社員を経て、30歳の時に海外へ移住しグアテマラの日系道路工事会社で事務兼通訳を務めた。グアテマラの要人の日本訪問に付き添う経験などを通じ「海外から見た日本は安全で美しくて伝統のある国であることを再発見した」という。その後、アフリカで日本の機器を使った工場の立ち上げに携わったが、子どもが生まれたこと、コロナ禍に見舞われたことを機に日本へ戻ることを決断。「コロナが明ける3年後に、日本に強いあこがれを持つ富裕層を対象にした観光事業を立ち上げよう」と考え、それまでに観光業界を学び人脈を作るため、地域おこし協力隊に参加して高知県に移住した。
「高知にはそれまで縁がなかったのですが、急峻な四国山地の南にある高知県には、四国の中でも自然、文化、伝統が残されており、人もオープンマインドで、その魅力にひかれました」
2022年10月、富裕層向けのインバウンドツアー事業を展開するKochiAmigoを設立。フリーのツアーではなく、ガイド付きに特化したのは、長川氏自身が世界各地の、いわゆる人気観光地ではない地域を好んで旅してきた経験から、ガイドと共に地域を巡ることに意義があると考えたからだ。
「ガイドに案内してもらうことで、地域の人々の営みが見えることに価値を感じました。日本人旅行者は有名な観光地を訪ねたという足跡を残したいと考える傾向にありますが、海外の、特に知的好奇心の高い方の多い富裕層は、観光化されていない本当の日本の姿からその伝統的な知恵や習慣を知り、さらには経験したいという、日本人とは全く異なる旅行観を持っています。そういった方々に向けて、安全で美しい日本を楽しんでもらうツアーを提供しようと考えました」

日本でしかできない「体験」を提供する
大きな人気レストランより
温かみのある小さな食堂が人気
ツアーの基本コンセプトに変わりはないが、見直したこともある。当初、食事はできるだけラグジュアリーなレストランで取っていたが、あるときビーガン対応を相談したところオペレーション的に難しいとの回答だった。そこで、個人経営の小さな食堂に依頼しビーガン食を提供してもらったところ、参加者の評価が非常に高かった。「人の顔が見えない立派なレストランよりも、ローカルの人がローカルの食材を使い、想いを込めた暖かいおもてなしが参加者に喜ばれる」ことを実感し、店選びの考え方を改めたという。
また、ツアーには地域の伝統文化や農業、ものづくりなどの体験プログラムも入れている。プログラムを提供する地域の人々には「研修や商談のような堅苦しい説明はせず、久しぶりに訪ねてきた昔の友達に話をするように、自分が感動したことを、情熱をもって説明してほしい」と伝えている。参加者には普段の飾らない会話こそが価値だからだ。
こうした交流を通して、長川氏が感じているのは地域にはツアーに組込みたい魅力的な人々が多くいることだ。
「海外ゲストに感動を与える知恵や価値観を持っているのは60~70代の方々。頑固さに苦労することもありますが、実はとても謙虚で芯が強い素晴らしい方々が多い。また、20~30代にも従来の価値観に問わられず、地域の魅力や価値を再発見して様々な活動に取り組んでいる方が多くいらっしゃいます。当社がインバウンドゲストを連れていくことで、ローカルプライドの形成に貢献できれば嬉しいです」
インバウンドツアーを
シフトチェンジするとき
KochiAmigoのツアー参加者は欧米豪がメインで、中でもイギリス、オーストラリア、カナダからの参加が多い。費用は1週間で50万円程度かかるため、参加者には50代以上の、経済的に余裕のある人が多い。ツアーに同行するガイドとは「お客さまが満足し、また来たいと思ってもらえるようにする」という目標を共有している。
「ツアーの最後にはガイドも参加して、居酒屋で打ち上げをしています。オーストラリアから参加した60代男性6人の同級生仲間の一行は、我々ガイドへの感謝の気持ちや四国の自然に対する感動を、松山城でガイドした俳句にしたためて一人ひとりが表現してくれました。うれしかったですね」

ツアーの最後には居酒屋で打ち上げ
集客は現状、海外の代理店にゆだねているが、ホームページを改修して直接集客したいと考えている。また、参加者からは「ローカルの人と過ごした時間が一番楽しかった」との感想が多く寄せられることから、体験プログラムをさらに充実させる方針だ。
会社設立から2年半。観光業を取り巻く環境は日々変化している。長川氏は「観光立国を実現するにはシフトチェンジが必要」だと訴える。
「海外の富裕層はバスでお定まりの場所を巡る画一的な団体旅行は望んでいません。質の高いガイドが一人ひとりの旅行者にフォーカスして好みを把握しながら人間関係を作り、地域の魅力を丁寧に伝えていけば、日本を好きになって何度も来てくれるはずです」

ローカルの暮らしや文化を知ってもらうためにはガイドの存在が重要