能作×日本シグマックス 指関節固定リング「ヘバーデンリング」

2023年10月、日本シグマックスより、錫製の手・指用副木「ヘバーデンリング」の販売が開始された。中高年女性に多い指の疾患、へバーデン結節に悩む人のための固定具ながら、錫という金属製のおしゃれな見た目も印象的な製品だ。開発した富山県の企業・能作と販売を担う日本シグマックスに話を聞いた。

錫製品を生み出したのは
伝統と革新的アイデア

へバーデン結節は指の第一関節に発症する疾患のことで、関節の変形などにより曲げ伸ばしの際に痛みを伴う。根治療法は確立されておらず、痛みを緩和するために薬を使ったり、関節をできるだけ動かさないよう固定したりする。固定は粘着テープ等によるテーピングが一般的だが、濡れれば取り替える手間がかかる。「ヘバーデンリング」は金属のためその必要がなく、錫の柔らかさを活かしたフレキシビリティが特長。指輪のように通してはめるのではなく、平たい状態のものを自分の指に合わせて曲げて装着できることは、関節の疾患に使うには重要な要素だ。

開発したのは富山県高岡市に本社を持つ能作。1916年創業の、108年の歴史を持つ鋳物製造企業である。高岡銅器の技術を今に受け継ぎ、真鍮の仏具や茶道具、華道具を中心に製造してきた。2003年に始めた錫100%製のテーブルウェアやインテリア用品等は国内外で高く評価され、現在は国内16、海外1の直営店舗と約300の小売店で販売されている。本社工場では工場見学や鋳物製作体験ができ、能作製の錫食器で食事を楽しめるカフェも併設。代表取締役社長の能作千春氏は「様々なチャレンジを行って伝統産業に轍を付けていくことがモットー。人々に幸せで豊かな暮らしを提案できるサービスを提供しています」と話す。

株式会社能作 代表取締役会長の能作克治氏(写真右)と代表取締役社長の能作千春氏

「20年以上前に錫100%の製品開発に挑戦したのは、それをやっている企業が世界に1つもなかったからで、これはおもしろいと思いました」と話すのは、代表取締役会長の能作克治氏だ。誰も作っていなかった理由は錫の柔軟性にある。

「ぐにゃっと曲がってしまうし、削ろうとしても、粘土を削っているようにヤスリが目詰まりするので加工が難しいんです。しかし、鋳物の技術をしっかり保っていれば、1mmの厚さの皿を作ることもできる。曲がるのであれば、曲げて使うものを作ればいいという逆転の発想でした」(克治氏)

大切なのは、いかに良い鋳型を作れるかだと克治氏。100年以上受け継いできた伝統技術に革新的技術やアイデアを融合させながら、消費者のニーズに合わせたものづくりを行っている。

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