高付加価値を生み出す大胆な改革 未来を実現する小売業DX

コロナ禍を経て、日本の小売業でも、サービスや業務プロセスを刷新し、店舗運営や流通の在り方を変革しようと取組が始まっている。日本小売業協会は、小売業のDXの課題とその解決について、経営層向けの提言を公表している。さらに海外では、サプライチェーン最適化の検討が始まっている。

河合亜矢子 学習院大学 経済学部 教授

日本の小売業が抱える
サプライチェーンの課題

人手不足、物価高などの課題のもとで事業を成長させるため、日本の小売業においても、他の業種と同様にICT化、デジタルトランスフォーメーション(DX)が急務となっている。日本では、流通近代化を背景に1960年代~80年代にかけ流通研究が活発に行われ、情報技術の活用が進んだ。当時の日本の小売流通業の情報化は世界でも最先端を行くものだったと、20年以上にわたってサプライチェーン・マネジメントをテーマに研究に取り組んできた学習院大学教授の河合亜矢子氏は振り返る。

「ただしその後、イノベーションのジレンマに陥りました。当時の先端システムがアップデートされず、劇的な進化を遂げた海外から見ると時代遅れになっているのが、今の日本の状況と言えます」。

この状況を踏まえ、危機感から立ち上がったのが、流通・小売の経営者、有識者により構成される日本小売業協会の「CIO研究会ステアリングコミッティ」。学術関係者として河合氏も名を連ねる同ステアリングコミッティでは2021年3月、日本の小売業CEO、CIOへの提言書として「リテール4.0 小売業のデジタルトランスフォーメーション」を発信した。

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