地方百貨店トキハの挑戦 顧客の生涯価値向上を目指す
大分県唯一の百貨店で、間もなく創立90周年を迎えるトキハ。人口減で経営環境は厳しいが、「ふるさとのトキハ」をアイデンティティに、新ビジネス創出や地域連携を模索する。新しく就任した酒井社長のもと、長期ビジョンに基づく4つの戦略で、地域に根付く百貨店の進化を図る。

酒井 祐一(トキハ 代表取締役社長)
トキハは来年で創立90年を迎える大分県唯一の百貨店だ。人口減少が進み、地方の百貨店を取り巻く経営環境は厳しさを増しているが、トキハでは、「ふるさとのトキハ」というアイデンティティをベースにしながら、長期的な視野に立った人材教育による新事業創出や、地域の企業と連携したイベント開催などを通して地域に根付く百貨店の新しい姿を模索している。
大分市中心部のトキハ本店。大分駅前から始まる中央通りのランドマークになっている
時流をとらえた
「地方百貨店の雄」
トキハ本店は1935年4月、大分県で2番目の百貨店として開業した。54年には、地方の百貨店としては岡山県の天満屋に次いで2番目に、バスターミナルを併設した百貨店として再整備。その後大分市が新産業都市に指定され、産業の集積とともに人口が急増し大手資本スーパーの進出が相次いだことに対抗し、75年には大幅に増床し、スーパーに並ぶ商品までを幅広く扱うようになった。85年には隣接地に文化発信スペースとしてトキハ会館をオープンしている。
88年には2店目の百貨店として別府店を温泉観光地の別府市内に開業。さらに2000年には、百貨店が手がける初のショッピングセンターとして話題を呼んだ「わさだタウン」を大分市郊外に開業した。「1980年代から90年代にかけては、東京の百貨店の動きをいち早く取り入れて、デザイナーズブランドやスイーツの品ぞろえを充実させました。わさだタウン建設時には郊外の時代を見越して大型駐車場を整備したほか、集客力のあるテナントの巨大店舗を誘致するなど、ハード面だけでなくソフト面でも先進的な取り組みに挑んできました」と、2024年5月に同社社長に就任した酒井祐一氏は、同社の進取の気風を強調する。そうした取り組みから当時は「地方百貨店の雄」の名をほしいままにした。
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