セーフィーの調査サポートサービス「Safie Survey」を藤沢市が導入
変化の激しい現在において、最新の状況をデータとして把握することは重要度が増している。そのなかでセーフィーはAIを活用した調査サービスを提供し、コストや時間の効率化を実現。藤沢市は駅の再整備に伴い、同社に調査を依頼し、そこから見えてきた実態をもとに新たなまちづくりを行う。
デジタル技術の活用で
課題解決を目指す実証事業
神奈川県藤沢市は2022年に「藤沢市DX推進計画」及び「藤沢市スマートシティ基本方針」を策定した。前者は国が定めた自治体DXの方針をもとに同市の特性を考慮して具体的な取り組みをまとめた計画であり、後者は新しいテクノロジーや各種データを活用した都市のデジタル化を進める方向性を示したものだ。いずれもデジタル技術の活用がベースにあり、行政や環境を改善する狙いがある。
これらの政策を策定した背景について、同市市長室共創推進課主査の小野広士郎氏は次のように話す。

藤沢市市長室 共創推進課
主査 小野 広士郎氏
「現在は日本全国で課題が多様化し、今後ますます複雑化していくことが考えられます。人材も不足するなかでデジタルを活用して持続可能な形を模索したいという思いと、暮らしの中に根付いているデジタル化に行政サービスも取り残されることなく、住民の皆様からの期待に応えたいという思いがあります」
これらの取り組みの1つとして同市は「スマートシティ推進実証事業」を実施している。行政が抱える課題の解決に向けて、どのような技術が適しているかを実証したうえで実装することを目指す事業であり、公募形式で官民連携によるまちづくりを行う。
「既存サービスでは対応が難しい、行政での活用に適さないなど、様々なケースがありますが、藤沢市ではデジタル技術を活用した課題解決に1つひとつ挑戦していきます」
藤沢駅南口の再整備へ
人手による調査は困難
2024年に同市が採択した実証事業は「ICTを活用した交通量調査」だ。藤沢駅の再整備が進むなかで、南口駅前広場の外周デッキとロータリーの一般車乗降場の2か所にセーフィー社のクラウドカメラを設置し、同年10月から約1カ月間にわたり人流・交通量の映像を取得して調査を実施した。
外周デッキを見渡することができる柱に取り付けられたSafieのカメラ
外周デッキを行きかう人たちをクラウドカメラで録画をする。分析では人数だけでなく、属性も可視化していく1
「今回の再整備において小田急駅舎の改良に合わせて、外周デッキの一部を改修します。今回つくりかえるのにあたり、実際にベビーカーや車いす、杖を使う方の利用実態を把握することが目的です。これまでも交通量調査はしていましたが、通行者数のカウントだけで、使用する用具別のデータはありませんでした」と話すのは、再整備事業を担当する同市都市整備部 藤沢駅周辺地区整備担当 主任の大山健太朗氏だ。

藤沢市都市整備部 藤沢駅周辺地区整備担当
主任 大山 健太朗氏
もう1つの対象である一般車乗降場はロータリー内から隣接する道路へと移転することが検討されている。その理由は、南口の駅前広場はどちらかというと車両中心の広場になっていることがあるという。再整備では「人の賑わい」をテーマの1つに設定し、歩行者の滞留空間を広く設ける計画を立てている。
左)ロータリーの一般車乗降場にもセーフィーのカメラを設置。車の停車時間などもデータ抽出することが可能
右)セーフィーのカメラによる調査イメージ
「そもそも乗降場がどれほど利用されているのかという疑問がありました。人手による調査はしていましたが晴天時の1日、日中のみの調査で、雨天時や曜日別などの細かいところが見えていませんでした。雨天時に職員による調査を試みたことがありますが事前に日程を設定しても雨が降らなかったり、別日に雨が降ったとしても、他の業務と重なり実施ができないなど、ピンポイントの調査は困難です。調査会社に依頼する方法もありますが、予算が限られている中での調整は簡単ではありません」(大山氏)
セーフィーが提供する
調査サポートサービス「Safie Survey」
これらの課題があるなかで、藤沢駅南口における交通量調査のパートナーとして採択された事業者がセーフィーだ。クラウドカメラを展開し、現場DXを推進するサービスベンダーであり、AIと映像を掛け合わせることで業務や調査の効率を格段に上げることを可能にしている。
藤沢市が今回、活用したサービスは同社のクラウドカメラとAI解析を利用した調査サポートサービス「Safie Survey(セーフィーサーベイ)」。人や車のカウントだけでなく、多様な調査対象を含めることが可能。調査については利用目的を特定し、顧客の要望をもとに調査対象や分析内容を柔軟にカスタマイズできるところが特徴だ。
現在はAIの存在感が日に日に増しているが、AIを活用すれば全てが解決するわけではない。特に映像においてAIは画角や映り込む光の量などの環境条件によって精度が変わる。それに対して業務ごとに個別開発することは可能だが、期間限定の短期調査で、コスト面で見合わないことが多々ある。そこで同社は人の目でも同時にカバーしながらAIと掛け合わせて高精度のアウトプットを出すことを強みにしている。
人手による調査と比べて
コスト数倍の差がある
藤沢市がセーフィー、および「Safie Survey」を採択した要因について、小野氏は次のように振り返る。
「今回の取り組みは実証事業でチャレンジの要素が強く、精度やコストの見通しをたてることが困難でした。その不安があるなかでセーフィーは、今回の要件に合わせた画像認識を行いAIに学習させて実施するなどプロセスの説明が丁寧でした。さらに、クラウドカメラの特性を生かし、録画した約1カ月間の映像の中から晴天時、雨天時、土日、平日などの取得したい情報の期間を指定ができ、必要な部分のみ調査が可能な形の提案だったことが採択の決めてになりました」
採択後、調査対象である外周デッキと一般車乗降場の2カ所にセーフィーのカメラを設置し、約1カ月間の映像取得と調査を実施した。外周デッキの交通用具別データやロータリーにおける車の停車時間など、同市が抽出を希望するデータを選定し、それをセーフィーが分析し、統計情報をレポートとして提出している。
「人力で連日の調査は困難で、コストを考えても数倍の差が生まれます。また、通過車両・停車車両・停車時間を人力で調べようとしたら大変で、より多くの人手が必要になります。AIカメラを活用し省コストで正確に調査できることに有用性を感じました」(大山氏)
調査結果をもとに藤沢市は現在、駅南口の具体的な再整備の方向性を検討している。これまで不透明だった実態を把握したことで、最適な方法へとたどりつく手応えを大山氏は感じている。「外周デッキはベビーカーや車いすの方の利用は多くはなかったものの、一定数の方に利用されていることを確認しました。完全なバリアフリー基準に合わせた整備ができるか、またそれが難しい場合は別の経路へとわかりやすく誘導するなど、方向性が明確に見えてきました。一般車乗降場でわかったことは、利用台数は朝が一番多く、停車時間が長いのは夕方ということです。朝は送りなのですぐに通過しますが、夕方はお迎えで待つ車両が多いことから長くなります。私たちも夕方の渋滞がひどいと感じていて、その根拠をデータで示すことができました。長時間の停車がロータリー内の交通負荷を増大させているので、外側の道路に乗降場を設置して、そのうえで停車時間を減らす方法を考えていきたいと思います」(大山氏)
大規模な調査は5年に一度
最新データを手軽に取得
デジタル技術の活用により社会課題の解決を目指す藤沢市にとって、今回のセーフィーとの協業は、それを明確に示す1つの実証事業となった。このチャレンジにより、さらに新たな展開が期待されている。
「今回は初めての試みでした。市の施策に新しいデジタル技術を導入するには、本当にできるのか、費用対効果は見込めるのか、など、市民に対して十分に説明できるものでなくてはなりません。一方で、今回のような初めての試みでは 根拠となるデータや参考事例に乏しく、従来の行政の考え方では実現が困難でした。そのような中、この補助金制度を活用して行った今回のセーフィーのカメラの取組は、庁内の部局間で共有するのに十分な成果を得られたと捉えています2。例えば、まちづくりの部署だけではなく、福祉系の部署でも新たにセーフィーのカメラを使ってデータを取得し、分析・活用できる可能性があると考えています」(小野氏)
大山氏は最新データを手軽に取得できたことで、関係者からの理解が得られやすくなると考えている。
「大規模な交通量調査は5年に一度など期間が空いてしまい、関係者に説明するときもデータが古いのではないかと言われることもあったので、それの解決につながりました。さらに、これまでできなかった使用する用具別や停車時間を含めた交通量調査ができたことは大きく、今後はデータに基づくまちづくりとしての施策の幅も広がると思います。南口の再整備は今回の調査結果が得られたことで検討がしやすくなりました」(大山氏)
最後に改めてセーフィーとの協業を振り返り、「人手による調査は限界がありますが、長期間の調査もクラウドカメラとAI解析を使えば可能になることがわかりました。今後は精度の向上や分析手法の向上がされることで、そのニーズはさらに多岐にわたると感じています」と大山氏。激変する環境に対して最適な手段を求められる自治体において、セーフィーのクラウドカメラとAI解析を利用した調査サポートサービス「Safie Survey」は存在感を増していきそうだ。
1映像の活用は事前に特定した利用目的に必要な範囲で行い、被撮影者個人を追跡することは行いません
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