京都府亀岡市 経済循環型ゼロカーボン亀岡の実現を目指す

2021年に「かめおか脱炭素宣言」を発表した京都府亀岡市。農地などの地域資源の有効活用、企業との連携、そして市民一人ひとりの意識改革を柱に、2050年のカーボンニュートラル達成への取り組みを加速させている。世界に誇れる環境先進都市を目指す、亀岡市の構想に迫った。

山城 一毅
(亀岡市環境先進都市推進部環境政策課環境政策係 係長)

保津川での清掃活動が
環境意識向上のきっかけに

京都市の西隣に位置する亀岡市は、保津川下りやトロッコ列車、湯の花温泉などの観光スポットや明智光秀ゆかりの史跡が多く、観光資源に恵まれた地域だ。一方で、府内有数の規模を誇る穀倉地帯でもあり、京野菜の産地「京の台所」としても知られている。

同市はこうした自然環境をポテンシャルとして活かし、豊かな自然環境を未来に引き継ぎ、暮らしと社会を持続可能なものとしていくため、環境・経済・社会の三側面の総合的取組の推進によるまちづくりに取り組んでいる。「その原点は20年以上前に遡る」と、亀岡市環境先進都市推進部環境政策課の山城一毅氏は語る。

「保津川下りの船頭さんたちが有志で河川敷のゴミ拾いを始めたことがきっかけとなり、市民の環境意識の高まりにつながっていきました。当初は、レジ袋やペットボトル、農業用のマルチシートなどが多く捨てられ、たくさんのプラスチックごみが漂着していたと聞いています。個人の活動だけでは追い付かないほどでしたが、活動は市民や事業者を巻き込んだムーブメントになっていき、2018年の『かめおかプラスチックごみゼロ宣言』へとつながっていきました」

まずは、国よりも約11カ月早くレジ袋の有料化を決定した。さらに、亀岡市、亀岡商工会議所、金融機関等を株主とする、府内発の自治体新電力会社「亀岡ふるさとエナジー株式会社」が誕生。市内3カ所から電力を調達し、公共施設を中心に供給を始めることでエネルギーの地産地消を目指す仕組みが整っていった。

同市が2020年にSDGs未来都市に選定されると、環境保全への取り組みはさらに加速。プラスチック製レジ袋が「有料化」から「提供禁止」となる条例や、「亀岡市ポイ捨て等禁止条例」も制定された。そして2021年には脱炭素社会の実現に向けて、市民や事業者とともに、市内のCO₂排出量実質ゼロの取組を加速させるため、「かめおか脱炭素宣言」を表明するに至る。

バックキャストで描いた
環境と経済が回る未来像

同宣言に基づいて2023年2月に発表した「かめおか脱炭素未来プラン」は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、温室効果ガスの削減目標と再生可能エネルギーの導入目標を設定し、バックキャストで具体的な取り組みへと落とし込んだ計画書だ。

「ゴールイメージは、亀岡の自然環境を活かし、地域循環経済共生圏としての亀岡ブランドが向上していることです(図)。まずは2023年度と2024年度の2カ年をかけて、調査やヒアリングを重ね、再エネ導入を促進するエリアおよび抑制すべきエリア等を法規制等と照らし合わせ区域分けをする『地域再エネ導入ゾーニング事業』を完了させました。地域と調和しながら円滑な再エネ導入につなげられるよう、市域を保全/調整/促進/導入可能性検討エリアに区分けしたのです」

図 「経済循環型ゼロカーボン亀岡」の将来像

恵まれた地域資源を活用した市域の脱炭素化、地域循環共生圏の発展と亀岡ブランドの向上を目指す
出典:亀岡市

そして、経済循環型ゼロカーボン亀岡達成のために採用されたのが、行政にはない先進的な知見や技術、着眼点を民間企業から募り共創するための民間提案制度だ。

2023年3月に採択された3事業のうちの1つ、NTTコミュニケーションズからの提案は、農地面積が広い亀岡市の特徴に着目し、農業領域でのカーボンクレジット創出とGXを組み合わせたもの。実証実験では、パートナー農家3組が水稲栽培における中干し(夏の暑い時期に田んぼの水を抜いて、土にヒビが入るまで乾かす作業)期間の延長によって、灌水により発生する温室効果ガスの削減に挑んだ。水田の地温・水位・水温・湿度・気温などのデータは同社が提供するアプリ「Green Natural Credit」との自動連携により、J-クレジットの申請まで一気通貫で行われる。これを亀岡市内の企業が購入すれば、地域経済が回るというわけだ。農家も収入が増えるので、新たな取り組みにチャレンジしやすくなる。

「行政単独ではアイデアだけで終わってしまうことが、大企業ならではの技術とノウハウをお借りして実現できました。参加募集は市が担当し、システムの詳細については技術力をお持ちの事業者に説明していただくことで、それぞれの強みを活かした共創になったと思います。農家さんからは、積極的にご質問をいただきました。2月に開催した説明会には40人以上にご参加いただきましたので、2025年度は申込者を増やしたいですね」

官民連携の施策を
市民とともに共創する

例えば下水道処理施設の年谷浄化センターでは、京都府で初の官民連携による民設民営の消化ガス発電事業を実施。下水処理の過程で出る消化ガスを市が事業者に売却し、事業者は処理場内に整備した発電施設を用い、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)により売電収入を得ている。

また、温室効果ガス削減については、マイルストーンとして2030年度に基準(2013年度)比50%削減という中期目標を掲げており、市域の排出量の半分以上を占める、運輸と民生部門の削減が急がれる。そこで民間からの提案を受けて設置を進めているのが、公共施設へのEV充電器の設置だ。充電インフラが拡充すれば、EV車普及やシェアリング導入を促すきっかけになるだろう。

「営農型太陽光発電設備の普及や、公共施設における自家消費型太陽光発電(PPA)などの再生可能エネルギーの導入に取り組んでいます。民間企業との共創に加え、市民の皆さま一人ひとりの着実な行動と協力なくしては、持続可能な取り組みにはなりません。2024年8月1日には、本市が取り組む環境施策を広く発信するとともに、「環境」をテーマとして多くの人々が集い、交流し、つながる場所として「Circularサーキュラー Kameokaかめおか Labラボ(正式名称:亀岡市環境プロモーションセンター)」がサンガスタジアム by KYOCERAの北側に誕生しました。これからも環境先進都市としての情報発信を強化し、地域の学校での環境学習、イベントなどを通じて、市民の環境意識向上と地域経済の活性化の両立を図ってまいります」

 

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