リアル産直プラットフォーム、わくわく広場 生産者の販路拡大を支援
タカヨシホールディングスが展開する「わくわく広場」は、登録生産者の商品を販売する直売広場だ。全国各地のショッピングモールなどに出店し、野菜や弁当、パン、調味料など多様な品が並ぶ。リアル店舗型のプラットフォームとして、事業を成長させたい生産者に販路を提供している。

大阪市中心部の巨大ショッピングモール、あべのキューズモール内のわくわく広場
ショッピングモールの一角で、産直野菜や地元飲食店の弁当を並べた「道の駅」のような店舗が増えている。タカヨシホールディングスが展開する「わくわく広場」だ。
ホームセンターの一角から
産直の店舗展開を拡大
タカヨシホールディングスは1970年に千葉県木更津市で創業した企業で、当初は事務機器を販売していたが、1980年代には千葉県を中心にホームセンターの運営を開始。一時期は書籍・CD・DVD販売やレンタルにも挑戦するなど、様々な事業を手掛けてきた。2000年にホームセンターの一角で、地元の農家の野菜を並べた農産物直売所を開始。これが、現在186店舗展開するわくわく広場のルーツになっている。2021年12月には東証グロースに上場、2024年4月1日にはホールディングス体制へ移行し、わくわく広場の運営は事業会社である株式会社わくわく広場が担うようになっている。
農産物直売所は、農家が生産した野菜を直接、消費者に販売する施設。卸や市場を通さないために、収穫から食卓に上るまでのリードタイムが短い。新鮮な農作物を、消費者はより安価に購入でき、かつ農家は市場に出すより高価格で販売できる。農家の自宅に併設している小さな無人販売所から、農協などが運営する大規模なものまでさまざまな形態がある。
わくわく広場は企業が運営する直売所であり、野菜以外の加工食品やパン、弁当も扱っている。委託販売という形をとり、ここで販売したい生産者は、登録すれば自ら値付けをした商品を売り場に陳列することができる。商品が売れれば、生産者には手数料を差し引いた分の代金が振り込まれる。初期費用は値札シール発行代と、店頭での納品時に被る生産者帽子代のみ。
「わくわく広場は、生産者に場所を提供するビジネスです。販売のためのプラットフォームという位置づけで、そこでいかに商売をするかを考えるのは、生産者にお任せしています」と、タカヨシホールディングス社長室室長の村山裕太郎氏は説明する。なお、生産者は自分で店頭に納品するほかに、わくわく広場の物流センターへの持ち込みや、全国の店舗への宅配便での納品も選択できるようになっている。
現在の登録生産者数は全国で3万弱にのぼる。登録しても出品のタイミングなどに決まりはなく、それぞれが出したいときに商品を出す。店舗周辺の農家や養鶏場、飲食店やベーカリーから、規模の小さい食品メーカーまで、登録者の顔ぶれは多彩だ。なお登録者の開拓については、ウェブでの募集の他、コールセンターから電話を掛けたり、個人事業主が多い農家は、直接訪問することもあるという。

わくわく広場に出品された様々な商品。生産者は消費者のニーズを読み取って商品をつくり、値付けして店頭に並べる。宅配便で遠隔地からの納品も可能
コレド室町にも出店
小規模事業者の新しい販路に
わくわく広場の展開は、ホームセンターを転換したロードサイド店を除くと、ショッピングセンター内が中心だ。エリアとしては、農家と消費者が近距離にある地域、都市近郊がメインだった。しかし最近では2024年3月に大阪市のあべのキューズモール、4月には東京中心部のコレド室町にも出店している。ショッピングセンターはそれ自体に集客力があること、しかしコストの観点から農家や小規模事業者は個別には出店が難しいことなどから、わくわく広場における委託販売のメリットが出やすい。
プラットフォームとしてのわくわく広場を積極的に活用している生産者には、事業を拡大したいという意欲が強い人が多いという。若手のシェフや外国人が運営している飲食店、直売でより売上を伸ばしたいと狙う農家などだ。例えば福岡市でマクロビオティック弁当を製造してきたあさひめ農園は、わくわく広場での販売をきっかけに千葉県八街市に進出するに至った。弁当の製造とデリバリーを手掛ける同社において、わくわく広場における売上は月間1千万円ほどに達するという。
全国に展開しているわくわく広場の店舗網を利用して、より広い地域に商品を届けるようになった事業者もある。埼玉県川越市の和菓子店・遊菓堂は、わくわく広場のネットワークを活用して全国的に和菓子を販売するようになった。
「人手、予算が限られる小規模事業者でも、宅配便などでの納品を活用すれば、容易に販路を広げられます。わくわく広場での販売から企業として成長し、スーパーやデパートなどと取引するようになった生産者も出ています」と村山氏はいう。
わくわく広場では、同じ商品が違う生産者から持ち込まれることも多く、自由な競争を促すスタンスをとっている。納品の際に店舗を訪れた生産者は、店頭の顧客の様子を観察したり、品ぞろえを日によって変えるなどの試行錯誤をして勝ち筋を探す。競争にさらされることで、生産者が切磋琢磨し、店頭に並ぶ商品の品質が向上することを期待している。
リアル店舗型プラットフォーム
運営の試行錯誤は続く
ネット通販の普及により、インターネットを利用した農産物の直売は定着しつつある。また、ネット通販の活用で大きく売上を伸ばしたという、規模の小さいメーカーのサクセスストーリーも珍しくはなくなった。これに対しわくわく広場は、実際に品物を並べて販売する直売所のネットワークを形成、ECとは異なる販路の選択肢を提示している。店舗の立地や、地元の主婦を中心としたスタッフが運営を担うという現在の事業形態は、様々な試行錯誤の末にできたものだと村山氏はいう。今後も、出店の増加と、流通額の拡大を目指していく。最近ではショッピングモールを運営するディベロッパー側からも、都市部や色々な立地の出店の提案が出るようになったという。
一方、ロードサイド店舗では、新たな取り組みとして2024年4月に「業務スーパー」を運営する神戸物産とフランチャイズ契約を締結したところ。産直品と併せて輸入食品や冷凍食品などを販売する、ハイブリッド型店舗をつくっていく計画だ。
「コロナ禍では飲食店のテイクアウト弁当を中心に強化していったのですが、現在は再び産直野菜に力を入れようとしています。また、食品にとどまらず、プラットフォーマーとしての更なる拡大も検討しています。生産者に対しては、消費者の生の声を聞けるプラットフォームとして、生産者のモチベーション向上に貢献していきたいです」。今後も、生産者が効率よく稼げるよう、挑戦を続けていく。