井上寅雄農園 欧州式のイチゴ栽培システムで生産性向上

年末から春にかけてイチゴはハイシーズンを迎え、あちこちの観光農園が賑わう。井上寅雄農園もその一つだが、代表取締役の井上隆太朗氏は集客だけでなく、農業情報の発信や農場の機械化などにも取り組んでいる。目指すは儲かる農業の仕組みづくりであり、農業の地位向上だという。

井上寅雄農園代表取締役の井上隆太朗氏

施設園芸最先端の地で考える
イチゴの旬と市場性

社名の井上寅雄は現代表を務める井上隆太朗氏の祖父の名前だ。当時は主にリンゴを栽培し、いずれそれを継ぐつもりだったが、収益性に乏しく生活するのに精一杯と言われ、一度は就農を断念する。その後、大企業が農業に参入していると知り、「農業には改善の余地があるのではと思ったのが本格的に事業承継を考えるきっかけ」になった。

高校卒業後は玉川大学農学部を経て、日本農業経営大学校へ進学。農業の状況や経営について学んだのち、現場を知るためにオランダに留学する。

「当農園は小規模で、近隣に競合が多いリンゴを続けるのは厳しいと思っていました。数ある農作物のなかでイチゴを選んだのは、隣の市にイチゴの観光農園があり、佐久市でもできるのではと思ったからです。そこで施設園芸の最先端をいくオランダに行き、現地農場で1年半働きながらイチゴの様々な品種や栽培方法を学びました」

当地の市場動向にも刺激を受けた。オランダでは6月から10月にかけて多様な品種のイチゴが出回る。本来、イチゴ栽培は寒冷期に不向きだが、日本ではクリスマスに向けて作付けをするため、冬から春が収穫の最盛期になる。また、オランダではイチゴは野菜のように気軽に買えるものだが、日本では嗜好品に近く、昨今は1粒1000円前後の高付加価値品にも注目が集まる。帰国した井上氏が選んだのは「オランダのように誰でも気軽に食べられるイチゴを作ること」だった。

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