産業団地から始めるGX 連携で進める脱炭素と地域成長の新たなかたち

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2026年4月3日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

“みんなで変わる”新しい脱炭素のかたち

近年、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」という言葉を耳にする機会が増えています。省エネルギー(省エネ)設備の導入や再生可能エネルギー(再エネ)の活用といった取組は広く知られるようになりましたが、「GXとは結局何が変わることなのか?」と感じる方も少なくありません。

GXとは、エネルギーの使い方や産業のあり方を大きく転換し、その成果を地域や企業の成長につなげていく取り組みです。現在、政府はGXに向けた投資の予見可能性を高めるため、「GX2040ビジョン」を示しています。同ビジョンでは、クリーンエネルギーの地域的偏在を踏まえ、「新たな産業用地の整備」と「脱炭素電源の整備」を効率的・効果的に進め、地方創生と経済成長につなげることを目指す「GX産業立地」の方向性が提示されています。

https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218004/20250218004.html
(「GX2040ビジョン」(経済産業省))

近畿経済産業局では、国の方針を踏まえ、企業単体ではなく、産業団地という“面”でGXを推進することに力を入れています。団地全体として効率的・効果的なエネルギーの活用方法を検討し、企業の成長にとどまらず、その成果を地域の雇用維持・創出や地域産業の活性化へとつなげていく―そのような実装を目指しています。

多様な企業が集積し、電力・熱の需要が大きく集まる産業団地は、GXの効果が見えやすく、地域全体への波及力も大きいです。いま、産業団地がGXの“最前線”になりつつあります。

「個社では限界がある」──だから“団地単位”のGXが次の一手に

日本の企業は、GXが注目される以前から、省エネに長年取り組んできました。資源エネルギー庁『エネルギー白書2024』でも、日本全体のエネルギー効率が大きく改善してきたことが示されています。

積極的に省エネルギーを推進した結果、製造業の生産1単位当たりのエネルギー消費(エネルギー消費原単位)は、1970年代後半から1980年代にかけて急速に低下しました。その後も、製造業全体の約4割を占める化学産業における原単位の低下などが寄与し、近年はCO2削減に対する社会的要請も相まって、エネルギー消費効率は改善傾向にあります。

(出典)資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」
(出典)資源エネルギー庁「エネルギー白書2024」
(注)原単位は製造業IIP(付加価値ウェイト)1単位当たりの最終エネルギー消費量で、「1973年度=100」とした場合の指数である。
(注)「総合エネルギー統計」は、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
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https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2024/html/
(「エネルギー白書2024」(経済産業省))

しかし、こうした省エネの努力を重ねた結果、個社で実施可能な省エネ対策は出尽くしつつあるとの声も少なくありません。

業務改善や設備更新を積み重ねてきたからこそ、今後は単独の企業努力だけで大幅な削減を図ることが難しい局面にあります。

そこで、近畿経済産業局が注目しているのが、産業団地でのGXです。

これは、複数の企業、自治体、エネルギー事業者、金融機関等が連携し、団地全体としてエネルギーを賢く使う仕組みを構築する取組です。

例えば──

(産業団地GX―省エネ)

  • 各社が個別に電力・熱を調達するのではなく、地域内で電力・熱を供給可能なコージェネレーション設備を共同導入することで、エネルギーの集約効果が生まれ、個社単独では難しい省エネを実現できます。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/other/cogeneration/
(コージェネレーション設備について(資源エネルギー庁))

(産業団地GX―再エネ)

  • 自社単独では、屋根面積と使用電力量の関係から太陽光発電設備(太陽光パネル)の導入が採算に合わず断念した企業であっても、団地全体を一つの大きな需要として捉えることで、規模の小さい立地企業でも導入が可能になります。
  • 併せて、他の立地企業ではより大規模な設置が実現しやすくなります。

こうした取組は、単独の企業では実現が難しいものの、団地全体であれば実現可能性が高まる取組ばかりです。

だからこそ、産業団地GXは、個社では得られない省エネ・再エネの効果を生み、環境価値と経済性の両立を図るチャンスとなります。

また、コージェネレーション設備や太陽光発電設備等の分散型電源は、運用次第では災害等による停電時に、工場等への非常用電力の供給が可能となる場合があります。このため、産業団地でのGXは、地域全体としてのBCP(事業継続計画)の実効性を高める取組にもなり得ます。

産業団地GX
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「思惑は一つじゃない」──多様な関係者を束ねる産業団地GXの現実

一方で、産業団地GXは決して自然に進むものではありません。産業団地には、立地企業に加えて、エネルギー事業者、金融機関など多様な関係者が存在します。それぞれがGXの必要性を理解しながらも、立場や条件、優先順位は大きく異なります。

立地企業にとってGXは、環境対応であると同時に、設備投資や操業に直結する経営判断です。企業ごとに事業内容や状況が異なるため、GXへの関心や取組の方向性が揃いにくく、団地全体として共通の目標を描きづらい現実があります。

一方、エネルギー事業者やGXソリューション提供側から見ると、産業団地内で関心のある企業の需要規模や複数社連携による取組の方向性が明確にならない限り、具体的な提案や投資判断に踏み出しにくいという課題があります。

既存産業団地GXにおける負のループ
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このように、

  • 企業側では「GXの方向性や価値が見えにくい」
  • エネルギー事業者側では「需要や規模が不透明なため、提案や投資を判断しづらい」

といった状況が重なり合い、誰か一者が消極的なのではなく、それぞれの思惑や制約が噛み合わないまま膠着してしまう構造が、産業団地GXに共通する課題として存在しています。

だからこそ、産業団地GXでは、技術やモデルそのもの以上に、関係者をどのように巻き込み、どの段階で何を共有し、どのように合意形成を図っていくかといった「進め方」が重要になります。多様な立場が関わるからこそ、その調整のプロセス自体が取組の成否を左右するのです。

本シリーズでは、こうした前提に立ち、産業団地GXに取り組む各地の関係者への取材を通じて、試行錯誤の過程や現場の工夫をお伝えしていきます。次回以降は、自治体などの視点から、関係者をどのように束ね、議論の土台を整えてきたのかを掘り下げていきます。

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近畿経済産業局 公式note