徳島県発ベアリング旋削加工企業 多角化とAI自動化で社会課題解決に挑む成長戦略
(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年3月25日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
徳島県北部のほぼ中央、四国最大の河川である吉野川の南岸に位置する吉野川市。合格祈願スポットとして知られるJR徳島線学(がく)駅の近くに本社を構えるヨコタコーポレーションは、ベアリングや自動車部品などの旋削加工で高い技術を誇り、日本のものづくりを支えている。さらに、FA(ファクトリー・オートメーション=工場の自動化)の開発設計、リユースストアの運営や住宅の外構・リフォーム工事と、事業を多角的に展開しているのも特徴だ。「社会的課題の解決」と「地域への貢献」を使命に掲げる同社は、時代の変化に対応しながら成長できるよう、常に挑戦を続けている。
モータリゼーションの進展とともに
ヨコタコーポレーションの歴史は、明治時代に、徳島県の名産品の藍反物を北海道に向けて、北海道の鯡粕(にしんかす)を県内で販売したことにさかのぼる。第二次世界大戦後はサツマイモ由来のでんぷんを製造していたが、軸受大手の県内進出に伴いモータリゼーションの進展をいち早く感じ取った初代社長が1960年4月、自動車に欠かせない部品の一つであるベアリングの旋削加工会社として横田精工(現ヨコタコーポレーション)を設立した。以来、工場を増設するなどして業績を伸ばし、2025年3月期のグループ売上高は約50億円。現社長の横田勝己社長=写真=は三代目で、2021年4月に就任した。

精密な旋削加工技術…競争力の源泉は自社製設備
主力事業のベアリングや自動車部品の旋削加工では、精度の高い製品をタイムリーに供給できる体制を整えている。ヨコタコーポレーションではベアリングの「外輪」と「内輪」と呼ばれるパーツを加工しているが、標準的な「シングルボールベアリング」の生産量は月産700万セットと、「日本で5本の指に入る規模」(横田社長)という。また、不良品は少なく、海外製品に負けないコスト競争力も実現。特に技術が必要とされる「超薄肉」の部品や、穴あけ・切り欠きなどの難切削加工も得意だ。
主要取引先にはトヨタグループの自動車部品メーカー・ジェイテクト(愛知県刈谷市)や総合機械メーカーの不二越(東京都港区)などが名を連ね、顧客からの信頼も厚い。こうした強みを持つ秘訣(ひけつ)について横田社長は、「自社の加工設備を自社で製造しているところにある」と話す。創業当初こそ他社製を使ったものの、ベアリングの加工に適した設備を順次、自社で開発し導入してきた。このため、ベアリングの製造工程で問題が生じた際には社内で速やかに対処や改善が可能。さらに、取引先のニーズにも応えやすいという。
AIを用いた自動の「傷検査機」を開発・導入
ヨコタコーポレーションは2024年、ベアリング部品の傷の有無を自動で判定する検査機を徳島県立工業技術センターと共同開発し、自社工場の製造ラインに実践導入した=写真=。検査機に流れてきた部品をカメラで撮影、AI(人工知能)であらかじめ疑似作成した不良品の画像と比較して合否を判定するもので、従来は従業員が目視で行っていた検査を自動化した。部品に異常がないのに不良品と判定してしまう「虚報率」は1%以下で、作業の効率化と製品品質の向上、労働力不足への対応など様々なメリットをもたらしているという。

国内外で成長が期待されるFA・機械設計部門
必要な設備を自社で開発・製造してきたヨコタコーポレーションは、FA(工場の自動化)に関する豊富なノウハウと技術力を生かし、国内外で、顧客企業の要望に応じた専用機械の設計や製造販売も手がけている。横田社長は「労働力不足が社会課題となる中、無駄を省いて効率的なモノづくりを実現する自動化や省力化へのニーズが高まっている。我々にとっても付加価値が高い事業分野だ」と話し、今後の成長に期待を寄せる。
ベアリング旋削加工会社として確固たる地位を築いていた同社だが、2018年には「新境地を開こう」(横田社長)と、ASEANの中でも特に自動車関連メーカーが集積しているタイに、FA関連製品の設計や製作を担う子会社を設立した。これにより、現地に進出した日本や韓国の自動車メーカーとのビジネスが実現したほか、従来は接点がなかった飲料業界などとの関係構築も進んでいるという。タイ進出にあたっては、横田社長自身、京都大を卒業後に勤めた三菱UFJ銀行で、融資先企業の海外展開に携わった経験が生きた。日本貿易振興機構(JETRO)徳島からアドバイスも受けたという。
リユースストアや住宅関連で消費者向け事業も
ヨコタコーポレーションはまた、中古品を扱うリユースストアを徳島県と兵庫県で計12店、ハードオフコーポレーション(新潟県新発田市)のフランチャイズ店形式で展開している。消費者の節約志向や環境意識の高まりを追い風に事業は好調だ。徳島県阿波市ではショッピングセンターも運営する。これらの流通事業は、1970年代の2度のオイルショックを経て、多角化の一環として1983年にホームセンターを県内で出店したことから始まった。以来、時代の変化とともに業態転換に取り組んで来たという。
一方、住宅関連では、2016年にトヨタホーム近畿(大阪市)と業務提携を結んだ。同社が建築する住宅の基礎工事や外構、内装工事を請け負うほか、一般のリフォームを受注している。かつては自社で新築分譲住宅を手がけていたが、人口動態の変化に合わせて事業内容を変えた。多角化の今後について横田社長は、「地域に貢献できるよう、後継者難となった地元企業の事業承継を含めて検討していきたい」としている。
「にんげんいきいき」の人づくり
ヨコタコーポレーションでは、経営理念に「にんげんいきいき」の人づくりを掲げている。多角化で多様な人材を擁するからこそ、横田社長は「すべての従業員に、この会社で働いてよかったと思ってもらいたい」と話す。社会課題の解決や地域貢献には、幅広い能力を兼ね備えた人材が欠かせないと考えるからだ。同社は、従業員の健康管理を経営的な視点で戦略的に実践する企業を顕彰する「健康経営優良法人」に9年連続で選ばれている。
創業70周年に向けて
ヨコタコーポレーションは現在、創業70周年を迎える2030年度に向けて、2010年度に策定した中長期経営計画に取り組んでいる。「粗利で前年度比105%成長を続ける」ことを目指すもので、会社の発展に加え従業員の賃金アップやインフレで増加するコストに対応するには、付加価値額の持続的な増加が欠かせないからだ。計画は1年ごとに見直し、毎年4月に従業員と共有している。
「一人ひとりの力はわずかでも、ベクトルを合わせて共に考え、研さんし、努力する。時代の変化に対応しながら成長を続け、地域に必要とされる『100年企業』を目指したい」。横田社長は、そう語る。

【企業情報】
▽公式サイト=https://www.yokota-inc.com/ ▽代表者=横田勝己社長 ▽社員数=263人(海外拠点を含むグループ全体、2026年1月現在) ▽資本金=7260万円 ▽創業=1960年
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