デジタルを前提に業務の効率化を コンカーの内部事務DX

予算執行業務と旅費精算業務に特化したクラウドサービスを提供するコンカー。2024年度には国内にデータセンターを設置し、自治体向けにもサービス提供を開始する方針だ。コンカーの長谷大吾氏が、自治体DX支援の内容や、DXによる業務変革のポイントを解説する。

長谷大吾 コンカー 公共営業本部 部長

見直しに大きな効果
予算執行業務と旅費精算業務

米国シアトルに本社を置くコンカー。日本法人は2010年に設立され、現在日本国内では、約1700の企業グループがそのサービスを利用している。しかし、サービスはアメリカにあるデータセンターを通じての利用であるため、これまで、日本国内では公共団体が利用することができなかった。長谷氏は、「コンカーでは、2024年の下半期に日本国内にデータセンターを設置します。政府情報システムのためのセキュリティ認定制度であるISMAPの認証を受ける準備も進めており、公共団体のお客様へサービスをご提供できる状況が整ってきたところです」と話す。

コンカーが提供するクラウドサービスの範囲は、予算執行業務と旅費精算業務だ。「この2つはまったく違う業務という見方もありますが、どちらも手入力で、目視で審査して紙ベースで回していくといった、古いプロセスが残っているのであれば共通する業務と言えます。こういったアナログな部分におけるDXには、非常に高い効果が期待できます」。コンカーでは2019年頃から、自治体でサービスを実際に使えるかどうかの実証実験も進めており、予算執行に関しては12件、旅費精算に関しては8件の実証を通じ効果が確認されている。

図 コンカーから始めるデジタルトランスフォーメーション

出典:コンカー資料

 

コンカーが提案するのは、内部事務における紙を前提としたアナログな部分に対する業務プロセスの再構築を、デジタルを前提にして行うというものだ。デジタルの前に、いかに業務を効率化するかという、トランスフォーメーションに重きを置く。「慣れ親しんだ業務を変えることへの抵抗感、デジタルへの不信感、運用変更することで最初に起きる混乱への嫌悪感。こういったトランスフォーメーションの阻害要因を、コンカーのプラットフォームを通じてなくしていきます」

予算執行業務や旅費精算業務は、作業量が多く、またルールが定型化している点で、トランスフォームしやすく、その効果も出やすいと長谷氏。まずは業務を見直し、その上にデジタルを適用するころによって効果を最大化する。「そうやって効率的になった、楽になったということを体感して頂きます。そうすると、他の業務に対してもデジタルを積極的に活用していこうというマインドが醸成されていくと思います」

デジタルを前提に、どう業務プロセスを見直すか。一例として、コンカーは電子請求書やICカードのデータを取り込めるプラットフォームになっているため、それを起点にして業務を再構築することが可能だ。また、コンカーのサービスには、自治体の規則・規定をシステムの中にロジックとして設定できるという大きな特長があるため、これまで目視で審査していたものを、ある程度システムに行わせることもできる。そうすると、デジタルデータの流れができ、審査が効率化。重複する業務も確認でき、それを排除して決済フローの簡素化を進められる。実証実験では、予算執行業務と旅費精算業務2つを合わせ、年間約48万時間の削減効果を確認できた自治体もあるという。

シンプルにした業務の上に
デジタル施策を乗せていく

予算執行業務では、現在行っている業務を図にして可視化し、なぜこの業務を行っているのかを担当部局の職員にコンカーがヒアリング。そのコミュニケーションを通して省略可能な業務を見極めながら、目指す姿を策定し業務フローをシンプルにする支援を行う。「業務をシンプルにした上に、入力の省力化や審査の自動化、決済の簡素化というデジタル施策を乗せて、どれくらいの業務削減効果が出るかを検証します」

具体的には、財務会計システムの中でも歳出管理の部分、その中の支出負担・支出命令に特化した仕組みだ。既存の財務会計システムに手を入れるのではなく、そのフロント部分である入力、審査、決済を、コンカーのクラウドサービスに置き替えて最適化を図る。審査項目をシステムが自動でチェックする機能によって審査工数の劇的な改善が期待でき、ペーパーレスにも大きく貢献できると長谷氏は述べた。

旅費精算業務については、「現在の大きな問題の根本に、約60年前に作られた旅費法に準拠した規程があります。旅行に行く前に旅行命令書を作成、経路、金額、理由などを申請し、審査され承認されると旅行に行き、精算するとまたそこに審査が入る。こういったことに膨大な時間とコストがかかっていると聞いています」

コンカーのサービスは、例えば車の移動であればGoogleマップで検索したデータ、交通系ICカードであれば公共交通機関の利用データ、それらが自動的にシステムに取り込まれる仕組みになっている。駅すぱあととの連携もあり、日当の自動計算も可能。「また、旅行命令書というものがデジタル活用の阻害要因にもなっていますので、極力、この旅行命令書もシンプルにするという、デジタル活用を前提とした業務をご提案しています」。法人カードやタクシーアプリ、PayPayなどのキャッシュレス手段とも連携しており、民間企業ではすでに活用されている。

一気に進めず、短期間に
効果の出る領域から着手

業務改革となると、一気に進めようとする空気も生まれるが、「そうすると、様々な部局との調整などが必要となり、なかなかうまく進みません。そうではなく、まずは効果の出る領域がどこかを見極めること、そして、最初はスモールでいいので短期間で効果を出していくことが大事です。その効果を出した実績から領域を拡大することをお勧めしています」と長谷氏。変更リスクを最小化し、短期間の大きな効果を得るのはどこか、それを最初に定義するのがコンカーの提案だ。

「デジタルは得体の知れないものではなく、キャッシュレスデータや電子請求書などはすでに世の中にあふれています。それらを活用し、そのデータを起点として業務設定をしたらどういう姿になるのかを明確にして共有します。関連部局の皆さまとコミュニケーションを増やし、目指す姿を一致させて進んでいくことがDXにおいて非常に重要だと考えています」

 

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