モリサワの地方創生への取り組み 企業版ふるさと納税で地方に貢献
国内シェアNo.1フォントベンダーのモリサワは、事業構想大学院大学の「シティプロモーション研究会」や、企業版ふるさと納税を活用した共同プロジェクト研究を通じ、自治体との連携を強化。地方創生に貢献すると共に、新規事業創出や事業拡大も実現させている。
モリサワは2018年から、事業構想大学院大学の「シティプロモーション研究会」に自治体や他の企業と共に参加。さらに2022~2023年は山形市、2024~2025年は神戸市に企業版ふるさと納税で寄付を行い、地域の課題解決に向けたプロジェクト研究に参加している。
外国人の誘客と住民向け広報で
自治体と連携
モリサワがこれらの活動を始めるきっかけとなったのは2015年頃、インバウンドの訪日外国人旅行者に向けた情報発信で新規事業を計画し、月刊『事業構想』に広告を掲載したことだった。モリサワの海外事業部門バイスエグゼクティブマネージャーの小野大輔氏は、「最初はどの媒体に広告を出せば良いのかわからず、検討していたところ、自治体向けの記事が多い月刊『事業構想』を広告代理店から紹介されました」と振り返る。
「また、その頃、ある市長と市長室で面会した際、本棚に並ぶ書籍の中に月刊『事業構想』がありました。そして市長から『この雑誌は結構、読んでいる』と言われたことで広告を出そうと決めました」(小野氏)。
広告掲載後は、自治体や企業関係者から広告についての話題が出るようになったほか、大企業が立ち上げたインバウンドに関する協議会にも誘われた。そこで協議会に参加し、訪日外国人観光客の誘客に関する実証実験も行うことになった。
「自治体の首長に広告を見ていただけるのは、大きなことです。自治体での事業は予算を立てるところから始まって長いスパンの仕事になり、その際、首長による後押しがあれば前に進みやすいと思います」(小野氏)。
また、当初はインバウンドから始まった自治体との連携は、その後、住民への情報発信に関する事業にも拡がった。さらに、以前からモリサワのサービスを導入していた東京都品川区がシティプロモーションに力を入れ始めたことで、モリサワでは今後、シティプロモーションが他の自治体にも拡がると考え、この分野の事業も強化することになった。
事業構想大学院大学では自治体と企業が参加する「シティプロモーション研究会」が2018年に立ち上がり、モリサワはこれに参加。参加自治体の1つだった奈良県生駒市が市内の小中学校の学習教材に、文字の形がわかりやすく読み間違えにくいモリサワの「ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)」を導入することになった。
また、それらの学校で実証実験を行ったところ、一般的な教科書体よりUDフォントの方が、子どもたちが正確さを保ちながら読めるという結果が出た。「この結果は多くのメディアで取り上げられ、これは私たちのビジネスの大きな転換点になりました」と小野氏は言う。
企業版ふるさと納税を活用し
山形市とプロジェクト研究
さらに、モリサワは2022~2023年には、企業版ふるさと納税を活用して山形市や事業構想大学院大学と共に「やまがた創生プロジェクト研究」に参加した。
「企業版ふるさと納税を活用したプロジェクト研究では税額控除だけでなく、自治体とのつながりを強化できるなどのメリットもあると聞き、始めました。企業側は費用の実質1割を負担するだけで、地域に貢献する大きな事業に取り組めるのが最大の魅力だと思います」(小野氏)。
寄付を行う自治体として山形市を選んだ理由としては、山形市の市長や副市長が若くいながらも、地域活性化に積極的に取り組んでいることがあった。また、モリサワの自治体事業はそれまで東北エリアでの展開が弱く、山形市とのプロジェクトはこのエリアで自社をPRする機会にもなると考えたという。2022年3月には山形市と「地方創生の推進に係る包括連携に関する協定」も締結し、東北の多くのメディアに取り上げられた。
「プロジェクト研究は、山形市の方々と交流を深め、市が抱える課題感にキャッチアップする機会にもなりました。地域で事業を営む方や自治体職員の方に色々なお話を伺い、今後の事業を考える上でも参考になったと思います」。プロジェクト研究に参加した、モリサワ営業企画部営業企画課課長の橋爪明代氏はこう話す。また、モリサワが営業で山形市を訪問していた頃は、訪問先は市の広報課が中心だったが、プロジェクト研究は他の部局の職員から話を聞ける機会にもなった。プロジェクト研究は2023年に終了したが、モリサワでは包括連携協定に基づき、今後も山形市と共に新しい取り組みを続ける予定だ。
神戸市と「大学経営人材育成
プロジェクト研究」も開始
モリサワは2024年5月には、ふるさと納税を活用し、神戸市や一般社団法人 大学都市神戸産官学プラットフォーム、事業構想大学院大学と共に「神戸の未来創生に向けた大学経営人材育成プロジェクト研究」もスタートさせた。山形市の次に神戸市への寄付を決めた背景には、モリサワの本社が大阪市にあり、近隣の神戸市の発展に貢献したいという想いがあった。また、神戸市の知名度が高く、そのポテンシャルも魅力的だったという
このプロジェクト研究では、大学経営の高い専門スキルを持つ大学職員を育成し、大学経営の高度化やブランディングによる魅力の充実を図る。それによって多くの受験生らに選ばれ、地域社会に新たな価値を創出する大学づくりを実現し、神戸市域の持続可能な発展を目指す。モリサワは自社の製品やサービス、知見を活かし、神戸市の「情報発信の質向上」を中心にプロジェクト研究で貢献していく。
「どこかの自治体や教育機関との取り組みは、その後、他の自治体や教育機関にも拡がることが多く、モリサワのプレゼンス向上につながると思います」と小野氏はみている。これらの取り組みはモリサワの強みになると共に、それを世の中に伝える機会にもなる。このため、モリサワでは事業拡大とプレゼンス向上という両方の側面から、今後も同様な取り組みを続ける方針だ。
お問い合わせ先
月刊『事業構想』広告事業部
TEL 03-6278-9031
この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。