AIが押し下げた知識の価値 大学に迫る提供コンテンツの再構築
※本記事は『THE CONVERSATION』に2025年7月8日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています。

長年にわたり、大学はシンプルな理念のもとで成り立ってきた。知識は希少であるということだ。授業料を支払い、講義に出席し、課題を提出して最終的に資格を取得する。
このプロセスには、主に2つの意味があった。すなわち、ほかでは見つけにくい知識が手に入るようになること、そして、その知識を習得するために時間と労力を費やしたことを、雇用主に示すという役割である。
このモデルが機能していたのは、質の高い情報の供給曲線が、大きく左に偏っていたからだ。つまり知識が希少だったために、その価格(授業料や賃金プレミアム)が高止まりしていたからである。
現在では、次のグラフが示すように、その供給曲線が右へとシフトしている。供給が右に移動する、つまりより入手しやすくなったものについて、需要との新たな交点は価格軸上で下方に移動する。これが、授業料プレミアムや大学卒業者の賃金の優位性が今、圧力を受けている理由である。

世界的なコンサルティング企業であるマッキンゼー社によれば、生成AIは世界の年間生産性を、2.6兆以上4.4兆米ドル押し上げる可能性があるという。それはなぜか。AIが情報の生成と整理にかかる限界費用を、限りなくゼロに近づけているからである。
大規模言語モデル(LLM)は、もはや事実を検索するだけはない。説明、翻訳、要約、下書き作成をほぼ瞬時にこなす。供給が爆発的に増えれば、経済学の基本原則として価格は下がる。つまり、大学が長年売り物にしてきた「知識のプレミアム」は、現在収縮しつつあるのだ。
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