NEXCO東日本×佐野商工会議所 SAを産業振興の起爆剤に
NEXCO東日本は高速道路のサービスエリアやパーキングエリア(以下SA・PA)にドラマチックエリアを展開し、その地の食や文化を発信している。2022年開業の栃木県佐野SA下り線のドラマチックエリアについて、NEXCO東日本取締役の吉見秀夫氏と佐野商工会議所会頭の吉澤愼太郎氏が対談した。
東日本高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員 サービスエリア・新事業本部長/株式会社ネクスコ東日本エリアトラクト 代表取締役社長の吉見秀夫氏(写真左)と佐野商工会議所会頭の吉澤愼太郎氏
高速道路外からも入出可能
地域の魅力を発信する佐野SA
吉見 2022年にリニューアルオープンした東北自動車道下り線の佐野SAのドラマチックエリアは、管内19カ所目となりました。その際ご尽力いただいたのが、佐野商工会議所です。例えば、会員である佐野の第一酒造様には、佐野SA限定商品として甘酒スムージーの開発に協力いただき、下り線で販売しています。また、佐野の伝統工芸品である天明鋳物で作った佐野市の公式キャラクター「さのまる」像も、地元の特色を生かした佐野SAドラマチックエリアならではのオブジェです。ほかには、リニューアルを機に、佐野SA上りと下りのハイウェイスタンプを一新。これは、佐野市の高校生地域定着促進事業と連携し、さのまると地域の素材をモチーフにして地元の高校生にデザインしてもらいました。もちろん佐野といえば佐野ラーメンというキラーコンテンツがありますが、佐野にはそれ以外にも様々なものがあることを、このドラマチックエリアに立ち寄られた方々に感じていただきたいと思っています。
東北自動車道下り線の佐野SAのドラマチックエリアには佐野を象徴する地域の産品が並ぶ
吉澤 高速道路SAやPAは、旅の途中で立ち寄り、食事をしたりしてリフレッシュし、次の目的地へ向かうという、まさにオアシスですよね。
NEXCO東日本が展開している佐野SAは、上下線両方のSAが同じサイドに並んでおり、徒歩で行き来もできます。2つのSAに高低差があるのも、景色が変わり違う世界観があってすごくいい。しかも宿泊施設まである、今までにない形のSAだと思います。
吉見 佐野SAは上下線の高低差がいい景観を生み出しています。下り線では、開放的な芝生の広場にカラフルなベンチも設置しており、三毳(みかも)山の眺望も楽しめる。上り線側にも2025年度内にドラマチックエリアをオープン予定で、地域の方にも身近な場所となることを目指しています。上下線一体で、地域の魅力の発信にも積極的に取り組み、SAを地域のつながりをつくるハブとしてもご活用いただけるようにしていきます。
カラフルなベンチを設置した芝生の広場からは美しい眺望を楽しめる
天明鋳物製さのまる像の
発信力にも期待
吉澤 佐野商工会議所は、栃木県にある9つの商工会議所の一つです。佐野地域には4千以上の事業者がおり、そのうち2213の事業者、つまり50%以上が会員となっている経済団体です。千年以上の歴史がある天明鋳物関連の事業者から新しい事業を手掛ける事業者まで、様々な方々が会員として名を連ねておられます。各事業者と連携を深めお互いに良い知恵を出しあって佐野地域を発展させることを大きな使命としています。
吉見 天明鋳物は非常に長い歴史を持つ佐野の伝統産業だと伺いました。
吉澤 戦国大名にも珍重された茶道具のような文化的価値のあるものから、日常生活で使うベーゴマのような遊び道具や食器などを手掛ける鋳物師もいます。幅広い展開がされているのが天明鋳物の特長なのです。
実は一昨年、天明鋳物の商標登録を取得しました。2024年には「佐野の天明鋳物生産用具と製品」が国重要有形民俗文化財に指定。佐野市と商工会議所は一体となって天明鋳物のPRを続けており、佐野SAドラマチックエリアに設置されたさのまる像は、天明鋳物をさらに発信していく力があると考えています。
吉見 高速道路のSAという場所にはいろいろな地域からさまざまなお客さまが来られますから、天明鋳物もより広く知っていただけることになると期待しています。
吉澤 そういった伝統産業だけではなく新しい事業振興にも力を入れたいと、昨年からは「創業するなら佐野で」というキャッチフレーズを掲げ、佐野地域で新しく事業を起こす方への支援を強化しています。さらに佐野地域でも事業者の高齢化が課題なので、事業承継につながるマッチング支援も積極的に行っています。
吉見 そんなお話を伺うと、佐野SAのドラマチックエリアが媒介となって、佐野における企業や事業継承を含めた産業振興につながるといいなと思いますね。
吉澤 まさにそれが、NEXCO東日本をはじめとした様々な方々との連携から生まれる共創というものだと思います。佐野で事業を営んでいるだけでは得られない接点が出てきて、それによって新しい産業の展開も生まれます。NEXCO東日本との絆は今後もぜひ強めていきたいと考えています。
産業界や行政とも相互連携し
未来へつながるSAを展開したい
吉見 佐野SAにドラマチックエリアを作るにあたって佐野市商工会議所に協力いただいた情報交換会では、地域の皆さまの佐野SAに対するイメージもお聞きしながら、私たちが訴求したいコンセプトをお伝えし、地域がアピールしたいものとのマッチングをうまくやるためのヒントをいただきました。これは私たちにとって非常に有益でした。
吉澤 佐野商工会議所には本当に様々な種類の事業者の方がおられます。ドラマチックエリアオープンにあたっては主に商品に関してやり取りをしてきましたが、今後は商品や飲食だけではなくて、佐野の事業者が新しいヒントを得て新しい事業に取り組めるような、もっと幅広く産業全体が広がっていくような共生関係が、NEXCO東日本との間に構築できるといいなと思っています。
吉見 私たちも、さらに様々な産業とかかわりたいと考えています。ドラマチックエリアを通して地域における交流人口を増やすという観点からすると行政である佐野市との連携も重要ですから、産業界とも行政とも相互連携を強化していきたいですね。物理的なつながりだけでなく、SAを身近な存在として地域の計画や施策に組み込んでいただけるように、地域にダイナミックにかかわっていきたいと考えています。
吉澤 佐野SAのドラマチックエリアは、佐野ならではの食だけでなく文化にも触れられるという点で、佐野の出島のような存在です。訪れた人々は、最初は休憩地として佐野SAのドラマチックエリアに立ち寄っただけだとしても、そこでの体験を通して次は佐野に降り立つ旅をしてもらう、そのきっかけになるとありがたいですね。地域産業のためにもプラスになるのがドラマチックエリア。私たち佐野市の事業者や市民自身も積極的に訪れて、未来につながるようなつながりを深めていけるのではないかと期待しています。
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東日本高速道路株式会社
サービスエリア・新事業本部
https://www.e-nexco.co.jp/
株式会社ネクスコ東日本エリアトラクト
Tel:03-5405-1967
(平日10:00-17:00)
https://e-nexco-areattract.co.jp/
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