コンカー×豊中市 全庁を挙げた機運醸成への工夫を
全国に先駆けてRPA(Robotic Process Automation)導入を推進している大阪府豊中市。「RPA導入には全庁を挙げた機運醸成や導入による利点の共有が欠かせない」と話す豊中市の伊藤洋輔氏と、自治体の旅費精算業務DXを支援するコンカーの長谷大吾氏の対談を紹介する。
デジタル・ガバメント宣言を出し
RPA導入を推進してきた豊中市
── 豊中市では全国の自治体に先駆けて、RPAに取り組んでおられます。これまでの取り組みについてお聞かせください。
伊藤氏 (以下、敬称略) 私たちは機運醸成、メリット共有、そして導入に関するサポートという3つのポイントで、RPAの導入を進めてきました。機運醸成についてはまず、2020年8月に長内繁樹市長が「情報化計画」を廃止して「デジタル・ガバメント宣言」を出しました。市長の宣言を受ける形で、翌9月に「デジタル・ガバメント戦略」を発出。そして10月にはデジタル戦略課が新たに創設されました。豊中市ではこれまで、こういった計画期間途中での新たな戦略の発出や年度途中での組織新設を行うことはなかったため、庁内にも施策に対する本気度が伝わった。これが1つ目のポイントです。

豊中市 都市経営部 デジタル戦略課 課長
伊藤 洋輔氏
2つ目のメリット共有については、試行的にRPAを導入して使っている職員の生の声や、実際にRPA利用の効果を実感した市長や副市長の生の声を庁内で共有し、全職員の関心を高めました。それでも、職員は目の前の仕事をこなすのが先で、新しいことに取り組む余裕がありませんから、私たちデジタル戦略課がしっかりとサポートするというのが3つ目のポイントです。
さらに、大事な視点として「隗より始めよ」があります。これは、大きなことを成すには言い出した者から始めるべき、という意味です。市長や副市長、部長クラス、そしてデジタル戦略課自身が率先してデジタル・ガバメントに取り組むところから広げていきました。
長谷氏 (以下、敬称略) トップダウンで組織を変え、メリットを共有しサポートも行う。それがデジタル化を推進する肝だと私も思います。全庁的に協力を得るために順序だてて戦略を立案し推進されたところが勉強になりますね。

株式会社コンカー 公共営業本部
部長 長谷 大吾氏
旅費精算業務は
業務削減効果の大きい領域
── コンカーでは旅費精算法改正を機に自治体の内部事務DXを支援しておられます。どのような支援をされるのでしょうか。
長谷 民間企業も10年ほど前まで、旅費はワークフローシステムに載せて処理するものでした。しかしキャッシュレス化が進んだことでキャッシュレスデータを使えるようになり、旅費専用の仕組みができてきたんです。その仕組みを自治体の旅費精算業務効率化につなげるのが、私たちが自治体に対して行っている支援になります。住民向けサービスが紙もあればデータで扱うこともあるのに対し、旅費は職員のみを対象にしたクローズドな業務で改革が遅れてきた側面があります。キャッシュレスデータを使い、デジタルによって一気通貫で効率化することが比較的やりやすい領域だと考えています。
伊藤 豊中市では旅費精算業務にワークフローシステムを使っていますが、エラーチェックにも相当の工程数があり、非効率な部分もあると思います。
長谷 多くの自治体はワークフローシステムの申請画面を、旅費用にカスタマイズしてデータを流しておられます。これだと、申請者の手入力によるミスや、それをチェックする審査側に多くの労力が必要です。
旅費申請には、旅行がそれほど頻繁ではない職員の方の場合、旅費規程から調べないといけないという負担もあります。この旅費精算業務専用の仕組みなら、申請時点でデータが連携されるので手入力の必要がない上に、自治体ごとの旅費規程ロジックを組み込むことができるため、申請内容が規程に則しているかをシステムが判定してくれます。つまり、申請者が申請ボタンを押した時点で、規程をある程度クリアすることになる。精算時も、キャッシュレスデータなら、金額や支払い先、日付まで、すべてが含まれますから、人がチェックする必要がありません。2025年4月に施行予定の改正旅費法には、これまでの定額制を実費制にすることも含まれます。今回の改正は、旅費法に旅費規程を準拠させている自治体にとって制度と業務を効率化するチャンスであり、旅費精算業務のDXを検討する自治体が増えています。
伊藤 豊中市もRPA導入等で便利になってきていますが、今後どこまでできるか想像しづらい部分もあります。
長谷 私たちは提案する時に、いきなりシステム導入の話をするのではなく、まず旅費精算業務をシンプルにできないかを職員の皆様と一緒に確認します。規程の確認や各業務の所要時間を洗い出した上で、旅費業務をシンプルにすることとデジタル化をセットで実施すれば、どれだけの削減効果が出るかを実証してきました。これまでの実証実験では、平均約60%の削減効果が出ています。
伊藤 旅費プラスアルファの支援をしていただけるということですね。
長谷 私たちが展開しているのは、旅費や、契約に紐づかない少額請求書処理といった財務会計の一部に付随するサービスです。統合型パッケージで旅費などの個別案件に対応しようとすると、システム開発が膨らんで他の機能に影響が出てしまいます。旅費などの少額・大量・不規則な数値を管理するものは専用のシステムで最適化することで申請・審査工数を大幅に削減できます。それがSaaSの存在意義でもあると思います。
自治体DXで職員の
働き甲斐向上に貢献したい
── 豊中市、そしてコンカーの展望についてお聞かせください。
伊藤 2020年の「デジタル・ガバメント戦略」を1.0とし、2024年からは「デジタル・ガバメント戦略2.0」を進めています。ここでテーマとしているのが市民の実感と共感。職員は業務がかなり変わったと感じていると思います。しかし、市民の皆さんに、市が良い取り組みをしているとか、市民の利便性が高まったと感じていただく段階にはいたっていませんから、そこを高めていきたい。市民の皆さんが「いつの間にか便利になっていたね」と気付いてくださるのが理想だと思っています。
長谷 私たちが支援する旅費精算業務は、自治体のコア業務から一番遠いノンコア業務ながら、そこにかなり時間をかけておられます。旅費精算業務から職員の皆さまを解放し、本業に取り組む時間を増やしていただく。そうすれば市民の皆さんの共感も得られるのではないでしょうか。それが、職員の皆さまの働き甲斐という側面における支援にもつながると考えています。
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