地域特性を生かしたDXで価値創出 コニカミノルタと丹波篠山市

カメラ・フォト事業を通して培った様々な技術をベースに、社会課題の解決や価値創造に挑むコニカミノルタ。そして、サルによる農業被害を軽減するシステム導入など、地域特性に即したユニークなDXに取り組む丹波篠山市。DXサミットでは両者が取り組み事例を紹介した。

岡慎一郎 コニカミノルタ 常務執行役 人事、総務、秘書、危機管理、ダイバーシティ推進 担当兼関西支社長

コニカミノルタの技術で
顧客企業の業務課題を解決

コニカミノルタは、2003年、コニカとミノルタという2つの企業が合併して誕生した。「1873年のコニカ創業以来、一貫して、人々の『みたい』という想いに応え、お客様や社会の課題解決に貢献し新しい価値を創造し続けていくという理念を持っています」と話すのが、コニカミノルタ常務執行役の岡慎一郎氏だ。コニカもミノルタもカメラメーカーとして知られていたが、合併後の2007年、カメラ事業からは撤退。その後は両者がそれまでに培った、材料、光学、画像、微細加工等のイメージング技術をベースとした事業を行い、発展を続けてきた。

現在、150カ国以上で事業を展開。社員は約4万人で、その8割以上が日本外に在籍しているグローバル企業だ。主な事業は4つ。1つ目が、複合機とITサービスを組み合わせて顧客の業務課題解決に貢献するデジタルワークプレイス事業。2つ目が、プロダクションプリント、商業・産業印刷、マーケティングサービス等で、顧客企業のビジネス拡大や高付加価値化を支援するプロフェッショナルプリント事業。3つ目が、デジタルX線や超音波の画像診断などで、医療のデジタル化・ネットワーク化を支援するメディカルイメージング分野と、遺伝子検査や創薬支援を行うプレシジョンメディシン分野のヘルスケア事業。そして4つ目が、センシング、材料・コンポーネント、画像IoTソリューション分野のインダストリー事業である。

さらに岡氏は、現在進めているデジタル印刷を活用した社会課題解決型のDX関連事業AccurioDXについても言及した。AccurioDXは、1to1のチラシ、ハガキ、DMなどの企画から効果測定までを一気通貫で支援するプラットフォームだ。企業が、顧客一人ひとりに対し最適化した1to1のマーケティングを行うことで、企業と消費者間のコミュニケーションを革新するという事業だ。

コニカミノルタの「AccurioDX」では、印刷発注者と共にDXによる価値共創を推進

様々な支援企業の中から紹介されたのが、丹波篠山市の小田垣商店の事例である。小田垣商店は1734年から続く、丹波黒豆卸の老舗。DMのパーソナライズで、顧客の購買意欲を促進できるか、という検証を実施している。600通は通常通り同じ文面のDMを送り、300通は、顧客それぞれの名前や、その顧客が過去にいつ何を購入したのかも含めて個別化したものを送付。「売り上げの拡大につながるか現在検証中ですが、私たちも期待をしているところです」と話した。

自治体の課題を解決する
サポート事業も推進

コニカミノルタでは、2040年問題と言われている自治体の人手不足という課題に対するソリューションの提供も行う。「当社は、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)やプロセスの標準化、ICTを活用したソリューション等でサポートをしていきます。そして、自治体職員はもちろん、その先にいる地域住民の誰一人取り残さない、人に優しいデジタル行政の実現を目指します」。

コニカミノルタの画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」についても紹介。これは、高耐久かつ見逃しのないエッジAIカメラと最新の画像解析技術を活用し、様々な課題を解決するというものだ。企業や自治体と協業することで、交通安全、防災、スマートオフィスや店舗、物流製造の自動化に貢献する。

「コニカミノルタが提供できる画像IoTは、例えば工場内において自動搬送ロボットをより効率よく制御するスマートファクトリーの構築や、店舗内の客の行動を観察・分析し、より質の高い販売戦略やマーケティング戦略を構築するなど、顧客企業の課題に合わせた価値の創出を可能にします」と話した。

緑豊かな丹波篠山市
観光地としても人気

丹波篠山市からは、創造都市課地元就職支援室長の檜皮恵子氏が登壇。まず、市について紹介した。

檜皮恵子 丹波篠山市 創造都市課 地元就職支援室 室長

兵庫県の中東部に位置する丹波篠山市。地域の約75%が山という緑豊かな盆地で、京阪神の大都市まで約1時間の便利な地域でもある。日本六古窯の一つに数えられる丹波焼でも知られ、現在は、それぞれ作風の異なる約60の窯元が作陶を行っている。また、「毎年8月15日と16日に行われるデカンショ祭は、西日本最大級の民謡の祭典です。デカンショ節と丹波焼は、日本遺産にも認定されています」と檜皮氏。

西日本最大級の民謡の祭典「デカンショ祭」

歴史・文化も息づく丹波篠山市には、国の重要伝統的建造物群保存地区に2カ所選定されており、その一つである「篠山伝統的建造物群保存地区」は、古くは篠山城の城下町だったところで、武家屋敷や商家の町並みが残されている。電線を地下に埋めることで電柱をなくし、景観を保存。観光地としても人気が高い。

丹波篠山市はグルメも有名で、黒豆、米、栗、山の芋のほか、古くから、ぼたん鍋で食べる猪肉などのジビエも人気だ。「特に丹波篠山黒豆の枝豆は10月頃が旬。一味違います」と話した。

ニホンザルによる農作物被害を
軽減するシステムを導入

丹波篠山市のDXの取り組みとしては、マイナンバーカードの普及、公共施設利用のオンラインシステム化、学校におけるICT教育の推進などがある。

この他で、特にユニークな取り組みとして檜皮氏が紹介したのが、野生のニホンザルの群れの位置情報共有システム「サルイチ」だ。野生のサルによる農作物被害を軽減するためのもので、群れの行動域である兵庫県の丹波篠山市と丹波市、京都府の福知山市、京丹波町、南丹市という4市1町からなる、大丹波地域サル対策広域協議会で導入している。

丹波篠山市など4市1町は、ニホンザルの群れの位置情報共有システム「サルイチ」を導入

現在、このエリアに生息するニホンザルの群れは5つ。それらの群れに属するメスに発信機が装着されており、協議会のサル監視員が発信機からの電波をもとに群れの位置を把握。そのデータを、登録している人のスマートフォンやタブレットに送信する、というものだ。事前に群れの動きが予測できるため、近づいていると分かれば早めの収穫や、畑で待ち構えて花火などで追い払うなどの対策を取ることができる。蓄積されたサルの群れの行動データから、今では移動ルートのパターンなども把握できるようになり、より効果的な追い払いや捕獲による個体管理もできるようになった。

最後に檜皮氏は、「今後も丹波篠山の地域活性化のために、丹波篠山の魅力を生かしながら産官学と地域の共創により、人材の育成を進めて行きたいと思います」と話し、講演を締めくくった。