IoTと地域のかけ橋を目指す CMエンジニアリング

CMエンジニアリングは、様々なIoTシステムを手軽に構築できる独自のIoTセンサネットワークシステム「Tele-Sentient」を開発。代表取締役社長の栗田敏明氏は、IoT技術を活用することであらゆる産業の収益性を高め、地域課題の解決に貢献できると話す。

栗田敏明 CMエンジニアリング 代表取締役社長

CMエンジニアリングは、2010年に半導体・LSIの設計開発会社として設立。2012年、920MHz帯の周波数が解禁されたことを受けて、特小無線マイコンモジュール「CRESSON-MD920」を業界に先駆けて発売したことが転機となった。半径約1kmの長距離でも無線伝送が可能という920MHz帯の特徴を活かし、近年は同製品を用いたIoTソリューションの提供に注力している。

「この無線モジュールを使って、温度・湿度・CO2濃度・日照・土壌水分などの各センサが取得したデータを遠隔地からモニタリングする仕組みを構築しました。これを展示会に出展したところ、さいたま市からお声掛けをいただき、市内トマト農家のビニールハウスにて3ヶ月間の実証実験を実施しました。ビニールハウス内の温度が高くなるとメールで通知が届くという単純なシステムでしたが、農家さんには大変便利だと喜んでいただきました」とCMエンジニアリング代表取締役社長の栗田敏明氏は話す。

2016年から2018年には、北海道富良野市にある数百メートル四方の屋外玉ねぎ圃場で実証実験を実施した。気象センサで各農場の気象情報をピンポイントで取得すると同時に、土壌センサで温度や土壌水分などの情報をリアルタイムで取得。生産者の経験値・暗黙知の可視化により収量の均一化に貢献したと栗田氏は報告した。

農場では土壌センサを接続したセンサノードで圃場の土壌状態をモニタリング

低コストかつ簡単に
独自のIoTシステムを構築

このような実証を積み重ねるうちに、作物の種類や農場の規模が変わってもコストや手間をかけず、あらゆるIoTアプリケーションを短期間で開発できるプラットフォームが必要だと考え、独自のIoTセンサネットワークシステム「Tele-Sentient」の開発に至ったという。Tele-Sentientは、センサインタフェース、無線通信インタフェース、センサデータ収集、インターネット接続など、ワイヤレスセンサネットワークシステムに必要なあらゆる機能を提供するプラットフォームで、多種多様なセンサと接続し、センサが集めるデータをどこからでも監視・管理・収集・蓄積できる。

特徴は大きく4つ挙げられる。第一に、わずかなステップで簡単にアプリケーションを構築できる点だ。最初にGUIで気温、湿度、CO2濃度などの収集したいセンサタイプを選択し、次にシステム環境(測定間隔など)を設定する。これによりIoTアプリケーションが完成し、現場に適用すれば簡単にセンサネットワークを構築できる。第二に、APIの提供により、既存システムと簡単に連携できること。第三は、低消費電力と小型化を実現していること。第四は、デジタルツインと連動した自律型IoTにより、エコロジーや危険予知などに貢献できることだ。これらの特徴により低コストかつ簡単に、それぞれのニーズに合ったIoTシステムを構築できるという。

こうしたTele-Sentientの特徴を受けて、事業構想大学院大学の河村教授は、「センサは人間の五感を代替し、一次産業の効率化に役立つものですが、小規模な農業法人などがシステムをイチから個別に開発していては多大なコストと手間が掛かってしまいます。しかも、アジャイル開発的に進めてみなければ分からない部分も多い中、汎用性があってコストも安いTele-Sentientなら地域に受け入れやすいと思います」とコメントした。

河村昌美 事業構想大学院大学 事業構想研究所教授

水産業や飲食、教育など
幅広い業界に横展開

活用事例は農業だけではない。例えば、千葉県のあるエビの陸上養殖施設では、Tele-Sentientを活用して溶存酸素や水温、pHなどの各センサから水質データを取得し、遠隔地から水質のモニタリングを行っている。

陸上養殖業者の行動記録と養殖池での測定データの紐づけを行い、DX化を実現

「将来的には、センサで収集されたデータに加え、餌を与える、窓を開けるなどの行動履歴も取得し、デジタルツイン技術を使って餌やりなどのタイミングを通知できる仕組みを構想しています。こうした陸上養殖の仕組みをパッケージ化して安価に提供できれば、次世代へのノウハウの継承を通じて、地方創生に貢献できるものと考えています」と栗田氏は話す。

これに対して河村教授は「突き詰めれば、地域活性化とは仕事を作ることです。水産物なら販路に困ることがなく、廃校などの建物を活用すれば、若者が低コストで新しい事業に挑戦できます。こうした仕組みづくりに自治体が補助金を付けるなどして関わっていけば、地域の特性を活かした事業を横展開できるはずです」と指摘した。

さらにCMエンジニアリングは、コロナ禍でCO2濃度センサを使用した換気のモニタリングシステムを開発し、大手飲食店チェーンでの実証実験を行った。「飲食店では、据え置き型のCO2濃度センサを入口などに1台だけ置くケースが多いですが、様々な場所にセンサを置いて店舗全体を見える化すると、場所によってCO2濃度が全く異なり、換気をしているつもりでも不十分であることが分かりました。これにより、座席の配置を変える、エアコンを点けるタイミングを変える、換気扇を新たに設置するなどの効果的に換気対策を講じることができるようになります」(栗田氏)

CMエンジニアリングのセンシングノードは飲食業等でも活用が広がっている

地域との連携を加速し
IoTの社会基盤化に弾み

CMエンジニアリングは今後、センサとデジタルツインを組み合わせた自律型IoTシステムの開発を推進していく考えだ。「弊社はセンサとデジタルツインを組み合わせた自律型IoTシステムの技術を活用し、今後は地方創生、地域社会への貢献のみならず、例えば人間やペットのウェルネスを促進するような、人々や動物を健康で楽しく生活するための取り組みもやっていきたいと考えています」(栗田氏)

同社は引き続き全国の自治体と連携し、IoTや無線通信などの技術を活用しながら、各地域が抱える課題の解決にソリューションを提供していく。「課題をお持ちの自治体や地域事業者の方は、『こんなことは解決できないだろう』とは思わず、ぜひ私どもにご相談ください」と栗田氏は呼び掛けた。

 

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ビジネス開発部 マーケティング企画G
marketing@telesentient-iot.com
https://telesentient-iot.com/

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