評価を多角的な視点から行う 次世代行政経営・EBPMの目指すべき姿

内閣府や地方自治体はEBPM(エビデンスに基づく行政立案)を推進中だ。その実現には、さまざまなシステムに存在する多種多様なデータを集め、多角的に分析を行う必要があり、ジャパンシステムは行政経営支援サービス「FAST財務会計」と「ServiceNow」を起点にEBPMを前進させようとしている。

左から、渋谷区デジタルサービス部長 ICTセンター長事務取扱 伊橋雄大氏、ジャパンシステム株式会社 執行役員 兼 ServiceNow事業部長 中峯孝範氏、合同会社KUコンサルティング代表社員・地方自治体CIO補佐官 高橋邦夫氏

内部事務からフロント業務まで
業務・システムが”つながる”ことの価値とは

創立から50年以上続く老舗Sierであり、約700名の社員からなるジャパンシステム。公共分野では、中央省庁や地方自治体、その外郭団体の課題解決に向き合い、行政経営のサポートを続けてきた。現在、同社が提供する自治体向けソリューションである行政経営支援サービス「FAST財務会計」は、250団体以上の自治体が導入している。

「我々の兄弟会社であるBlueshipは20団体以上の自治体に業務DXのサービスを提供しており、特に住民ポータルや事業者ポータル、コンタクトセンターなどのフロントエンドの業務DXの知見を豊富に抱えています。」「内部事務は弊社ジャパンシステム、住民・事業者向けサービスはBlueshipと両社の強みを生かし一体となって経営し、フロントからバックエンドまでエンドツーエンドでお客様に価値提供をしています」と同社執行役員 兼 ServiceNow事業部長の中峯孝範氏。

ウェビナーのテーマは「渋谷区事例・自治体アドバイザー視点から紐解く次世代行政経営・EBPMの目指すべき姿」を掲げた。

「都市OSやEBPMでは具体的な価値提供がわかりにくく、単なるデータ連携やDWHが多く語られています。そこで今回は、次世代行政経営・EBPMに取り組みたいが何から始めるべきかわからない、DX推進をミッションとしていて進め方を模索している、先進的な取り組みが気になっているという皆様をターゲットに、取り組み事例を通して業務DXの全体像を理解いただきたいと考えています」

渋谷区が進めるEBPM事例
システムをつなぐプラットフォーム導入へ

渋谷区は先進的にEBPMの取り組みを進めている自治体だ。その事例を紹介するため、2019年に区役所が新庁舎へ移転した際にDXを推進の陣頭指揮を執った経験をもつ、渋谷区デジタルサービス部長 ICTセンター長事務取扱 伊橋雄大氏が登壇した。

「渋谷区には多数の事業があり、それらは主に財務会計の予算額や決算額で事業評価をしています。ただ、事業は金額だけで評価するものではなく、例えばイベントを行ったときは集まった人数、検診を行ったときにはその受診率、図書館であれば本の貸し出し冊数など、さまざまな指数があり、多角的な評価が考えられます。そのデータを集めることが難しい現実がありますが、今後はデータを集め、金額以外のデータも事業評価に使っていきたいと考えています」

事業評価だけではなく、渋谷区では職員の働き方のデータ連携も考えているという。例えば、職員の会議の時間や残業時間、上司との1on1の回数などのデータも活用して、職員の働き方と事業評価・行政評価を結びつけていく予定だ。

さらに、既に導入している人材のタレントマネジメントシステムとの連携も検討を進めている。自治体の職員が人事異動をする際に、職員の特性や家庭の事情などを業務や職場環境のデータ、行政評価などとつなぎあわせることで、適性のある職員が適正な職場で働くことを実現する。それにより一人ひとりが生き生きと働き、業務が効率化する好循環を生み出す組織体を造るというビジョンだ。

「これらのEBPMを実現するためには、複数のシステムに存在する多種多様なデータをシームレスに連携し、リアルタイムで把握できる状態を実現することが不可欠です。そのためにはやはり財務会計や文書管理システムだけではなくて、さまざまなシステムのデータ、またオフィスのデータ、また人材マネジメントのデータなどをリアルタイムにつなげていく、システム間をつなぐプラットフォームの導入に今取り組んでいるところです」

真のEBPMを実現するための
考え方とポイント

もう1人の登壇者である合同会社KUコンサルティング代表社員・地方自治体CIO補佐官の高橋邦夫氏は、2015年に豊島区が庁舎を移転した際にDX推進を担い、その後は総務省の地域情報化アドバイザーなどの業務を通して250以上の自治体支援実績をもつ。

図 ジャパンシステムが考えるDX推進の3ステップ

①デジタライゼーション、②デジタルトランスフォーメーション、③デジタルインテリジェンスと、3つの段階を設定

「自治体のEBPMは非常に注目されており、事業目標に対してどれだけ達成したかという面では浸透してきたと思います。ただ、それは一面でしかありません。伊橋部長のお話にあったように本当の意味での事業評価は、その背景にあるさまざまな要因がどういう関わりを持って、どのように発展していくかを考える必要があります。この事業の目標が達成したかどうかだけではなく、そこに至るまでの過程を分析するためにはそれぞれのデータをつなぐことが大事になり、取得したデータが事業にどのように影響しているのかを考える必要があります」

中峯氏は自治体がEBPMを実現するために必要なことを3つ挙げる。

「1つ目はコスト情報を司る財務会計と他システムを繋ぐこと。これは1丁目1番地で必要だと思っており、弊社でもFAST財務家計でService Nowなどと繋がるAPIをリリース予定です。2つ目はクラウド型プラットフォームServiceNowの活用。そして3つ目はデータ連携基盤。これらを活用して、お客様の事業をさまざまな角度から分析して活用していただければと考えています」

最後に中峯氏は「自治体がEBPMへ向けて明日からできる第1歩」を紹介した。それはまず現状をチェックして把握することだ。

「システムが分かれていることにより転記・加工・再入力はないか。紙・口頭・電話・メールなど後で経緯が不明になることはないか。知る人ぞ知る知識が属人化していないか。似たようなデータベースがいくつも存在していないか。このような状況があればデジタルトランスフォーメーションを考える必要があると思います。その解決策として我々のご提案は、ServiceNowによるシステム間インテグレーション、エンドツーエンドのタスク管理、価値を提供するための時間短縮、アナログ的手作業・人人連携の排除です。弊社はコンサルティングからサービスなどのIT実装、開発、運用、保守まで一貫してお客様の次世代行政の実現に向けて一緒に伴走いたします」

 

お問い合わせ先


ジャパンシステム株式会社
ServiceNow事業部 営業部
servicenow-info@japan-systems.co.jp
03-5309-0403 (受付9:00~17:30)

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。