オープンローミングで「つながる東京」へ 東京都×シスコシステムズ

グローバルで活用が始まっている、次世代の公衆Wi-Fi基盤「オープンローミング」。日本の自治体で初めてサービスを開始した東京都は、ネットワークをベースとした様々なITソリューションの世界的リーダー企業であるシスコシステムズと連携し、グローバルに「つながる東京」の実現を目指す。

インクルーシブな未来に向けて
各国のデジタル化を支援

シスコシステムズは世界No.1シェアを誇るネットワーク機器メーカーだ。「すべての人にインクルーシブな未来を実現する」をパーパスに掲げ、幅広い領域でデジタル化を推進している。

「インクルーシブとは包括的という意味で、ダイバーシティよりも積極的にすべての人を受容していく姿勢を表しています。あらゆるものがつながり、誰もがどこにいてもテクノロジーの恩恵を受けられる。シスコはそんな未来の実現を目指しています」とシスコシステムズ専務執行役員で公共事業統括の光延裕司氏は語る。

光延裕司 シスコシステムズ 専務執行役員 公共事業統括

パーパスの実現に向けて様々な取り組みを進めている同社だが、日本社会のデジタル化の推進という観点では、グローバルな戦略的投資プログラム「カントリー デジタイゼーション アクセラレーション(CDA)」がその取り組みの核になる。CDAは、シスコが政府や教育機関、民間企業と協業し、各国が直面している課題を中長期的なデジタル化の支援によって解決するもので、世界40カ国で900以上のプログラムを展開している。日本でも2020年より投資を開始し、スマートシティ、公共サービス、教育、ハイブリッドワーク5Gなどの様々な分野に投資してきた。

その中で注目されるテクノロジーとして挙げられるのがオープンローミング(OpenRoaming)だ。オープンローミングとは、公衆Wi-Fiサービス関連事業者の業界団体Wireless Broadband Alliance(WBA)による国際的なWi-Fi相互接続基盤。高い安全性と利便性が特徴であり、一度設定するだけで世界中のオープンローミング対応のWi-Fiスポットにセキュリティを確保した上で自動的に接続する。

従来の公衆Wi-Fiは、サービスごとにユーザー自身による登録が必要であり、提供されているSSIDを探したり、その後メールアドレスの登録もしくはパスワードを設定するなどの手間が掛かかった。また、多くのWi-Fiスポットで端末とアクセスポイントの間が暗号化されていないため通信が盗聴されたり、なりすましのアクセスポイントへ意図せず接続して情報を搾取されるなどのセキュリティリスクの問題もあった。「そうした従来の公衆Wi-Fiサービスの課題であった利便性とセキュリティを同時に解決するのがオープンローミングなのです」と光延氏。

その仕組みは2019年にCisco OpenRoamingとしてシスコシステムズが開発した技術がベースになっている。誰もがオープンローミングを利用できる環境の構築を目指して、2020年3月に開発・運用体制をWBAに移管して以来、多くの事業者の連携が促進され、現在は欧米を中心に世界100万か所で利用でき、約10億人の利用者がいると言われる。

シスコシステムズは2025年の大阪・関西万博で、オープンローミングを万博史上初めて提供する予定
出典:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会プレスリリース

都民や訪日外国人向けに オープンローミングを提供

国内では東京都が自治体で初めて、オープンローミングに対応した公衆Wi-Fi基盤の構築を進めている。2023年3月末からバスタ新宿や都立大久保病院など4施設でサービスを開始した。

東京都では、デジタルの力で都民のQOLの向上を目指す「スマート東京」の実現に向けて、①「電波の道」で「つながる東京」(TOKYO Data Highway)、②公共施設や都民サービスのデジタルシフト(街のDX)、③都庁のデジタルシフト(都庁のDX)の大きく3つの柱を立て施策を展開している。そうした中、いつでも、誰でも、どこでも、何があっても「つながる東京」を実現する手段の一つとして、「平時も災害時も安心してインターネットに接続できる、オープンローミングに対応した公衆Wi-Fiの必要性を感じました」と東京都デジタルサービス局の平井則輔課長は話す。

平井則輔 東京都デジタルサービス局
戦略部デジタルシフト推進担当課長

東京都では、東京2020オリンピック・パラリンピックを念頭に、2015年から外国人旅行者向けに「TOKYO FREE Wi-Fi」整備を進めてきた。その後、「TOKYO Data Highway 基本戦略」を機に海外都市の事例を分析したところ、Passpointという次世代公衆無線LAN技術を知ったという。

「世界最大級の都市である東京が他の自治体に先駆けてPasspointを採用することで、セキュアでシームレスなWi-Fiの普及・啓発に貢献したいと考えました。また、Passpointの技術が活用されているエデュロームという学術無線LANローミング基盤やオープンローミング、シティロームなどの国際的な無線LANローミング基盤にも対応することで、グローバルに『つながる東京』を実現することを目指しています」(平井氏)。現在は、防災アプリなどの媒体と連携して認知・利用機会の拡大を進めているところだが、今年度中に都立学校等の都有施設約600ヵ所に順次拡大する。

東京都は自治体で初めてオープンローミングに対応した公衆Wi-Fi基盤構築を推進 出典:東京都プレスリリース

「つながる東京」を実現する
データ共有と活用の基盤構築へ

今年3月に開催された東京マラソン2023では、事前受付カウンターとスタート地点のゲート付近で従来方式だけでなく、オープンローミング対応のWi-Fiを運用し、海外ランナーのアプリエントリー手続きを支援した。「日によっては、全くアナウンスしていないのに、オープンローミング方式の利用が従来方式を上回るという面白い結果が出ました。海外でオープンローミングにサインアップしている方が自動的に接続され、スムーズにWi-Fiを利用できていたようです」(平井氏)

後半のトークセッションでは、シスコシステムズ 公共営業 事業推進本部 本部長の田村信吾氏が「利用者の接続状況などのデータを、第三者に公開・共有するかどうか」について尋ねたところ、「特定の個人を識別できないように留意した上で、データ活用の基盤を構築しています」と平井氏。具体的な共有や活用方法については今年度から検討しているという。

最後に、平井氏から「セキュアでシームレスなWi-Fiの普及・啓発に向けては、グローバル企業であるシスコの知見を借りながら、広く効果的な情報発信を行っていきたい」との展望が語られた。シスコシステムズは今後も自治体と連携しながら、オープンローミングの活用と実装を推進していくことだろう。

 

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