NEXCO東日本×荻野屋 サービスエリア発の地域イノベーション
横川サービスエリア(上り線)は2009年に「ドラマチックエリア」としてリニューアルオープンし、成功モデルを示した。さらに昨年から両者は高速道路初の無人販売店舗の実証実験を上信越道のサービスエリアではじめるなど新たな試みも展開。これらの狙いや背景、今後のビジョンについて聞いた。
横川SA(上り線)施設内にて、東日本高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員 サービスエリア・新事業本部長/株式会社ネクスコ東日本エリアトラクト 代表取締役社長の吉見秀夫氏(左)と、株式会社荻野屋 代表取締役社長の高見澤志和氏
ドラマチックエリアが
顧客のワクワクを最大化
吉見 NEXCO東日本のサービスエリア・パーキングエリア(以下、SA・PA)では「礎づくり」と「華づくり」を大きなコンセプトに掲げています。礎づくりはお客さまにベーシックな機能を提供する一方で、華づくりはその場所自体が目的地やくつろぎの場になるものであり、Pasar(パサール)と並ぶその1つの形態が地域密着をコンセプトにした「ドラマチックエリア」です。ドラマチックエリアはお客さまに旅のドラマを演出して、名産品やご当地グルメなどの地域の魅力を味わっていただきたいという思いから始まり、それを実現するために地域に根差したテナントや地元の名産を作る企業などとコラボをした展開を始めました。その1つである横川SA(上り線)は、昔の横川駅を再現した中に、かつては軽井沢まで運行していた信越本線の本物の列車を施設内に置き、横川駅で販売していた荻野屋の峠の釜めしを販売しています。当時のシーンを再現することで、お客さまに懐かしさやワクワク感を味わっていただくことをコンセプトにしています。
高見澤 荻野屋は明治18年、1885年創業の会社です。もともとは旅館業からスタートし、ドライブイン事業から横川SAの運営などを展開する現在に至るまで、「観光」という言葉がなかった時代からお客さまに対するおもてなしや楽しい思い出をつくっていただくことを事業の中心にしてきた会社です。NEXCO東日本様からは高速道路が民営化された後のタイミングで横川SAのリニューアルの話をいただき、たくさんのお客さまに来ていただける店舗を作りたいと何度も議論を重ねました。当時の横川SAは大きな特徴がなく目的地になり得ないなかで、お客さまの満足度を上げ、思い出づくりにつながるように考えて、当時を再現することになりました。
吉見 横川SAはドラマチックエリアを開始した初期の頃だったので、試行錯誤を繰り返しましたね。その結果、現在の19か所での展開へとつながる先駆けとなる成功モデルになりました。
社会課題の解決へ向けて
無人販売店舗の実証実験
吉見 省人化店舗のノウハウ・システムを有するTOUCH TO GOとの業務提携のもと、昨年11月からは、テナントの荻野屋様と協力して高速道路初の「無人販売店舗」の実証実験を東部湯の丸SA(下り線)(長野県東御市)で実施しています。その背景にあるものは、現在の社会課題の1つである人口減少に伴う担い手不足であり、従業員確保の問題です。特に高速道路のSAやPAは山間部にあるところも多く、厳しい条件の中で人材確保が求められます。その問題に対して、無人販売店舗を実施することができれば、スタッフを配置した従来の営業では夜間の営業の継続が難しくなっても営業を維持できたり、さらにはこれまで夜間には営業していなかった店舗の営業を拡充できたりする可能性が広がり、お客さまサービスの維持や拡大につながると期待しています。数年後には20~30か所で無人販売店舗を展開したいと考えています。
長野県東御市の上信越道東部湯の丸サービスエリアにオープンした「無人販売店舗 東部湯の丸GO」。無人決済システムを利用し、24時間365日オープンしている
高見澤 社会課題に対して私たちサービス業は問題を放置するのではなく、常に向き合い、どのようにしてお客さまのサービスを向上させるかと考えてきました。そのときにNEXCO東日本様から「高速道路初の試み」としてお話をいただき、積極的に進めてきました。荻野屋は「誰もやっていないことをやる」という精神が創業時から根付いていて、峠の釜めしも当初は誰もやったことがないゼロスタートから、お客さまにご愛顧いただき支持されたことが結果的に現在へとつながっています。今を生きる私たちも未来に向かって種まきをして、1歩1歩進んでいくことが大切であり、NEXCO東日本様からも「お客さまのために」という発想から始まっていると聞き、ぜひやらせていただきたいと思いました。現時点で現場の従業員からは「お客さまの利便性が高まっている」という声が挙がっています。
吉見 無人販売店舗の発表をしたところ、多くのメディアから取材を受け、大きな反響をいただいています。社会課題を解決する注目度の高いテーマなので、しっかりと展開していき、社会に貢献していきたいと思っています。
地域創生への取り組み
経営理念を地域パートナーと体現
吉見 SAやPAは「地域の核」として捉えており、高速道路を使用するお客さまだけでなく、我々が「ウォークインゲート」と呼ぶ地域からSA・PAに直接入ることのできるゲートから、多くの地元住民にもご利用いただいています。SA・PAの地域の核としての機能をさらに強化することで交流人口を増やし、地方創生にもつなげたいと考えています。そのためには、外部の企業や自治体とアライアンスを組むことが重要であり、今後も、高速道路のアセットを活用した新たな試みにチャレンジしていきたいと思っています。
高見澤 観光という視点から見ると、観光客だけでなく地元の方に利用され喜ばれることが大切です。地域利用が増えることはそれだけ利便性が高まることの証拠であり、横川SAが地域の利便性を高められる場所になっていくことで地域活性化にもつながると感じています。非日常の中にも日常要素を取り入れて思い出をつくっていくことに関しては多くの可能性があると考えています。
吉見 NEXCO東日本グループは「地域とつながる」ことを理念に掲げています。さらにそこに注力し、新たなイノベーションを展開していきたいと思っています。イノベーションは社外とのアライアンスによって生まれます。荻野屋様のように県を代表する企業と、今後もパートナーシップを組んで展開していきたいですね。
お問い合わせ
東日本高速道路株式会社
サービスエリア・新事業本部
https://www.e-nexco.co.jp/
株式会社ネクスコ東日本エリアトラクト
Tel:03-5405-1967
(平日10:00-17:00)
https://e-nexco-areattract.co.jp/
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