デジタル×新規事業で世界に飛躍 SMBCグループ

「Beyond & Connect」を合言葉に、金融サービスに閉じることなく、顧客ニーズに応えるデジタルサービスの創出に取り組むSMBCグループ。今や非金融領域におけるデジタル子会社は10社を超え、一金融機関からグローバルソリューションプロバイダーへと変化しつつある。

磯和啓雄 三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO

「Beyond & Connect」を掲げ
新たなデジタルサービスを創出

金融業界の中でもいち早くデジタル化に取り組んできたSMBCグループ。銀行・証券・クレジットカード会社とシンクタンクなどを束ねる総合金融企業であり、傘下の三井住友銀行は国内3大メガバンクの一角を占めている。そんなSMBCグループがデジタル×新規事業創出のキーワードとして打ち出しているのが、「Beyond &Connect」と「Empower Innovation」だ。その意図について、グループの執行役専務で、デジタル戦略をリードするグループCDIO(Chief Digital Innovation Officer)の磯和啓雄氏は次のように話す。

「これまでの金融事業者は、お客様よりも情報を持っているという『情報の非対称性』で商売をしてきました。しかし、デジタル化ですべての法人・個人がつながることで、情報の非対称性はどんどん薄れています。それゆえ、私たちはデジタルが持つ様々なものを超えていく力と結び付けていく力(Beyond & Connect)により、業態・企業・地域等の壁を超えて多様な企業やサービスとつながることが重要だと考え、お客様の利便性の向上を図るとともに、将来のSMBCグループの礎となるビジネスの創出にチャレンジすることにしたのです」

図 SMBCグループの「デジタル×新規事業創出の考え方」

出典:SMBCグループ資料

 

非金融領域にもビジネスを拡大し
多数のデジタル子会社が誕生

Beyond & Connectに基づく新たなデジタルサービスについて、磯和氏は金融事業と非金融事業に分けた上でそれぞれ2つの事例を紹介した。

金融領域の一つは、個人向けモバイル総合金融サービス「Olive(オリーブ)」だ。これは銀行口座をベースに銀行・証券・決済・保険などの機能を、一つのIDを使ってアプリ上でシームレスにつなげるサービスで、今年3月の提供開始以来、順調に口座開設数を伸ばしているという。

個人向けモバイル総合金融サービス「Olive」

もう一つは、今年開業した米国でのデジタルリテールバンク事業「Jenius Bank(ジーニアスバンク)」だ。デジタル媒体を通じて、米国在住者向けに消費者ローンや貯蓄性預金などを提供し、よりすぐれた顧客体験の創出を目指している。将来的には商品を増やしながらビジネスを拡大していく方針だ。

デジタルを通じた非金融事業の例としては、ベンチャー企業の弁護士ドットコムとの連携によって実現した電子契約サービス「SMBCクラウドサイン」が挙げられる。従来、紙とハンコで行っていた契約業務をオンラインで完結させるサービスで、弁護士ドットコムがすでに商品化していた「クラウドサイン」のシステムを利用している。

電子契約サービス「SMBCクラウドサイン」

「東京・渋谷のオープンイノベーション拠点『hoops link tokyo』で弁護士ドットコムの方と出会った際に、『何か面白いことを一緒にやりたいですね』と話したことがきっかけで、2019年10月に合弁会社としてSMBCクラウドサインを設立しました。コロナ禍で電子契約の需要が高まる中、私たちは全国の強力な販売網を活用して、一気に売り込みを掛けることができると考えたのです」。2022年3月の月間契約送信件数は2年前の同月から約120倍に増加しており、協業によるシナジー効果が大いに発揮されているという。

東京・渋谷のオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」

また、企業の脱炭素経営実現に向けたソリューションとして、デジタル技術を活用した温室効果ガスの排出量算定ツール「Sustana」を自社で開発・リリースするなど、デジタルを活用した社会課題の解決にも取り組んでいる。

デジタルビジネス推進に向けて
基盤整備とカルチャー変革を実現

一方で、新たなビジネスを創出するためには、イノベーションを促進する枠組みの強化(Empower Innovation)が不可欠だ。それゆえSMBCグループでは、迅速な意思決定とリソース配賦で事業化を支援するCDIOミーティングの開催、国内外各地におけるオープンイノベーション拠点の設置、社内投資ファンドの設立、社内SNS「ミドりば」の導入などの基盤整備を推進してきた。さらには、「社長製造業」と銘打ち、面白いアイデアがあれば担当者を社内ベンチャーの社長に積極的に抜擢するなど、社内外から新規事業の種が生まれる仕組みづくりも進めている。

そうした中、若手行員が「ミドりば」で発信したアイデアが事業化につながった事例も出てきた。「マンション管理会社の営業担当者が、お客様からマンション管理に関する一連の複雑な業務についての困り事を聴取したことがきっかけとなり、今年5月、NTTデータNJKとの共同開発でマンション管理DXサービスの提供を開始しました」

多くの事業化に成功してきたSMBCグループだが、「小さなプロジェクトを複数立ち上げ、成功の兆しが見えてきたものだけを大きく育ててきたため、実はその裏には数え切れないほどの失敗があります」と磯和氏は語り、こう続ける。

「『Jenius Bank』という銀行名は、『Genius』の頭文字に遊びを加えて変化させているのですが、あえてミススペルとすることで、記憶に残りやすい名称にしています。急激に変化する社会に合わせて金融機関も変わっていくことが求められていますが、SMBCグループは今後も状況に応じた事業の方向性のピボット(転換)を行い、時流に沿ったビジネスモデルの変革を行っていきます」

 

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