業務効率化と多彩な顧客対応の実現 AIを活用したコールセンターDX
自治体に対する問い合わせは、電話、メール、チャット、SNSなどチャネルが複雑化している。それにより情報の集約や整理が適切に行われず、現場は疲弊するというケースが少なくない。その課題に対して、ServiceNow Japan合同会社はAIを活用したプラットフォームを提供することで解決に乗り出している。
コールセンターが抱える課題を
AIプラットフォームが解決
AIを搭載したクラウドベースのテクノロジーを世界的に展開するServiceNow Inc.は、2013年にServiceNow Japan合同会社を日本に設立。クラウドを基盤としたソフトウェア・ソリューションおよびビジネス・ソリューションの提供及びマーケティングを主な事業としている。
近年、同社が注力している取り組みの1つに、AIを活用したコールセンターにおける行政DXの実現がある。その背景には多くのコールセンターが抱える課題があると、同社 公共SC本部 Advisory Solution Consultant の安齋宗一郎氏は話す。
「コールセンターは主に5つの課題を抱えていると私達は考えています。業務量の増加と対応能力の限界、多様な問い合わせへの対応、情報の正確性と更新の難しさ、人材確保とトレーニング、そして効率的な情報管理と技術の活用です」
コールセンターの現場は限られた人数で多数の問い合わせに対応することが求められ、回答のために参照する社内に蓄積された情報が最新かつ正確であることは重大な要素だ。だが、実際は多くのコールセンターでは社内で情報管理がうまくできていない、その技術がないなど、さまざまな課題を抱えるなかで稼働をしている現状があると安齋氏。
「これらの課題に対してクラウドを活用して業務効率を上げていくことが必要であり、弊社が提供するプラットフォームを活用することで課題をうまく解決することができます。現状クラウドを利用して課題を解決している自治体は多いがAIを採用することにより、さらに効率化が実現できます」
藤沢市の先行事例
クラウドコンタクトセンターを導入
既に同社のプラットフォームをコールセンターに活用して、成果を上げている自治体がある。神奈川県藤沢市は市民からの問い合わせを電話、メール、チャットなど、さまざまなチャネルから受け付けるコンタクトセンターを設けており、そのバックエンドで稼働するセルフサービスプラットフォーム「ふじまど」は同社のプラットフォームにより構築されている。
「ふじまど導入前は、電話やメールによる問い合わせを異なる場所で管理・対応をしていて、オペレーションが複雑化していました。また、回答に必要なナレッジを各課で個別に管理していたため、オペレータだけでは回答が完結せずに職員に取り次ぐことが増え、職員側が問い合わせ対応に追われていたそうです」
「ふじまど」導入後はコンタクトセンターによる住民タッチポイントを刷新している。市役所へ問い合わせを行う前に、「ふじまど」でFAQの検索ができ、自己解決につながる。自己解決できない場合は、「ふじまど」から問い合わせフォームまたはチャットに疑問をぶつけることができ、電話での問い合わせ時と同様、オペレータまたは難度の高い内容は職員が「ふじまど」に蓄積された情報やナレッジを参照して回答する。このようにプラットフォームが全ての根幹にあり、情報も集約されていく体制を確立した。
「運用から1カ月で成果が数字に表れています。職員に取り次がれる電話は3割近く減少し、職員への負荷が下がりました。市民に公開されたFAQ数は2,800件にのぼります。これらのシステム構築・運用準備の期間はわずか6カ月と非常に短く、現場の負担を減らして、市民の満足度を向上させることが可能になりました」
生成AI「Now Assist」とは
先述のようにServiceNowのコンタクトセンターを利用するだけでも高い効果がでているが、さらなる機能拡張として、同社は生成AIを活用した「Now Assist」をリリースしている。
「大きく3つの特徴があります。AI搭載のチャットボットによる自動対応が可能な『セルフサービスポータル』、コミュニケーション履歴を要約することにより必要な情報だけをピックアップできる状態をつくり出す『様々な情報の要約』、過去の問い合わせに対する解決方法をもとにFAQの記事を生成する『ナレッジの生成』です」
コールセンターで「Now Assist」を活用することで、市民、相談員、職員、管理職と、関係者全員にメリットをもたらすと安齋氏はいう。
「市民は問い合わせや手続きがスムーズになり、相談員はいつでも的確な情報を入手できます。職員は迅速な問題解決とサポート向上が可能になり、管理職は業務に対してリアルタイムで分析を行い、改善策を検討できます」
生成AI「Now Assist」により
行政DXを実現
最後に安齋氏は「Now Assist」の活用事例を紹介し、同社が描く「AIを活用したコールセンターにおける行政DXの実現」のイメージを伝えた。
「たとえば、子どもが発熱した際に母親が市のサポートを受けようと市民ポータルにアクセスし、『子育てサポート』というキーワードで検索したとします。そうするとAIが関連情報を分析し、最も重要で関連性の高い内容を表示します」
検索結果として出てきた子育てサポートにより関連記事を読み、掲載されているFAQを確認しても理解できないケースもある。そこで必要となるのがコンタクトセンターだ。
「24時間対応のチャットから問い合わせをすると、AIチャットボットが状況を分析し、子育てサポートの窓口となるコールセンターへの電話相談を提案します。母親は時間をかけずに必要なサポートへとたどりつくことができました。コールセンターで対応する職員は必要な情報を入力すると同時に、システムが提示する関連FAQや過去の類似ケースを参照しながら相談員の派遣を手配します。このようにNow Assistにより必要な情報収集と手続きを同時に行うことができるのです」
職員が利用者と通話する際は、音声通話のリアルタイム文字起こし機能があるため、職員はメモを取る必要がない。そのため、市民との対話により集中できるようになり、会話の要点を見逃すリスクも減少するという。また、AIによる感情分析機能も搭載されており、利用者の言葉から不安や焦りなどの感情を読み取り、視覚的に表現する。これにより職員は利用者の状況を理解し、寄り添った対応ができるようになると安齋氏。
「後日、相談員によるレポートをもとにメモを作成し、システムの要約ボタンをクリックすると、相談内容、経過、対処方法など一連の流れをAIが自動入力します。手作業で長文の報告書を作成する手間が省けます。また、蓄積されたレポートは、別の職員が類似したケースの対応を行う際にも役立ちます」
管理者が確認するダッシュボード画面には相談員のサポート状況や市民からの問い合わせ内容を分析し、グラフや表で出力される。各項目をクリックすることで、より詳細を確認することも可能になるという。
「このように最新のAIを活用したプラットフォームにより、職員の仕事の効率化や生産性向上など行政DXを実現することができます。また、市民サービスに対するより良いサービスの提供が可能になります」
お問い合わせ先
ServiceNow Japan合同会社
公式サイト: https://www.servicenow.com/jp/
お問合せフォーム: https://www.servicenow.com/jp/contact-us.html
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