希少な特産松阪牛の専門農家 独自の品評会開催で逆境を乗り切る

三重県中央部の多気町で、「特産松阪牛」の専門農家として5代にわたり畜産業を営んでいる松本畜産。「松阪牛」全体のわずか4%という希少な牛肉が市場に出るには、3年という長い月日が必要だ。生産・加工・販売まで手掛ける同社の松本夫妻に、取り組みの工夫や展望を聞いた。

手間暇かけて育て上げる
わずか4%の「特産松阪牛」

高級牛肉の代名詞とも言える松阪牛は、三重県松阪市及びその近郊を代表する特産品だ。一口に松阪牛と言っても、実は「特産松阪牛」と「松阪牛」の2種類がある。特産松阪牛を名乗れるのは、兵庫県北部の但馬地方で厳選された仔牛を用い、900日以上の長期にわたって肥育されたものに限られる。厳しい条件が課された特産松阪牛が松阪牛全体に占める割合は、わずか4%だ。

その「特産松阪牛」の専門農家として、5代にわたり畜産業を営む松本畜産。1800年代中頃から家畜商を始め、明治以降、但馬地方で生まれた若い雌牛を、農耕用の役牛として長期肥育することで、肉質の優れた松阪牛として生産してきた。やがて農業の機械化が進んだことで、肉用牛を専門で飼育するようになったという。

「私たちは、常時140〜150頭の牛を約3年間、じっくり手間ひまをかけて育てています。肉質の良し悪しは生育環境に依るところが多いため、牛に少しでもストレスをかけないようにする工夫が必要です。例えば、通常は3〜4頭まとめて飼育されることも多いですが、うちでは、ある程度大きくなってからは、1頭ずつ個別に十分な広さの牛房を用意しています」と代表の松本しのぶ氏は語る。

限会社松本畜産 代表取締役の松本しのぶ氏(右端)と、松本一則氏(左端)。「お肉料理カフェ まつもと」の店舗前で 

松本氏の夫の一則氏は、「牛は意外と臆病な動物なので、驚かすことのないよう、ゆっくりと体に触れながら、毎日一頭一頭に声をかけています。うちでは長期にわたって肥育しますが、短期間に太らせて出荷する方が利益率は高いです。特産松阪牛は、いわば『儲からない牛』ですよ」と笑う。

兵庫県但馬地方の仔牛を用い、900日以上長期肥育される「特産松阪牛」

ここまで手間暇をかけて育てた特産松阪牛は、どれほど美味しいものなのか。一般的な和牛との最大の違いは、脂肪の溶け出す融点にある。通常の和牛は約25度だが、特産松阪牛は約17度。それがとろけるような口当たりを生み出す。また、長期肥育によって熟成された赤身と上質なサシが混じり合い、きめが細かいことも特徴だ。そのため、噛むほどに肉の旨味がジュワっと出る濃い味わいながらも、しつこい後味が残らない。

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