今求められる 家庭教育・学校教育・社会教育の相互補完の強化
学校教育が生涯学習社会の一部として機能するためには、よりインクルーシブな学びの環境が求められている。教育機会の公平性を確保することはもちろんのこと、個別指導プログラムや特別支援教育の充実、多様な文化的背景を持つ子どもへの配慮など、多様性を尊重した教育が必要不可欠である。これらの取り組みは、学校教育が地域社会全体の成長に貢献する基盤を築く点で重要といえる。
家庭教育・学校教育・
社会教育の相互補完的関係の強化
家庭教育、学校教育、そして社会教育のいずれも、個人の生涯学習を支える重要な柱であり、それぞれが相互に補完し合うことで、より豊かな学びの社会が実現される。家庭教育では、保護者や家族全員が学び合う姿勢を大切にし、社会教育では地域の資源を活用した支援や活動を積極的に展開することが求められている。そして学校教育は、学びの基盤を形成する従来の枠組みに加え、社会教育や家庭教育と連携した新たな学びの場を提供するべきである。
このような総合的なアプローチにより、生涯学習社会の理念が実現され、個人だけでなく地域や社会全体の成長につながる未来が期待されている。このプロセスでは、家庭、学校、地域がそれぞれの役割を認識しながら、連携し合い、学びのネットワークを築くことが不可欠といえるだろう。
社会教育主事や社会教育士の専門性をさらに深め、社会教育をめぐる多様な学びの実践を支えていくためには、学校教育・家庭教育・社会教育の三つが相互に連携しながら、それぞれに固有の特質を活かし合う必要がある。過去の連載では、社会教育主事講習や生涯学習の理念、そして家庭教育や学校教育との補完関係に焦点を当ててきた。その枠組みを理解するだけでなく、具体的に社会教育が持つ「動的な性格」や、社会教育の支援対象がいかに広がっているかを捉えることは、社会教育士・社会教育主事としての実践を考える上で欠かせない。ここからは、社会教育の定義や家庭教育・生涯学習との関連性に着目しつつ、社会教育が担う役割をより多角的に整理してみたいと思う。
社会教育の多様性と
「動的な性格」
教育基本法第十二条の規定にあるように、社会教育は「個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育」として明確に位置づけられている。学校教育や家庭教育以外の教育を包括し、さらに公民館、図書館、博物館などの社会教育施設を通じて、学習機会を提供することで振興を図ることが国や地方公共団体には求められている。
実際、社会教育法第二条においては、学校教育法や就学前教育に基づく活動を除き、「主として青少年及び成人に対して行われる組織的な教育活動」を社会教育と定義している。こうした定義からもわかるように、社会教育の対象は「学校に通う子ども」だけでなく、乳幼児期にはじまり青年期から壮年期、高齢者までを含む極めて幅広い世代に及ぶのである。
社会教育は制度化された学校教育と異なり、組織化されつつある教育を多様に含むものであると考えられ、社会教育がもつ大きな特徴として「動的な性格」が見られる。ここでいう「動的な性格」とは、学習者一人ひとりのニーズに応じて柔軟に学習機会を創出し、地域や社会状況の変化に合わせてそのあり方を変容させていく力を指している。社会教育士や社会教育主事は、まさにこうしたダイナミックな学習支援のデザインに専門的・技術的なアドバイスを行い、教育行政の観点からも地域住民を力強く後押しする役割を担うといえる
教育基本法第十条では父母その他の保護者が子の教育について第一義的責任を有すると明記しているが、この家庭教育と社会教育による支援は不可分の関係にある。とりわけ近年では、「家庭教育=子どもの躾や生活習慣の指導」という単純図式を超えて、家族全員が相互に学び合う場として家庭を再定義するアプローチが注目されている。