唯一無二の「食」リゾート・「VISON」を核に地域創生
今年4月に第一期オープンを迎えた、三重県多気町の商業リゾート施設「VISON[ヴィソン]」。ホテルや温浴施設、産直市場、飲食店など、計68店舗が出店するスケールもさることながら、日本初の民間施設直結型スマートICが開通したことも話題だ。将来的には、年間800万人の来場を目指すという。
多気の潜在力と三重の食が
融合したVISONプロジェクト
三重県を代表する観光地である伊勢神宮には、毎年1000万人近い参拝者が訪れている。しかし、その多くは日帰り旅行者であり、そのインパクトを県の観光振興に活かし切れているとは言い難い。
湯の山温泉のある三重県菰野町も宿泊入込客数が減少を続けているエリアの一つだったが、10年ほど前に三重県出身の立花氏が代表を務めるアクアイグニスが、複合温泉リゾート施設「アクアイグニス」を開業して以降、活気を取り戻した。
同施設では、パティシエ界の巨匠・辻口博啓氏や地域創生で数々の実績を残すイタリアンシェフ奥田政行氏を招いて三重の食材を活かしたメニューを考案したほか、笠原将弘氏の「笠案・賛否両論」など人気飲食店を誘致。温泉地を、地元住人の憩いの場から日本中の美食家が集まるリゾート地へと格上げさせた。
「湯の山温泉での成功を見て声をかけてくださったのが、多気町の久保行央町長です。薬草の町として歴史を刻んできた多気のポテンシャルと三重県の食を掛け合わせて何かできないかと話し合う中で、『VISON(ヴィソン)』のプロジェクトが誕生しました。このプロジェクトは伊勢、紀勢両自動車道が交わる勢和多気ジャンクション近くで、東京ドーム24個分の広大な敷地に展開するというスケールの大きな話だったので、三重に縁のある企業に呼び掛け、4社共同で取り組むことにしました」と、立花氏はVISON誕生の経緯を語る。
こうして2013年に設立された合同会社三重故郷創生プロジェクトには、アクアイグニス、商業施設の開発・運営で実績のあるイオン、三重大学と共同で自然資源「本草」研究に取り組むロート製薬、金融スキームの構築に長けたファーストブラザーズの4社が名を連ねた。
また、「特定企業に紐づくのではなく、オープンプラットフォームで動かしていきたい」との思いから、味噌はマルコメ、醤油はヤマモリなど、特定分野に強いメーカーや地元商店、農林水産業者らをプロジェクトに巻き込んでいった。
「多気は昔から多くの“気(いのち)”を育む場所と言われてきた町であり、『すべては、いのちを喜ばせるために。』がVISONのコンセプトです。ナショナルチェーン店の出店や自動販売機の設置をゼロにしても、食のジャンルで圧倒的な専門性を打ち出すことで、唯一無二の商業リゾート施設をつくれると確信しています。かつて三重にあった美しい(VI)村(SON)を再現したいのです」
第1期オープンの目玉は
ミシュランシェフ監修の産直市場
今年4月には、地域経済の新たな活性化に向けて、多気町は大台町、明和町、度会町、大紀町、紀北町と共同で「三重広域連携スーパーシティ構想」を内閣府に提案し、国家戦略特区のスーパーシティにも名乗りをあげた。スーパーシティ特区構想には、既存の都市を造り変える「ブラウンフィールド」と、開発が可能な土地でスマートシティを創る「グリーンフィールド」の2つのアイデアがあるが、VISONでは様々な分野の地域課題を解決するサービスを構築することで、グリーンフィールドのコアとなり、ブラウンフィールドを牽引する役割が期待されている。
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