企業間ネットワークが創発するプラットフォーム構想

成功報酬型で企業や自治体の購買コスト削減コンサルティングを実施するPSI。数々の取引で培った知見を活かし、B2Bプラットフォーム構築に寄与するシステムを構想している。今後の展望について、現在の取り組みと合わせて代表の岡田氏に話を聞いた。

岡田 栄二(PSI 代表取締役)

インフレは多くの企業にとって死活問題

株式会社PSI(旧社名:購買戦略研究所)は企業や自治体が資材を調達する際にかかるコストを見える化し、削減の提案と実行をする、コスト削減コンサルティングのパイオニア的存在だ。2005年に設立してから、独自のノウハウを駆使して多くのコスト課題に向き合ってきた。

「当社はB2Bプラットフォーマーを目指して創業した会社で、成功報酬型を採用しています。成功報酬型のコスト削減は収益化しやすく、長らくデフレ環境が続いたこともあり、おかげ様で安定した経営を続けてくることができました。

しかし、これからのインフレ環境では、このモデルは相当厳しくなると感じています。またそれは、調達コストが高騰しても最終消費者への価格転嫁が容易ではない多くのクライアント様にとっても、死活問題であることを意味すると考えています」代表取締役の岡田栄二氏はこう語る。

これまで取引してきたクライアントは1000社を超える。ときにはコスト削減にとどまらず、組織の仕組み、企業の再生といった経営課題に直面するケースもあったという。

「購買と一言でいっても、取引の中身を見てみると実情は様々です。ビジネスの中心にいるのは、やはり人。同じ人間がいないように、同じ取引もありません。それを一つひとつ丁寧に紐解いていくうちに、その組織が抱える課題も見えてきて、解決に向けて一緒に取り組ませてもらいました」。

前述の通り、インフレ環境下での成功報酬型コスト削減モデルは難しい。その一方で、インフレによる企業からのコスト削減の相談は増加しているという。「確かに容易ではないです。しかし、そこは知恵のしぼりどころ。我々のこれまでの経験をもとに実現可能な品目を見出し、着実に成果を上げることができています。コストは経営における永遠の課題です。実質的なコスト削減を通じて、クライアント様の将来的な利益へのお役に立てられればと思います」。

取引市場を整備する新たな技術

この状況は、事業の原点に立ち返るきっかけにもなった。

「なぜ、B2Bプラットフォームが、日本ではまだ実現していないのか?という点です。中国にはAlibabaという圧倒的なB2Bプラットフォーマーがあり、世界ではGAFAがテクノロジーを用いてB2B取引を標準化し、プラットフォーマーを目指すという動きがあります。一方、日本にはいまだにそれらに匹敵するようなB2Bプラットフォーマーは存在していません。日本でもやれることがまだあるはずです」。

そこで同社では、正林国際特許商標事務所のアドバイスに基づき、知財戦略に力を入れることにした。これまでの経験を活かした新たなB2Bプラットフォームの構築のための技術開発を行い、複数の特許を取得した。そのひとつが、AIで製品の最適価格を算出するシステムだ。

そもそもB2Bプラットフォームの重要な役割は、取引全体を最適化することにあると岡田氏は語る。市場価格を把握しにくい間接材にも実際には市場が存在する。また企業間取引はクローズなことが多く、かつ複数の関連市場に影響されるため、企業が最適価格の指標を探ることは容易ではない。B2Bプラットフォームは、そのような状況に対して市場に供給される製品のデータや需給状況だけではなく、取引量や企業規模、各企業の信用度などをAIが蓄積し、最適価格を算出してくれる。更に、この特許の想定するB2Bプラットフォームは、価格水準の異なる国際市場においても有用なものになり得ると考えている。

また、同社では複数社が絡む資材の共同購入をスムーズに実現させる仕組みづくりにも取り組んでいる。「共同購入はコスト削減の有効な一手と考えられていましたが、購入者の離脱など考慮すべきリスクが多々あります。その対応策として、ブロックチェーンを活用して需給を調整し、また購入物をNFT(Non-Fungible Token)として扱い、流通と決裁ができるシステムを構想しています。次に、共同購入は購入者が複数存在すると購入要件が等比級数的に拡散しますが、拡散したとしても共同購入を成立させうるアルゴリズムを研究しました。更には、従来のBIツールに不足していた製品の仕様情報を補うシステムを、大手小売り企業のクライアント様と連携して企画し、特許を申請しています」。

図 間接材購入の分析BIツール:To-Be

①会計データ(元帳) ERPや会計ソフトの仕訳データ ②請求書の明細データ 各部署で保管しているが会計ソフトには入力しない ③商品のスペックデータ サプライヤしか持っていない

 

その他、企業間ネットワークはB2Bではなく、実質はB2P2P2Bであるという考えのもと、創発のカギとなるであろう担当者個々人を適正評価するシステムなど、岡田氏の構想は尽きない。

技術×アイデアで市場に革新を

製品や価格の情報を中間業者が占有していた時代は、多くの場面で情報の格差が生まれていた。しかし、購入する製品の数量やスペック、金額が適切なのかを各々で判断できるようになると格差は是正され、取引環境は合理化し、地方や中小企業にも事業機会が生まれる。そして日本全体の競争力が向上していくのではないかと岡田氏は述べる。

「私はB2Bの取引市場に長年身を置き、たくさんの案件に携わり、その中で生かされてきました。これからは、規模の大小や都市部・地方部といった違いを超えて、あらゆる企業がフェアな取引を行える環境を整えることで社会に貢献する、それが私を生かし育ててくれた市場への恩返しだと思っています。もちろん、自分たちだけでできることではありませんから、同じ志の方と力をあわせていけるといいですね」。

 

最近、柔道四段を取得。修練の中で新たな構想に至ることもあるという。「パワーと柔軟さ、瞬時の判断が必要である武道や格闘技からは、ビジネスに生きる気付きが非常に多く得られます」岡田氏は力強く語った。

 

岡田 栄二(おかだ・えいじ)
PSI 代表取締役

 

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