IT×営業支援で大阪のものづくり企業に伴走 VRで世界に魅せる「町工場」

後継者不足や販路開拓の難しさなどに直面する中小の「モノづくり企業」が増えるなか、ITと営業を駆使して町工場を支援しているのがMP-Strategy合同会社(東大阪市)だ。高い技術力や職人たちの人柄を世界に発信し、地域と共に未来をデザインする挑戦を続けている。

目黒 充明(MP-Strategy合同会社 代表)

東大阪出身、Uターン起業
町工場マインドを戦略で支える

経済センサス活動調査(令和3年)によると、事業所数が5564で全国第5位、事業所密度では全国トップを誇るのが大阪府東大阪市だ。とはいえ、少子高齢化の波には抗えず、年々人材の確保が難しくなり、優れた技術の承継や営業力の強化に悩む町工場が増えてきた。独自製品の開発、販路拡大などで遅れを取り、下請け体質から脱出できない中小企業が少なくない。

「若い頃は『稼ぐなら東京だ!』と思っていましたが、大阪に戻って50代を迎えてみると、家族も親も住んでいる故郷を、元気がないままにしておいていいのかな、と思うようになって。専門分野のITを生かして、VR制作や中小企業支援ポータルサイトの運営などで、中小ものづくり企業の販促や営業支援を行っています」と語るのは、東大阪市に本社を構えるMP-Strategy合同会社の目黒充明代表だ。社名は、「お客様に、こころ(Mind)と情熱(Passion)を持って戦略(Strategy)を考える」という、同社のモットーを組み合わせた造語である。

東大阪市で生まれた目黒氏は、大阪電気通信大学経営工学科を卒業後、商社のシステム開発課でプログラマーとしてキャリアをスタート。のちに営業職に転じたことで、IT市場の大きさとビジネスの可能性に魅力を感じ、外資系ソフトウェアメーカーに転職すると、日本法人で最高の売上を達成するなどの実績を上げた。その後も、ヘッドセットメーカーでは営業で結果を出し、ITベンチャーでは赤字子会社の黒字転換を果たすなど、首都圏で転職を繰り返しながらキャリアを磨いていった。

「もう融通の利かない会社員はやっていられないなと大阪に戻り、創業したのが2013年でした。ITやDXの分野で大阪はかなり遅れていたので、当初は東京からの仕事が9割以上でしたね。東大阪もアジア諸国の進出、リーマンショックなどの原因が重なって、元気を無くしているように見えました。ただ、2015年に花園ラグビー場がワールドカップの試合会場に決まり、地元企業をPRしようという機運が盛り上がってきたのです」。

真似できないから見せられる
ものづくりの可能性を世界へ

そこで、単身で行政の観光部会に参加するようになった目黒氏は、1年かけて企業ツアーのアイデアを練り行政に提案したが、なかなか思うような成果にはつながらない。そこから少しずつ、経営者団体などを通じて仲間を増やし、大学のゼミとの共同研究、市民祭への参加、町工場による自社製品の開発をサポートするためのクラウドファンディングなどに取り組みながら、みんなで応援する環境を育んでいった。まさに、「地域発展に貢献できるような企業となり、社会に貢献する」という経営理念を、一歩ずつ実行していったのである。

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