新開業相次ぐ2024年 令和のまちと新しい移動手段

全国各地で進む再開発は、まちの風景を変えるとともに、より災害に強く、温室効果ガスを出さない都市という未来を実現しようとしている。鉄道、道路や橋の開通も予定されており、2024年問題が懸念される中で、より効率の良い物流・移動が可能になる。

 

昭和の時代に建てられた懐かしい雰囲気のビルの建て替えが進み、2024年も全国で多くの新しい施設が活動を開始する。新年にオープンするビルや商業施設、新しい鉄道、道路、橋などの情報をまとめた。

高層化して生まれ変わる
懐かしのビルディング

表1 新しくオープンする施設、ビル・街区

出典:編集部作成

 

名古屋で注目されるのは、中心部・栄で工事が進んでいた中日ビルのオープンだ。先代の中日ビルは1966年に建築された、当時の中部地方最大のビルだった。新ビルは地上32階建てとなるが、低層階は長く親しまれた中日ビルの記憶を継承し、外観のイメージを残している。建物は既に竣工しているが、この3~4月にかけて正式なオープニングイベントが予定されている。

一方、2024年3月に竣工し、7月に商業施設がオープン予定のJPタワー大阪は、大阪中央郵便局跡地に建設された高層ビルだ。こちらは旧郵便局の正面部分を曳家で移動させ、建物内に残している。郵便局跡地の大規模再開発としては、東京・博多・名古屋に続く4つめとなる。

東京都内の赤坂では、ATTビルの愛称で親しまれてきた赤坂ツインタワービルが「赤坂トラストタワー」として再オープンする。森トラストが進める「東京ワールドゲート赤坂」プロジェクトの中心となる高層ビルだ。1~3階には文化発信施設「江戸ビジターセンター」を整備し、武家文化・サムライなどをテーマに展示・体験を楽しめるようにする予定だ。

オフィスビルだけでなく、新しいマンションや住宅地でも住民の入居が始まる。東京2020オリンピック・パラリンピック選手村跡地で整備が進んでいたHARUMI FLAGは、1万2000人が暮らす新しい住宅・商業地としてオープンする。この新しいまちのエネルギー源は水素だ。水素ステーションを整備し、バス高速輸送システム(BRT)や燃料電池車に水素を供給するとともに、地下のパイプラインを経由して各街区の純水素型燃料電池に供給する。分譲住戸にはパナソニックの家庭用燃料電池「エネファーム」を設置し、各家庭が使用する電気を発電する。まち全体を統一的にデザインしていることも特徴で、歩行者は地上、自動車は地下と同線を分けることで安全な街歩きが楽しめるようにした。

いよいよ北陸新幹線が敦賀延伸
北大阪急行も箕面市へ

表2 開通予定の鉄道、道路など

出典:編集部作成

 

北陸新幹線の敦賀延伸は2024年のビッグニュースといえるだろう。北陸3県で最も西側にある福井県は歴史的に中部・関西と結びつきが強かったが、今回、新幹線で首都圏と直接結ばれることで新たな交流が生まれそうだ。東側の富山県は、新幹線延伸で大阪からの所要時間が短縮される。関西圏の観光客を呼び込むチャンスといえる。また、2015年の北陸新幹線金沢開業で大きく発展した石川県は、小松駅と加賀温泉駅の2駅を新しく持つことになる。外国人観光客にも人気の金沢を中心に、北陸三県を旅行者が回遊するようになれば、より大きな経済効果が期待できる。

大阪府では北大阪急行南北線が、これまで終点駅だった千里中央駅から2.5キロメートル北へ路線を延伸する。1970年の大阪万博の旅客輸送のために開業し、千里ニュータウンと大阪市中心部を結んできた南北線に、2つの新駅が追加される。大阪市内でも不動産価格が高騰していることから、より広い物件を求める子育て世代をターゲットにした不動産開発が新駅周辺で活発化している。なお、2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の会場の最寄り駅である夢洲(ゆめしま)駅の開業は2024年度末が目標になっている。

道路網の整備も各地で進んでいる。災害時の輸送バックアップのための道路建設は国土交通省の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」で求められていた。さらに物流の2024年問題によるトラック輸送の人手不足が懸念されており、渋滞の解消をはじめとした自動車による移動の効率化が強く求められている。

中部地方では、1970年代に整備が始まった名豊道路の全面開通が目前に迫っている。静岡県浜松市から愛知県中部にかけての製造業の集積地と三河港をつなぐ一般国道で、材料や部品、製品を運ぶ重要な道路となる。全線開通後は、名古屋―浜松間を1時間40分ほどで行き来できるようになる見込み。

静岡県富士市では、富士川にかかる新しい橋「富士川かりがね橋」の開通が予定されている。富士市内の富士川下流には橋が2本しかなく、朝夕のラッシュ時に渋滞が発生していたが、河口から6キロメートル地点に3本目の橋を架けることで車の流れを分散化できる見込み。また宮城県女川市では、本土と出島(いずしま)とを結ぶ橋が開通予定だ。出島は本土と、最も狭い海峡で300メートルほどしか離れていないが、本土との移動の足は貨客船で本数が限られている。橋の開通により、漁港からの出荷が容易になったり、観光客が呼び込みやすくなったりする効果が期待されている。

新しいまちには様々な人が集まり、新しい交通手段は人流を大きく変化させる。そこには必ず新しい事業機会が生まれる。2024年の構想を考えるヒントとして使ってほしい。