脱炭素社会へ先進的な蓄電システム 社会課題に応える名門
脱炭素社会の実現に向けて、政府が再エネ比率50~60%を掲げるなか、災害対策の観点からも家庭用蓄電システムの需要が拡大、市場は成長している。蓄電システムメーカーの今後の戦略は何か。大手2社の動向を見る。
脱炭素社会を目指す世界的な潮流、エネルギー価格の高騰や電力需要の逼迫、電力自家消費やレジリエンス向上需要の拡大などを受け、定置用蓄電システムや、蓄電池とパワーコンディショナーによって系統電力の需給バランスを調整するESS(エネルギー貯蔵システム)、それらに向けたリチウムイオン二次電池などの世界市場は拡大が続く。国内でも、「2050年カーボンニュートラル」の政府方針のもと、特にEVの普及を背景としてV2H(Vehicle to Home、車から家庭へ)給電システムや急速充電器の市場が拡大している。蓄電システムなどを開発・製造する国内の代表的なメーカー、ニチコン、ダイヤモンドエレクトリックホールディングスの2社はどのような戦略を描くのか。
ニチコンは、1950年に大阪市で創業、その後本拠地を京都に移した。アルミ電解コンデンサー、フィルムコンデンサーなどをコア事業に、エネルギー・環境・医療機器、自動車関連機器、家電・産業用インバーターなどの分野で成長を続け、今日、売上の48%は海外、特にアジアが占める。
2024年度、事業セグメントは「コンデンサー」と「NECST」の2つに再編され、コンデンサー事業では、電解コンデンサー、小型リチウムイオン二次電池、パワーエレクトロニクス用フィルムコンデンサーなどの製造・販売を行う。NECSTは「Nichicon Energy Control System Technology」の略で、2010年に発足したプロジェクトを母体とし、家庭用蓄電システムやV2Hシステム、EV用急速充電器などの製造・販売を担う。太陽光で発電した電気を、効率よく家庭やEVで活用できる「トライブリッド蓄電システム」、倍速充電が行えるV2Hシステム「EVパワーステーション」は、いずれも世界初の取り組みだ。
現在、中期成長目標「Vision 2025」のもとで、特にEV用フィルムコンデンサーなど成長市場におけるコンデンサー事業の基盤を強化する一方、脱炭素化のメガトレンドを受けて独自の価値を提供する蓄電システム分野にも磨きをかけ、2025年度の連結売上高2000億円、連結営業利益率10%以上を狙う。
一方、ダイヤモンドエレクトリックHDは、ケイ素鋼板などを販売していた1925年創業の田淵電機と、自動車用点火コイルメーカーとして1937年に創業されたダイヤモンド電機を前身とし、2019年に持株会社として設立された。事業セグメントは、点火コイルや電装品などを開発・製造する「自動車機器」、太陽光発電パワーコンディショナー、蓄電ハイブリッドシステムなどを手がける「エネルギーソリューション」、家庭用冷暖房機器の着火装置などを開発・製造する「電子機器」の3つ。代表的な蓄電システム「EIBIS 7」(アイビス7)は、蓄電池とパワーコンディショナーの2ユニット構成としたコンパクトな設計の家庭用蓄電システムで、容量にも3種類を用意して生活スタイルに合わせて選ぶことができ、外部給電アダプター併用により、EV/HEVの電力を家庭で活用することもできる。
2028年3月期を最終年度とする中期経営計画「炎のスクラム」では、「車と家を、地球環境に資するものづくりでつなぐ」を新ビジョンとし、3事業のクロスチャネル・クロスセールスを通じてEV/PHVの普及や再生可能エネルギー導入拡大への貢献を目指す。また、「V2X」として、V2Hのみならず、災害時に車と家電をつなぐV2L、車と系統電力をつなぐV2Gを実現する製品群の開発も急ぎ、最終年度の売上高ターゲットを2000億円(コミットメント1500億円)に設定する。
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