脱炭素社会実現へ 地域資源とビジネスの力で未来をデザインする

連載企画「人口減少時代のGX」では、脱炭素社会の実現に向けた取組促進における地域の役割を探ってきた。市民・企業・行政のそれぞれの立場を超えた連携・協働による、脱炭素を契機とした創意工夫・共感の好循環が、地域社会を持続可能で豊かなものへと育むことが期待される。

地域資源を賢く生かして
自分ごとに

地球規模で喫緊の課題である気候変動対策について具体的な「行動」が求められるなか、地域での取組が注目されている。国においても、2021年に策定された「地域脱炭素ロードマップ」に基づいた施策が展開されるなど、地域における取組を促進する動きが広がりつつある。気候変動は、ともすれば地域住民や企業にとって抽象的で実感しにくい側面があることを念頭に、今後のさらなる促進にはこれを、自分ごととして捉えるための視点が求められている。

この点、地域における脱炭素の取組がより多くの市民・企業で実施され、その裾野が広がるには、「地域資源を賢く生かす」という視点が有効といえる。地域資源の活用は、単に環境負荷を減らすだけでなく、地域経済循環を通じた経済の活性化に貢献しうる点も、その重要な意義として挙げられる。

エネルギーの地産地消
街全体が発電所に

地域資源を賢く活用する具体的な事例の一つとして、エネルギーの地産地消が挙げられる。近年、太陽光発電設備をはじめとする再生可能エネルギーの導入コストが低減傾向にあることに加え、様々な政府による支援策が、再エネ発電設備の導入を後押ししている(表1)。自家消費によってエネルギー費用を削減できる経済的メリットも、導入を促進する大きな要因となっている。

表1 令和7年度における環境省の脱炭素関連事業と予算(案)

出典:環境省ホームページ(https://www.env.go.jp/guide/budget/r06/juten_00001.html)をもとに筆者作成

本企画では、近年開発が進むペロブスカイト太陽電池について取り上げた(図1)。ペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ薄型であるという特性から、エネルギーの地産地消を更に進め、私たちのライフスタイルの中に脱炭素を深く浸透させうる技術として期待が寄せられている。主要原料の一つであるヨウ素が日本国内で豊富に生産されていることから、国産のエネルギー源としても注目されている。加えて、ペロブスカイト太陽電池は印刷技術を用いた製造が可能であるためデザインの自由度が高く、シースルー型や樹脂フィルムへの展開も容易であり、製品全体のイメージに合わせた柔軟な設計ができる。このようなペロブスカイト太陽電池が、街の中の様々な場所、例えば建物の壁面や窓、あるいは街路灯などに設置することで、街全体が発電所となるような未来も想定されている。

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