吉村洋文・大阪府知事 万博を機に大阪経済の飛躍をめざす

コロナ禍により大阪も大きな経済的ダメージを受けたが、今後のポストコロナおよび2025年に開催される大阪・関西万博に向けて、大阪府はどのような成長戦略を描いているのか。吉村知事は、万博をポストコロナの未来を切り拓くシンボルとし、「世界一ワクワクする都市・大阪」を実現したいと語る。

吉村 洋文(大阪府知事)

「世界一ワクワクする都市」へ

――ポストコロナ、および2025年の大阪・関西万博に向けたビジョンをお聞かせください。

新型コロナとの闘いは未だ続いています。何としてもコロナを克服する。この思いを強く持って、今後も感染症対策に万全を期すとともに、大阪経済を回復させ成長軌道に乗せていくために全力を尽くします。観光や飲食をはじめ、長引くコロナ禍により打撃を受けた事業者を支えるため、消費喚起策や販路開拓を進めるとともに、中小企業等の新事業展開を支援していきます。

一方で、デジタル化が急速に社会に浸透し、生活様式の変革がサービスやビジネスモデルの転換を促すなど、新たな潮流も生まれています。こうした変化を捉え、DX人材の育成やテレワークなど新たな働き方への対応を進めていきます。

また、ポストコロナの成長を見据えたインパクトとなるのが、2025年の大阪・関西万博です。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに開かれる万博は、新たな未来を切り拓くシンボルです。万博を通じて、世界中の英知を大阪に集め、ワクワクする未来社会を描き、これからの世界を共創する場となる「世界一ワクワクする都市・大阪」をめざします。

2025年大阪・関西万博の会場イメージ。人工島・夢洲(大阪市此花区)で開催される。
画像提供:2025年日本国際博覧会協会

万博に向けて、危機を乗り越え、ポストコロナを見据えた成長を描くための戦略が、大阪市と共同で策定した「大阪の再生・成長に向けた新戦略」です。緊急に対応が必要なコロナ対策と、ポストコロナの成長に向け、経済、くらし、安全・安心の側面から必要な取組みをまとめました。この戦略を進め、大阪経済を回復軌道に戻すとともに、万博の成功はもとより、そのインパクトとレガシーを活かした大阪の飛躍に繋げていきます。そして、日本の成長をけん引する東西二極の一極として、府市一体のもと、世界に存在感を発揮する「副首都・大阪」を確立・発展させていきます。

ライフサイエンス振興拠点を形成

――産業振興においては、どの領域に注力されていますか。

世界的なライフサイエンスクラスターの形成に向け、産学官で3つの拠点形成に取り組んでいます。1つ目が、「彩都」(茨木市・箕面市)です。優れた大学、研究機関等の立地、製薬会社の集積という大阪の強みを活かした“創薬”“ライフサイエンス”振興の拠点です。2005年の医薬基盤研究所の誘致を端に、インキュベーション施設の整備や関連企業の集積が進み、国内発の遺伝子治療薬の開発など、着実に成果が生まれています。

2つ目が、「健都」(吹田市・摂津市)です。2019年に移転した国立循環器病研究センターと2022年中に移転予定の国立健康・栄養研究所を核に、“健康と医療”のイノベーション創出に向けた産学連携の拠点化をめざします。

そして3つ目が「未来医療国際拠点」です。大阪市の中之島に、iPS細胞を活用した“再生医療”などの最先端医療の提供・産業化をめざす拠点を2024年春のオープンに向け整備中です。

また、スタートアップ支援や、イノベーション拠点の形成にも力を注いでいます。2019年10月、産学官で「大阪スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」を設立しました。2020年7月には、国が進める「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略」における「グローバル拠点都市」に大阪・京都・ひょうご神戸の3都市が一体となって選定されました。拠点形成計画では、2024年度までにスタートアップ創出300社という目標に対し、2021年7月時点で99社の創出等、着実に実績を積み上げています。

スタートアップ・エコシステム形成に向けては、ユニコーンのようなロールモデルの輩出が重要です。その主役となるのが、革新的技術で世界の課題解決をめざすスタートアップ「ディープテック」です。大阪・関西にはディープテックを生み出す潜在力を有する大学や研究機関が集積しています。さらにこの4月に、大阪府立大学と大阪市立大学が統合し、日本最大級の公立大学「大阪公立大学」が誕生しました。「イノベーション・アカデミー構想」を掲げ、脱炭素・創薬等の研究を加速します。今後、大学や自治体、経済団体、金融機関等と幅広く連携しながら、大阪発のイノベーションを創出していきます。

今後の大阪発展の柱となる
国際金融都市・大阪IR構想

――大阪経済再生の柱として、「国際金融都市構想」を掲げられています。

ポストコロナに向けて経済の再生を図るためには、新たな成長の柱が必要です。金融機能の強化を図り、独自の個性・機能を持つ国際金融都市を形成することは、大阪のさらなる飛躍に繋がるとともに、日本の経済発展にも資するものと考えています。道のりは決して平坦ではありませんが、優れた企業や研究機関の集積など大阪が持つ強みを活かして着実に取組みを進めます。

こうした中、2021年3月に官民一体の推進組織を設置し、2022年3月にはオール大阪で「国際金融都市OSAKA戦略」を策定しました。戦略では、めざす都市像として、アジア・世界の活力を呼び込み「金融をテコに発展するグローバル都市」、先駆けた取組みで世界に挑戦する「金融のフロントランナー都市」の2つを掲げ、実現に向けて官民で取り組みます。

国際金融都市実現に向け、万博を機に大阪・関西のビジネス面、生活面の魅力を国内外にアピールするとともに、事業者ニーズも踏まえたサポートも「ワンストップサポートセンター大阪」を中心に充実を図り、まずはフィンテック企業や金融系外国企業を呼び込みます。そして、大阪に強みのある分野のスタートアップを金融面から支援できる体制を構築するなど、国際金融都市に向けた土台づくりを進めます。

――ベイエリアに「世界最高水準の統合型リゾート(IR)」をつくる計画が進んでいますが、進捗はいかがですか。

大阪府・市では、2021年9月にMGM・オリックスコンソーシアムを設置運営事業予定者として選定して以降、事業者と共同して12月に区域整備計画(案)を作成するとともに、公聴会等の手続きを経て、本年2月に区域整備計画として公表しました。

大阪IRでは、国内最大規模の国際会議場や、世界的なコンサート・スポーツイベント等も開催可能な展示ホール、グレードの異なる3つのホテル、世界水準のショーを楽しめる夢洲シアターなどにより、来訪者に新鮮な驚きや感動を提供することをめざしています。IRの立地により、年間約2000万人の来場者、約1兆1400億円の経済波及効果、約9.3万人の雇用創出など、非常に大きな経済効果が見込まれます。

さらに、IRを核とした国際観光拠点の実現により、夢洲が新たなにぎわいの拠点となることが期待されます。2029年冬頃までの開業をめざして、圧倒的な魅力を備えた世界最高水準の成長型IRを夢洲に実現し、大阪のベイエリアを光り輝く国際観光拠点に生まれ変わらせたいと考えています。

 

吉村 洋文(よしむら・ひろふみ)
大阪府知事