未来の事業を考える枠組 SF思考に役立つ推薦作品紹介

ビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏、バラク・オバマ氏。彼らの共通項は何だろうか?世界を席巻するリーダー? 優れたビジョナリー? そのとおり。そして、全員SF作品好きなのである。ここでは、新規事業を考える上で役立ち、ビジネスパーソンでも読みやすい作品を紹介する。

海外の起業家で、お気に入りのSF小説を持つ人は少なくない。例えばアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏はキンドルの開発に「ダイヤモンド・エイジ」(ニール・スティーヴンスン作の小説)の影響があったことを話している。

ビジネスパーソンにとってビジネス書や歴史小説と違い、SF作品は正直とっつきにくい分野ではないだろうか。宇宙戦争、超能力やタイムマシンが出てくる非現実的なイメージがあり、ビジネスや自分の未来を考えるきっかけとしては見ていないと思われる。

実は私もそうだった。学生時代には少し読んでいたものの、すっかりご無沙汰しており……。しかし、イノベーション担当として未来像に悩んでいた時、SF研究者の方々と出会い、「SF作品をどう活用するか」を教えていただき、挑戦的かつリアリティのある未来像にたどり着いた。この経験から、未来をつくるビジネスパーソンこそSFを活用すべきと思い、SF思考(後述)という本にまとめた。

事業構想に役立つSF小説

そこで今回は、「あまり読んだことないけど、ビジネスや経営に役立つならSF作品読んでみようかな」というビジネスパーソンに向けて、3つの観点から個人的に選んだ作品をご紹介する。

観点1.SF小説に馴染みが無い人でも比較的読みやすい
観点2.技術進歩による社会的変化について、肌感を持って理解できる
観点3.新ビジネスの萌芽を考えるきっかけになる

最初は、藤井太洋氏の「ハロー・ワールド」、学生時代以降SF小説から遠ざかっていた私が、久しぶりに触れ、衝撃を受けた作品である。いわゆるSF小説のイメージとはまるで異なり、「携帯アプリや仮想通貨、ドローンという現代の技術が政治や経済とどう絡み、社会をどう変える可能性があるのか」が、スピード感ある文体で描かれている。

ハロー・ワールド

  1. 藤井 太洋 著
  2. 講談社

 

IT企業に勤めるエンジニアを主人公に、広告ブロックアプリがきっかけで検閲や盗撮などの問題を描いた表題作に加え、他の短篇も必見。本作により「AIの技術進化がもたらす社会変化」を具体的にイメージすることができる。

2つ目は、踊る大捜査線でおなじみの本広克行氏が総監督を務めたアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」をコミカライズした作品、三好輝氏の「監視官 常守朱」をご紹介する。ビッグデータやAI、決済系に関連したプロジェクトに関わっていた頃、ジーマ信用など個人信用評価システムが発展した世の中はどうなるんだろうとボンヤリ考えてた。ジョージ・オーウェルの「1984年」という有名SF作品があるが、何か違う気がする。そんな中、出会ったのが本作である。

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