種苗から考える地域農業の未来 地域の食文化から品種の物語へ

消費者に高く評価される農産物は、地域農業の活性化だけでなく地域のブランディングにも役立つ。一方で、地域の様々な農家において品質を一定に保ち、誰もが欲しがるような商品とするのは容易ではない。栽培者が一丸となって高級品の地位を不動のものとしている夕張メロンを例に、農業の未来を考える。

種苗(品種改良)ビジネスには光と影がある。光はもちろん、世の中に新たな価値をもたらす新品種の供給だ。かたや影が注目されることはない。一部の業界人だけが知る影、これを詳らかにすることが明るい未来への第一歩になる、と私は考えている。

種苗ビジネスの不都合な真実

キャンプでの火起こしをイメージしてほしい。種火を着けた後、薪に乾いたものと濡れたものがあった場合にどうするか。正解は決まっている。では、この種火が新品種だった場合に、私たちは同じことをしているだろうか。

農作物の新品種は毎年数え切れないほど発表される。だがヒットする品種はまれで、細々と継続販売されるものがほとんどだ。これは加工食品、生活雑貨、ゲーム等々と同じ構造である。ところがこれらと農作物の品種とでは大きく異なる点がある。品種の方は一物一価ではなく、一物百価で消費者の手元に届いてしまう点だ。

種苗ビジネスは生産者へのBtoBである。したがって、同じ品種であっても生産者の元から流通に乗せる段階で、味・外観・重さなどの品質は千差万別になってしまうのだ。さらに需要に対して供給量が多すぎると、トラクターで畑にすき込まれるキャベツのような事態も起きる。

かといって品種の開発元が品種の供給量を制限することは稀である。なぜなら生産者が当該品種の種苗を買えば買うほど、開発元は儲かるからだ。アイドル同様、経済波及効果をもたらす品種を計画的に生み出すのは難しく、使い捨てが常態化している。一方で「開発に〇〇年の年月をかけた。〇〇の技術を用いた」などと、真っ先に紹介するPRがまかり通ってもいる。これなどは消費者メリットを示すことができない品種だと自ら認めているに等しい。当事者がやめられないのであれば、周りが厳しくその意味と効果を問うべきだ。

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