セルロース由来商品で海洋環境の負荷低減に貢献
段ボールトップメーカーのレンゴーが製造する、木材パルプ由来の球状セルロース粒子(ビスコパール®)。土壌だけでなく海水での生分解性を持つことから、プラスチックごみ問題のほか、藻場の再生や陸上養殖の効率化など、様々な産業への応用に期待がかかる。
聞き手 : 小宮信彦 事業構想大学院大学 特任教授/電通 シニアイノベーションディレクター
レンゴー株式会社 化学品・セルロース商品開発本部副本部長 杉山公寿氏(右)と
事業構想大学院大学特任教授 小宮信彦氏(左)
天然由来セロファンの
可能性を引き出す開発
小宮 まずレンゴーの事業概要について教えてください。
杉山 レンゴーは、日本で初めて段ボールを製造・販売した会社です。創業者の井上貞治郎が1909年、苦労を重ねやっとの思いで完成させた製品に、段のついたボール紙で語呂も良く覚えやすいとして「段ボール」と命名しました。当初は電球など割れやすい商品の緩衝材として使われていましたが、香水瓶半ダース入りの箱の注文が入ったのをきっかけに、「段ボール箱」を製作しました。その後、段ボール箱の量産体制を築いていきます。現在は、製紙から段ボールまでの一貫体制に加え、紙器や軟包装などの消費材包装、重包装などの事業を展開しています。
小宮 紙製包装材で幅広く事業を行う中で、ビスコパールの開発に至った経緯は。
杉山 ビスコパールは、もとは、板紙やセロファンを生産する福井化学工業(1991年に合併。現在のレンゴー金津工場、武生工場)が開発した製品です。セロファンは、木に含まれるセルロース(細胞壁の主成分)由来の、粘度のある液体であるビスコースをスリットから押し出してつくる透明フィルムです。
レンゴーが生産するビスコパールは粒径>6.5μm~4mm。世界でもこれだけのレパートリーを持った企業はない
それが石油由来のフィルムに取って代わられるようになり、危機感から、セロファン事業を維持するために研究開発を進めました。そして1980年代後半に誕生したのが、ビスコースを滴下してできる球状粒子「ビスコパール」です。微生物の働きによって分子レベルまで分解し、最終的に水と炭酸ガスになって自然に還る「生分解性」が最大の特長です。
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