スマート農業先駆者・新福青果 データ活用でさらに業務効率化を
都城市で、1998年頃から農業のスマート化を進めてきた新福青果。現在はデータの解析をして現場にフィードバックをする専任チームを抱え、本格的にデータ活用を進めている。農林水産省の「スマート農業実証プロジェクト」にも採択された同社の取り組みについて、代表の新福朗氏に話を聞いた。
高い精度で農業ノウハウを
残すため、ICTを導入
宮崎県都城市で、「スマート農業」という言葉が世に広まる以前から、農業におけるICT活用に取り組んできた、農業生産法人の新福青果。同社は約35ヘクタールの直営農場でゴボウや里芋、サツマイモ、ジャガイモ、らっきょうなどの根菜類を生産。さらに、宮崎と鹿児島の契約農家から買い上げた農作物を小売店などに卸す仲介事業も行っており、直近の総取扱量は約3300t/年間にのぼる。
新福青果のスマート農業への取り組みは、現会長の新福秀秋氏が、1976年に脱サラし、地元で就農したことから始まる。
「当時、栽培面積を広げて大規模化しようと、近隣の生産者から農地を借りたり、購入しているうちに、『作物も買ってほしい』と頼まれるようになったそうです。もともと、野菜の出来、不出来に関わらず、農協から同じ価格で買い取られ、同じ手数料を引かれることに疑問を持っていた先代は、1985年に有限会社を立ち上げ、野菜を仕入れて小売店に販売するようになりました」と2017年に2代目社長に就任した新福朗氏は語る。
その卸売業の売上が伸び、自社農園も拡大していくと、次は人手が必要になる。1995年から正社員採用を始め、従業員が増えていく中で、先代は次の手を打った。
「農業は品種によっては1年に1回しか種蒔きができません。10年間農業をしても、10回しか経験が積み上がっていかないのです。そこで先代は、貴重な1回の精度を高めるために、自分のノウハウをデータとして残したいと考えました。さらに、農業は休みもなく毎日働く文化でしたが、若い従業員に休みを与えたいと週休1日を約束したところから、ITによる業務効率化に着手したそうです」
同社がITを導入し、作業内容などをデータ化するようになったのは、1998年頃。日本ではインターネットが普及し始めた頃で、当時は苦労も多かったという。
「大きなパソコンを畑に持って行って、作業内容を表に打ち込んでいくのですが、畑なのでパソコンに砂が溜まり、すぐ故障してしまうのです。多分、10台ぐらい買い直したと思います。しかも、今と違ってパソコン本体にデータを保存していたので、買い直すと過去のデータは消えてしまい、イチから入力しないといけませんでした」
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