進化するバイオインフォマティクスで挑む創薬研究の躍進

AIは医薬の世界にも大きな進歩をもたらしつつある。情報科学を専門に、生物学や関係する医学・薬学領域の研究を進めているのが、東京科学大学情報理工学院の准教授、大上雅史氏だ。2024年、大上氏に近い研究領域の科学者がノーベル賞を受賞し、大上氏の研究にも熱い視線が注がれている。

大上 雅史(東京科学大学 情報理工学院 情報工学系 准教授)

創薬コスト削減につながる技術

大上氏の専門は生物学とコンピュータサイエンスや情報工学などが融合したバイオインフォマティクスと呼ばれる学問分野だ。端的に言えば、生物学の様々な研究で計測・観測された膨大なデータから得られた情報を分析する「道具」づくりで、近年はその道具としてAIを使う。「例えば、新たな薬剤開発の際に計算で薬効を予測できる手法や、複雑なタンパク質の形状を計算で予測する技術などの開発に取り組んでいます。医学や薬学分野では、ヒトや動物で実験することは簡単ではないので、計算機で確度の高い推測・予測ができるようにしたい」と大上氏は語る。

一つの薬を世に出すためには、数百億から1千億円以上のコストがかかる。その大部分は臨床試験に費やされるが、「最終フェーズまでこぎつけても、様々な理由で薬事承認に至らないことも多い」という。最終的にヒトに投与しないとどうなるかわからないことに力を注ぐのは並大抵のことではない。低コストかつ、人間が一つひとつ行う実験の数百倍から数千倍のスピードで答えを出すことができる計算機があれば、医薬の進歩に大きく貢献することができる。

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