エコシステム 廃瓦や廃レンガを活用して世界の都市を循環型に
石川県に本拠地を置く株式会社エコシステムは、廃瓦という、そのほとんどが埋め立て処分される産業廃棄物を、機能性舗装材に生まれ変わらせる技術を持つ企業だ。舗装材を作るだけでなく、その製造技術や舗装施工技術も、フランチャイズ方式で全国展開。廃瓦アップサイクルの「地産地消」を掲げる。

髙田 実
(株式会社エコシステム 代表取締役)
都市型洪水やヒートアイランドを
抑止する透水性と保水性
家屋をはじめ、多くの建物に使用される瓦。建物が解体される場合、瓦は産業廃棄物として扱われ、その量は全国で100万トン近くに上るという。そしてそのほとんどが、安定型処分場で埋め立てられているのが現状だ。この廃瓦を、環境負荷を低減する機能性舗装材にアップサイクルする技術を有するのが、株式会社エコシステムである。
「これからますます都市化が進むと、より多くの地表がコンクリートやアスファルトで覆われ、その結果、ヒートアイランド現象はますます深刻化し、ゲリラ豪雨等による都市型洪水の発生率は高まります。その解決策の1つとして、当社は、廃瓦を使って作る透水性や保水性を持つ舗装材の製造だけでなく、それらを製造する機械や技術、舗装施工技術も提供。その事業を通し、全世界の都市を循環型の未来都市にするというゴールを掲げています」と話すのが、代表取締役の髙田実氏だ。
廃瓦で作る舗装材が透水性や保水性に優れている理由は、瓦の多孔質にある。
「透水性があるため雨が降っても水たまりができません。とりわけ都市部では、道路などの透水性は防災や減災の大きなキーワードになっています。一方で保水性も持たせられるので、夏場、アスファルトやコンクリートから立ち上る暑さを防ぎます。路面の温度を低く保つことができるので、ヒートアイランド現象や熱帯夜を抑制できる効果もあります」
普通のコンクリートに比べて柔らかいため、脚への負担が低く、人が歩く場所の舗装材としても適していると髙田氏。これまで、公園の園路、広場、公共施設の外構など、様々な場所で施工実績を重ねている。
石川県玖珠市「すずなり館」の施工事例。舗装材の色調を調整することで見た目にも楽しい
瓦舗装材の効果をサーモグラフィで検証。外気温は34.7℃。一般的なアスファルトの道路は50℃前後まで上昇するも、瓦舗装材を使用した部分は25~28℃程度に抑えられている
フランチャイズ方式で
廃瓦リサイクルを地産地消に
エコシステムでは、廃瓦を使って作る舗装材をブランド名「K-グランド」でシリーズ化している。それぞれ、廃瓦を破砕する時の粒度や配合する材料のブレンド比率などが異なり、人が歩く場所の舗装材に適するものもあれば、車が乗っても大丈夫な製品もあり、場所や用途によって使い分けが可能だ。歩道等の舗装だけでなく園芸資材や一般住宅の犬走りなどにも利用できる。その中で、最も環境的に優れている製品が、透水性と保水性の両方を兼ね備える「K-グランドC」だ。また、「K-グランドCo」は、瓦を粉砕する際に出る砂まですべて使った舗装材で、リサイクル率が非常に高いという利点がある。髙田氏は透水性や保水性の見える化にも力を入れており、取得したデータの一部をホームページ上等で公開している。
さらに、廃瓦を使った機能性舗装材の製造ノウハウや舗装施工技術を、フランチャイズ方式で全国の建設企業等にも提供する。「重量のある瓦を、わざわざ運賃を払い化石燃料を使って遠くまで運ぶのでは意味がないため、フランチャイズで全国にネットワークを構築することで廃瓦の地産地消を進めていきたい」と髙田氏。
そこで活躍するのが車載式生コンプラント「モバコン®」だ。4tトラックで運ぶことが可能な、小型の特殊生コンクリートプラントである。一般的な生コンプラントでは製造しづらい特殊な生コンを現場で正確に計量して製造することができ、廃瓦を使った舗装材も製造可能だ。フランチャイズ加盟企業は現場が出るとモバコンをエコシステムからレンタル。エコシステムの社員がモバコンとともに現場に赴き、使用方法をレクチャーしてくれる。このモバコンはエコシステムの海外展開でも適用を検討している。海外では瓦ではなくレンガが多いが、どちらも粘土を焼いて作るという点で類似しており、瓦と同様にアップサイクルが可能だ。
廃材の地産地消を推進するために開発したモバイルコンクリートプラント「モバコン®」
「ヨーロッパはレンガを使う本家本元ですし、東南アジアや南米でもレンガを使います。建造物が解体される時にレンガが廃棄物となり、困っている状況もあります。廃材だけでなく、製造メーカーからは規格外品も出るので、これらを現地のパートナーと組み、舗装材にして施工します」
これまで、環境省の委託業務としてベトナム、JICAプログラムとしてボリビアやペルーでの施工実績を持つ。特にベトナムでは反響がよく、「日系企業や外国企業も多数進出し、サステナブルな材料や技術への要望があるため引き合いは大きい」という。
能登半島地震の廃棄物
リサイクルにも貢献したい
エコシステムは髙田氏の父親が設立し、現在は髙田氏の兄が代表を務めるゼネコン企業から派生する形で、1994年に生まれた企業だ。最初は浄水場に沈殿する砂などをリサイクルする事業から着手した。髙田氏によれば「リサイクルを事業とするという考え方は、当時としては先進的」だったという。1997年、島根県沖でロシア船籍タンカーナホトカ号が座礁した時は重油にまみれた海砂をアップサイクルし、特殊硬化剤を利用した歩道を築造した実績も持つ。
「その後次第に、建設現場から出る廃材にみんなが困っていることに気づき、このリサイクルを手掛けるようになっていきました」
今後注力したいことのひとつとして、髙田氏は地元の石川県で発生した能登半島地震による廃瓦のリサイクルへの貢献を挙げた。
「能登半島地震では推定60万トンの廃瓦が出たといわれています。あまりの量で、復興を優先するために、そのほとんどが埋め立てられていると聞きました。弊社は石川県にありながら、ここに寄与できていない。なんとかアクションを起こしたいと考えています」
廃瓦をただ埋め立て処分するだけでは処分場の負荷が上がり、「それは社会コストとなって跳ね返ってくると思うんです。私たちはあの手この手で、社会にも貢献する瓦のリサイクルを進めたいと考えています」。全国の自治体でも、できる限り自治体が受け入れやすい方法で、各地のフランチャイズ加盟企業による廃瓦リサイクルや舗装施工の実績を積み上げていきたいと髙田氏。現在19社というフランチャイズ加盟企業を増やすことも目標だ。「私たちは度々、都内での展示会等にも出展していますので、興味のある企業の方は、気軽に私たちのブースまで来ていただければうれしいです」と締めくくった。