新潟大学日本酒学センター 新潟を世界的な「日本酒学の聖地」に

2018年、新潟大学で世界初の「日本酒学」が誕生した。全10学部が領域横断で関わり、醸造・発酵から流通・消費に至るまで、日本酒に関わる幅広い分野を網羅する。日本酒学の立ち上げに携わってきた新潟大学日本酒学センター副センター長の岸保行准教授に、現在の取り組みや今後の展望を聞いた。

岸 保行(新潟大学日本酒学センター 副センター長/新潟大学経済科学部 准教授)

酒蔵数日本トップの新潟で
「日本酒学」を構築

新潟県は日本酒の酒蔵数が89と日本トップで、消費量も全国一位を誇る。そんな清酒王国で、新たな学問領域である「日本酒学」の構築が進んでいる。発起人の一人は、新潟大学経済科学部准教授で、同大学日本酒学センターの副センター長を務める岸保行氏だ。

日本酒学センターの外観(左)、県内の全酒蔵の酒瓶が並ぶ1階の展示スペース(右)

「日本酒は米を原料とする醸造酒ですが、ワインと違って糖化と発酵が同時に起こる『並行複発酵』という非常に複雑な醸造過程の中で生み出されます。そのため、日本酒造りのメカニズムについては、従来は農学分野に含まれる醸造学や発酵学、微生物学として長らく研究が行われてきました。しかし、実は日本酒は領域横断・文理融合を指向する多角的な研究に適した題材なのです」と岸氏は語る。国酒として位置づけられてきた日本酒だが、消費量は1973年を境に減少の一途を辿る。

「日本酒は若い世代にとっては馴染みが薄くなっていますが、海外では“SAKE”の愛称で人気を高めつつあります。日本酒産業全体の輸出比率はまだまだ低い水準ではあるものの、今後は海外での需要拡大が期待されています。こうした事情も背景に、日本酒を課題解決型の学びを提供する最良の題材として捉え直し、総合大学の強みを活かして様々な角度からその魅力を知ってもらいたいと考え、日本酒学を立ち上げました」

新潟大学は新潟県、県酒造組合とともに、日本酒学の国際的な拠点の形成とその発展に寄与することを目的として、連携協定を締結。この協定に基づき、日本酒学センターが新潟大学研究推進機構附置として2018年4月に設立された。当初は有志の研究者によるグループだったが、2020年1月に学長直下の全学共同教育研究組織に昇格し、新たなスタートを切った。

現在、従来の醸造学や発酵学等に加え、日本酒が消費者の手に届くまでの流通や販売、マーケティング、さらには醸造に関連する気候・風土、歴史、酒税、日本酒のたしなみ方や健康との関わりなど、様々な領域を内包した体系的学問として、日本酒学(Sakeology)の確立を目指している。

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