「民助」による実効性ある防災対策で だれも取り残さないまちづくりへ

地震や豪雨など全国で災害が頻発する中で、各自治体において防災・復旧対策の実効性をいかに上げていくかが問われている。東日本電信電話株式会社は、自治体の防災力を可視化するためのリスクアセスメントの導入を図りつつ、被災者救済モデルの構築により円滑な避難誘導や物資供給を後押しする。

通信確保から復興へ
災害対策に取り組む

防災の日を機に、東日本電信電話株式会社(以下NTT東日本)を取材した。「東日本大震災の時に、災害時用公衆電話を使って家族の安否確認ができて涙する姿を見て、どんな状況にあっても通信を守ることが使命だと強く感じました。この震災以降、当社の災害対策の取り組みは、単に通信をつなぐ使命を果たすだけでなく、“通信の枠を超えて地域と連携した課題解決に貢献する”も加わりました」と語るのは、災害対策室室長の田中英二氏。

NTT東日本 ネットワーク事業推進本部 サービス運営部 災害対策室 室長 田中 英二氏(右)、NTT-ME 社会インフラデザイン部 部長 笹倉 聡氏(左)

NTT東日本は、過去に直面してきた災害を通じて災害対策のノウハウと知見を蓄えてきた。モバイルを含めた通信が企業活動、市民生活を支え、社会インフラとしての重みをさらに増している現在、その役割はより大きくなっている。中でも自治体の災害復旧を支えるうえで大切にしているのは「通信を確保することはもちろんのこと、自治体に情報連絡員(リエゾン)を送り、正しい情報を早く一元的に収集し、それに基づいて的確な判断を行うことのできる体制を築くこと」だという。能登半島地震においても民間の力を活用して情報の相互供給による共有化が図られ、その有効性が感じられたと話す田中氏。「今後は当社グループが築いてきたノウハウ等を自治体等に提供し、共創しながら災害に強い、安心安全のまちづくりに貢献したい」と話す。

実効性のある防災対策を実現する
リスクアセスメント(RA)

そうした思いも踏まえ、自治体向けに取り組んでいるのが、防災力を可視化し、地域に潜むリスクを分析し、低減に向けた提案を行う「強靭化共創活動(防災コンサルティング)」だ。

2023年5月に、山形県置賜地域の8つの自治体と締結した地域防災の取り組みに関する連携協定を皮切りに、広域的かつ共通的な地域課題(避難所運営や備蓄等)の洗い出しや、コンサルティング等を現在、進めているところだ。

この活動に取り組む背景について、株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー(以下NTT-ME) 社会インフラデザイン部部長の笹倉聡氏は「法令上は基礎自治体が復旧活動の指揮統制を実施しなければならないが、災害が発生する度に、災害復旧を担う職員数の減少、高齢化といった社会課題が浮き彫りとなり、民間企業が保有するアセットやノウハウを地域防災にも実装させたい(民助)と考えるようになった。また、平時に自治体が担う地域サービスも、災害時を見据えたICT・デジタル化させることで、有事でのデータドリブン型の対応が可能となり、民助との組み合わせにより、地域防災の全体最適化を図っていきたい」と説明する。

まず、災害対応プロセスに基づく105のヒアリング項目をもとにRAを実施(図1)。災害発生時に備え、行動計画や物資、設備などを準備する力である「備え力」と、職員・住民が災害発生時に備えを活用し行動する力「実践力」の2つの評価軸で自治体の防災力を可視化する。その結果を踏まえ、リスク低減策の提案や実践力向上に向けたサポートを実施する仕組みだ。

図1 リスクアセスメントの調査結果

「各自治体では地域防災計画を策定していますが、より実効性のある防災・復旧活動を行うための課題分析、把握は容易ではありません。RA結果から具体的な防災・復旧対策の実装までをサポートします」と笹倉氏は話す。2023年以降、約100自治体に対してRAとコンサルティングを進めている。

その先に見据えるのが、「被災者救済ラストワンマイルネットワーク」の構築だ(図2)。これは、気象情報などの情報を一元的に集約する地域オペレーションセンター(以下地域OPC)を開設し、当該エリアに潜むリスク情報を各自治体に提供することで、自治体が避難指示や、避難所開設判断、開設後の避難者の状況把握、要避難者の救助要請や物資調達、ボランティア派遣要請などの早期意思決定が行えるようにすることが目標だ。

図2 被災者救済ラストワンマイルネットワーク

具体的には、地域住民の安否・避難状況、要支援者の救済状況などの情報と、潜在する地域リスク情報(道路・交通・浸水等)を重ね合わせ(可視化)、消防や警察、自衛隊、民生委員、ケアマネージャー、福祉課、学校、商工会、ボランティア団体へ的確に情報伝達し、優先すべき活動の確実な実施をサポートする。また、避難・救助のネットワーク構築と実装を図り、要避難者の誘導や在宅避難者を含めた被災者への物資供給等につなげる。なお、平時からもRAをふまえた防災対策の提案や、自治体各課の高度化の提案に加え、自助・共助団体との連携を強化するべく、防災訓練の企画・運営を行うなど、地域防災のトータル的な貢献を目指している。

有事で機能させるには
平時からの運用が重要

有事の時に被災者救済モデルを機能させるには、ソリューションによりネットワークを高度化し、平時から活用する仕組みを実装しておくことが必要。

地域OPCには気象情報のほか、道路、交通、人流、建物、地域住民の声(SNS等)も収集し、過去の災害データ等と組み合わせ、発災時の状況予測から、最適な避難・物資供給ルートなどの設定等、より地域にとって有益となる情報提供を実現したいという。

「今後も、長期的かつ永続的なパートナーとして、“誰も取り残さないまちづくり”に向けた共創活動に取り組むことに加え、道路維持管理のトータルサポート事業やエネルギー事業、スマート農業事業などを通じた、地域の魅力向上や地域コミュニティの共創に取り組んでいきたい」と笹倉氏は語る。

 

お問い合わせ先

NTT-ME 社会インフラデザイン部
地域あんしん推進部門 あんしん共奏担当
MAIL:social-infra-bousai-ml@east.ntt.co.jp

URL:https://www.ntt-me.co.jp

【防災Web】自治体様向けのお問いあわせ先
https://www.ntt-me.co.jp/bousai/

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