目指すは自治体の完全ペーパーレス化 クラウドで実現する「会計事務DX」

自治体においては一部の業務がデジタル化されても付随する業務が紙で行われているなど、完全なDX化は確立されていない状況がある。インフォマートはプラットフォームタイプのクラウドサービスの提供により「会計事務DX」の実現をサポートし、全ての業務のペーパーレス化を目指している。

株式会社インフォマート 執行役員 齋藤 文彦氏

国内100万社が導入する
BtoBプラットフォーム

インフォマートは、企業間の商行為を電子データ化することによりペーパーレスを実現するクラウドサービス「BtoBプラットフォーム」を開発・展開している。

プラットフォームタイプのデータ型「BtoBプラットフォーム」はワンストップによるデジタル化を実現し、自治体の業務効率化を促進する

同社執行役員の齋藤文彦氏は「国内に約300万社の企業があるなかで、現在約100万社に導入いただいています。LGWANにも対応しているため自治体でも導入が進んでおり、このサービスを利用することで民間企業との請求書や見積もりのやり取りをペーパーレスにすることができます」と話す。

自治体向けの機能は主に契約書、請求書、TRADEの3つがある。契約書の締結・管理を一元管理し、ブロックチェーン技術により、契約情報の機密性を向上させる「契約書」。「電子請求書の受取・発行のほか、支払通知機能、督促機能、消込機能などを搭載する請求書」。そして「TRADE」は見積・発注・受注・納品・受領・検収までの取引をクラウド上で一元管理し、諸取引をワンストップでデジタル化する。

「近年、決裁書や稟議書をデジタル化する自治体は増えています。ただ、それに付随する請求書や契約書、納品書、他の帳票は紙で行っているケースが多々あり、完全にデジタルにできたという話はまだ聞けていません。そこも含めてペーパーレスに向かうことが我々の目指す先です」

同社は完全なペーパーレス化の実現を自治体DXの新トレンド「会計事務DX」と定義している。その手法は大きくわけて4つあると齋藤氏は言う。

「1つ目はメール添付で請求書を事業者から送信してもらうこと。ただ、民間企業側は宛先のアドレスが変わると送れない、パスワードを毎回付けて送るのが大変という話をよく聞きます。2つ目はスキャン。紙でもらって自治体側でスキャンする方法ですが、そのデータを分けて保管しないと稟議に回せないなど、意外と手間もかかるものです。1つ目と2つ目を『電子化』と捉えている自治体は多いが、完全な効率化はできていません」

さらに進化した手段としては、3つ目の「データ型」がある。自治体と事業者で専用の仕組みを導入して、データのやり取りをする方法だ。しかし、この場合は構築費用に大きなコストがかかり、民間企業は既に別の仕組みを活用している可能性もあるなどの弊害がある。また、導入できたとしても運用・保守・問い合わせ対応の業務が発生し、どの部署が対応するかという問題が生まれる。

「多くの自治体ではだいたいここで話が止まります。そこでお伝えしているのが4つ目のプラットフォームタイプのデータ型であり、それが我々のBtoBプラットフォームです」

プラットフォームタイプのデータ型は汎用性が高く、事業者ごとに専用の仕組みを構築する必要がない、という点が大きな特徴だ。

「会計事務DXの最先端の考え方はそこにあります。現在、事業者が最も使っていて、他自治体にも汎用性があるサービスは弊社のBtoBプラットフォームです。これが最大公約数的にベターだと私達は考えています」

BtoBプラットフォームが実現できることは主に3つある。1アカウント1つの仕組みで全ての帳票(見積~発注、請求や契約書)のやり取りができる「1つのIDでデジタル化」。総務省が推進する自治体DX推進計画のなかの「デジタル社会の形成」への貢献。そして、汎用性があるシステムを導入することで民間企業の妨げにならない「地域全体のデジタルシフト」だ。

自治体DXの新トレンド
「会計事務DX」の先行事例

これらを先進的に進めている事例としてBtoBプラットフォームを導入している兵庫県多可町のケースを挙げる。

「多可町はいくつかの課題を抱えていました。まずは紙決裁による庁内決裁の時間ロス。作業量が多いうえ、紛失・盗難・第三者への情報漏洩や文書の改ざんのリスクも高く、さらに記入漏れなどによる申請取り消しや差し戻し行為にかかるタイムロスや決裁の現状が確認できないなど、支払遅延のリスクがありました。また、支出伝票の決裁は1日あたり約100件、1日延べ約1時間かかっており、全庁の支出伝票は年間2万件に及んでいました」

これらの課題を解決するために、多可町は事業者側と庁内側の両サイドから導入候補の検討を進め、最終的にBtoBプラットフォームを採用している。

「事業者側からは、ネット環境があれば利用できることや、複数の自治体や企業との取引に活用できる汎用性の高さと、シンプルな利用性をあわせもつことが大きく評価されました。また、インボイス制度や10年電子保管など、法令に対応しているところも重要なポイントだったそうです」

庁内側からは3つのポイントが決め手になったと齋藤氏は話す。

「1つ目は財務会計システムとの連携実績があり、請求データが自動連係可能であること。2つ目は取引先からデータをもらって流し込めるから作業が削減できるData to Data型。3つ目は将来的にPeppolに対応し、異なるシステムネットワークを繋ぎこみ、相互に電子取引可能な仕組みであるため、事業者の環境を妨げないことです」

会計事務DXの拡張へ向けて
柔軟に対応を行う

多可町は会計事務DXを3つのステップに分けて実行を進めた。まずはBtoBプラットフォーム導入前に、令和4年の上期から庁内決裁の押印廃止を実施。その後、電子決裁システムを導入し、請求書のPDF化と電子決裁の導入、自社サーバーへの電子保管を行った。

2つ目のステップで事業者の押印を廃止し、財務会計システムをクラウド化した。3つ目は令和5年11月より、電子請求書の取引、請求データを財務会計システムへの連携を開始し、全てのデジタル化を推進している。

「BtoBプラットフォームの導入によりオンラインで書類をやり取りできるため、スピーディーな認識共有、取引の進展が期待できて、前述した課題の解決につながっています」

今後、同社はさらに自治体の会計事務DXへ注力していく。その意気込みを齋藤氏は次のようにまとめた。

「自治体ならびに事業者の業務効率化、そして地域の生産性向上にむけて全力でサポートさせていただきたいです。例えば、会計規則の変更や新しい業務設計に向けた材料のご提供など、他自治体の事例やフォロー実績を元にしっかりとサポートさせていただく事で、加速度的に国内に広がるDX推進のお役に立ちたいと考えております」

 

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株式会社インフォマート
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