コンビナートから始める社会のカーボンニュートラル 川崎臨海部のGX

神奈川県川崎市は、4兆円という、政令市ではトップの製造品出荷額を誇る産業都市だ。その製造品出荷額の約76%を占めるのが、東京湾に面した臨海部の巨大コンビナート。産業地帯が早期から取り組んできた、水素戦略をはじめとしたカーボンニュートラル化ついて話を聞いた。

川崎臨海部は石油、鉄鋼など日本を代表する重工業の集積地として発展した。近年はライフサイエンスや環境分野の研究開発拠点なども集まってきている

全国に先駆けて水素戦略を策定
世界初の水素国際輸送も実施

川崎臨海部のコンビナートは、多くの製造業と、それを支える物流拠点などが集積している。多くの人が働き、付加価値を生み出している川崎市の経済の中心地だ。「同時に、温室効果ガス排出量についても市の中心。川崎市全体の排出量のうち、約73%を臨海部が占めています」と、川崎市臨海部国際戦略本部のカーボンニュートラル推進担当課長 江﨑哲弘氏と同担当係長、田巻潤氏は説明する。

いまは二酸化炭素(CO2)排出源となっているこの場所で、排出実質ゼロを実現できれば、社会に大きな影響がある。また、川崎臨海部にはすでに活用可能なポテンシャルもある。

「液化天然ガス(LNG)などのインフラが集積し、多数の化学企業・素材企業が立地。国内の産業用水素需要の約10分の1が川崎市臨海部に集中しているほか、パイプラインでの供給も実施されています。また、国内最大級のプラスチックリサイクル拠点も形成しており、日本全体で出る廃プラの約13%を処理できる能力があります」。

臨海部の高い産業競争力と、このような潜在能力を背景に、川崎市では早い時期からCO2ゼロを目指す取組を行ってきた。「川崎水素戦略」を全国に先駆けて策定したのは2015年。政府がカーボンニュートラル実現を宣言した2020年よりも早かった。

同市の水素戦略における事業の一例としては、NEDOの事業で、AHEAD(次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合)が東南アジアのブルネイで製造した水素を、メチルシクロヘキサン(MCH)方式というキャリア技術で川崎に運び発電に利用する、世界初の国際輸送の実証を2020年12月に実施。また、昭和電工(現・レゾナック)による実証では、使用済みプラスチックから製造した水素をパイプラインで運び、臨海部のホテルの電気と熱として利用した。実証は2022年3月に終了し、実装に向けた準備が進んでいる。そのほかにも、水素エネルギーに関する様々な実証、取組が行われてきた。

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