グループの商社機能を担うJALUX 「つなぐ」をキーワードに新価値を創出
JALグループの商事・流通機能を担う会社として誕生したJALUX。「幸せづくりのパートナー」を企業理念に、保険や不動産、ふるさと納税事業、食品事業のほか、海外空港運営など幅広い事業を展開している。人的資本経営の推進を軸に、「Challenge & Change」 の精神で価値創造に挑む同社の戦略を聞いた。

河西 敏章(JALUX 代表取締役社長)
航空会社グループの商社
人的資本経営を進める
JALUXは1962年、日本航空(JAL)の航空輸送事業を支える子会社として誕生。以来60余年、航空関連や羽田空港、成田空港を中心とした空港周りを中心に、資材調達、機内販売、機内食提案、空港内の売店運営など事業領域を拡大してきた。
現在は、航空機エンジン事業や海外空港運営を展開する航空・空港事業、保険・不動産事業などのライフサービス事業、空港免税店の運営や機内販売品の企画・調達、ふるさと納税などのビジネスを行うリテール事業、農水産物・ワインの輸入、空港で販売する弁当(空弁)の企画・製造・販売、土産菓子の企画・販売など食を中心とするフーズ・ビバレッジ事業の4つの領域で幅広く事業を展開する。
「当社は、JALの子会社でありながら、総合商社である双日のグループ会社でもあるという、ユニークな位置づけの企業です。JALグループのなかでも特に非航空領域と呼ばれる企業体のビジネス範囲は広大です」と、JALUX社長の河西敏章氏は説明する。
現在、年商規模は約3000億円、利益で約90億円。従業員は単体で約470名、連結では2500名ほどになる。
双日出身で、コーポレート部門でのリスク管理や人事部門に従事してきた河西社長は「事業は生もの」と話す。
「生ものである事業を良くするのも、悪くするのも、経営者やチーム次第、結局は人が重要です。当社の理念は『幸せづくりのパートナー』ですが、まずは社員とその家族が幸せでなければ、お客さまに貢献できません。連結子会社22社、連結で約2500名の社員1人ひとりと会うのは難しいですが、なるべく現場を回り、皆が笑顔でワクワクしながら仕事ができる環境を整える。これが、私の役目だと思っています。当社は連結経営をしていますので、連結経営ベースでの人的資本経営を実践していきたいと考えています」。
MustからWillへ
差別化の源泉は課題発見力と情熱
人財育成については、Must(やらなければいけない)からWill(やりたい)への転換を重視している。日本企業の、特に中間管理職から経営階層は、Mustが多すぎてWillが小さくなる傾向があると河西氏は指摘する。
「MustとWillをつなぐのはCan(何ができるか)です。小売業として美味しいものを食べてもらいたい、より質の高い体験を提供したい。こうしたWillを実現するには、Canを増やす必要があります。Canを増やしてWillを拡げ、最終的にMustとWillが重なるのが理想です」。
テクノロジーが進化し、戦略や解決策は、AIなどを駆使すれば、ある程度、誰でも同じ答えにたどり着く時代。他社との差別化の源泉となるのは「課題発見力と情熱」だという。
河西氏は社長就任以降、部長・課長クラスとの一対一面談を継続してきたが、当初は対話の中で「5年後の会社」について話しても、半数ほどは目の前の仕事に精一杯で未来を考えられていなかった。そこで、2025年に役員合宿を行い、30年後の会社像を議論。その後、JALUXの社員全員(単体で約470名)を対象に「JALUXの未来を語る会」を約30回にわたり開催した。「誇りの持てる会社でありたい」「地域を掘り起こせる会社でありたい」といった社員1人ひとりの未来のWillと経営方針との接続を進めている。
「会社の経営方針と、社員が自分ごととして考えた未来の姿が合致することで、Willが太くなる。それが、課題発見力と相まって未来を切り拓く力となり、会社の持続的な成長の礎になると考えています」。
「つなぐ」がキーワード
北海道とベトナムに新拠点
「Challenge & Change」 を企業文化として掲げ、新事業の創出に積極的に取り組むJALUX。近年は「つなぐ」をキーワードに、人と人、人と地域、地域と企業、企業と企業を結び、新たな事業の展開を切り開こうとしている。2026年には、国内では北海道、海外ではベトナムに拠点を設け、地域へのコミットをより強化する方針だ。
北海道とは、農水産品や菓子類などの販売や海外輸出など、以前から深いつながりを持っていた。2021年には北海道帯広市のフードバレーとかち推進協議会とJAL、JALUXの3社で包括連携協定を締結し、十勝産の食材を活用した商品開発を進めてきた。

「トカチカラ」は2022年に誕生したJALUXオリジナルのスイーツブランド
「北海道のまだ知られていない資源をさらに掘り起こし、機内食への採用や機内販売、ECやギフト、ふるさと納税などで広く紹介していく。そのための足がかりとなる新拠点です」。
現在、フーズ・ビバレッジ事業本部を中心に、「北海道ワクワクプロジェクト」を推進中。若手を中心にアイデアを募集し集まった約40案のうち4案ほどを継続。3年後にビジネス規模10億円にまで成長させるべく取り組んでいる。2025年4月には、「北海道うまいもの館」を展開する北海道フードフロンティアを完全子会社化。グループ初となる空港外の物産販売店舗運営にも進出した。
また、海外の新拠点となるベトナムについては、親日で経済成長が著しいのに加え、双日のネットワークが非常に強いこともあり、アジアの戦略的な拠点として開設を決めた。
さらに、「つなぐ」役割を持つ商社として、企業間連携にも積極的に取り組む。最近ではカネカ、タリーズコーヒーと共同で、カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet®」を使ったカップホルダーを製品化。店舗でのテイクアウト用に、2026年2月から提供が始まっている。
環境配慮型資材の普及・提案の推進にも積極的に取り組む。カネカ、タリーズコーヒーとバイオマスフィルム製の手提げ型カップホルダーを開発し、提供
Challengeの後のChangeに注目
大事なのは誰と共に進むのか
今後は、人づくり・文化づくり・土壌づくりを進めるのが、社長としての河西氏の使命だ。
「特に人づくりは短期ではできません。人が育つ仕掛けづくりと仕組みづくりが重要だと考えています」。
企業文化として掲げる「Challenge & Change」では、Changeによりウエイトを置く。
「挑戦した結果、変革していく、変えていくことが大事です。同時に、自らのチャレンジにより何をどう変えるのかという視点も大切です。そのような視座から、新たな事業、新たなイノベーションに挑める風土づくりをしていきたい」。
社会課題が複雑化している昨今、新しいソリューションの創出は、1社だけでは難しい時代となっている。
「最も大事なのは、自分が何をしたいか(Will)と、誰と一緒にそれをするのか。企業と企業、企業と社会、企業と自治体……。そのつながりの大元は人と人です。自分のWillを語って共感を呼び、共に進む『幸せのパートナー』となる。自分と周囲とをつなぐ力、それが、新しい事業の成功確率を高めていくのだと思います」。
- 河西 敏章(かさい・としあき)
- JALUX 代表取締役社長