『Logistics Shift ロジスティクス・シフト─なぜ、成長企業は物流を変えるのか』

昭和の頃から物流の現場は大きく変わっていない。本書は、そんな著者の違和感から出発する。スマートフォンやSNSが社会のコミュニケーションを一変させた一方で、10年前に著者が身を置いていた物流の現場では、依然としてFAXと電話が主役のままだった。産業の基盤でありながら、長く「変わらないインフラ」として扱われてきた領域にも、ようやく今、大きな転換点が訪れているという。

背景にあるのは、少子高齢化による労働力不足や、モノが届かなくなる「2030年物流危機」と呼ばれる構造問題である。製造業や小売業を含む多くの産業が物流に支えられている以上、その停滞は日本経済全体に波及する。本書は、物流を単なるコスト管理や現場改善の問題としてではなく、企業経営の前提条件として捉え直す必要があると説く。

その象徴的な動きが、CLO(Chief Logistics Officer=物流統括管理者)の設置である。2026年以降、企業に物流を統括する役割が求められることで、物流は「現場の業務」から「経営のアジェンダ」へと引き上げられる。IT分野でCIO(最高情報責任者)が登場したように、物流もまた経営戦略と結びつく領域へと位置づけが変わりつつある。本書は、この転換を「Logistics Shift」と呼び、企業価値を高める中核機能としての物流を描き出す。

著者らが率いる2015年創業の株式会社Hacobuは、トラックドライバー累計80万人以上、利用拠点3万カ所以上が接続する物流データプラットフォームを運営してきた。その実践を背景に、本書では企業間物流のボトルネック、サプライチェーン全体の設計、データとAIを活用した物流DXなどを具体的に解説する。さらに、CLOが着手すべき「物流改革100日プラン」や、ダイキン工業、三菱食品、日清食品といった企業の取り組みも紹介され、物流を起点に企業変革を進める道筋が示される。

重要なのは、物流改革が単なる効率化にとどまらない点である。配送の可視化や共同輸送、倉庫の自動化といった取り組みは、コスト削減だけでなく、CO₂排出量や労務環境といったCSR課題にも関わる。本書に通底するのは、物流は企業活動の裏方ではなく、社会インフラの一部として再設計されるべき領域だという視点だ。

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