jinjer HR REVEAL 2026開催 産学官でPeople Data Platformの必然性と人的資本経営の未来を議論

2026年5月20日、jinjer株式会社が「jinjer HR REVEAL 2026」を虎ノ門ヒルズフォーラムで開催した。同社設立10周年を記念する初の大規模カンファレンスで、テーマは「人事データが拓く"ひと"の未来」。散在する人事データを集約し経営戦略に結びつける「People Data Platform(PDP)」の構造的価値を提示することが狙いである。当日は、jinjer代表取締役社長CEO 冨永健氏とCPO 松山雄一郎氏によるオープニング、経済産業省 産業人材課長 今里和之氏、慶應義塾大学講師/山形大学客員教授 岩本隆氏、冨永氏、人的資本経営推進協会代表理事 佐々木裕子氏による基調講演に続き、AとBの2トラックで複数の事例セッションが並行して行われた。

オープニングで冨永氏は、人件費を従来の「コスト」から「投資」へと転換し、客観的データに基づく人材政策と、AIによる人材ポテンシャルの最大化が、これからの人事部門のあり方だと位置づけた。jinjerは2026年4月に勤怠管理を含む労務領域のサービス強化を進め、採用から退職まで人材データを一気通貫でカバーする体制を整えたと報告。データ統合の要諦として、1システム1データベース、人事マスターの単一化、AIフレンドリーな設計の3点を挙げ、権限統制まで含めたデータ基盤こそが、AIを前提とした人事経営の前提条件だと強調した。AI設計においては「ヒューマン・イン・ザ・ループ」(最終判断は人間が下す)と「ホワイトボックス化」(判断の根拠を説明可能にする)の2原則を紹介。退職予兆スコアリング、モバイルアプリ型の人事AIアシスタント(本年夏より提供開始)、人事業務のオートメーション、マネージャー向けの評価支援・面談記録自動生成・等級と実績の整合性チェックなどの新機能を発表した。

基調講演では、佐々木氏のモデレートのもと、産学官3者が人的資本経営の現在地を語った。今里氏は、日本で長らく人への投資が低迷してきた経緯と、人材版伊藤レポートおよび有価証券報告書での開示義務化が経営の意識を動かした流れを振り返り、一方で開示自体が目的化し、本質的な競争力強化につながらない事例も少なくないと指摘した。経済産業省が2026年3月に公表したデータでは、AIの普及により事務職の需要が大きく減り、AIを活用する人材や現場で手を動かす人材の重要性が高まる構造変化が示されている。今里氏はシンガポール政府のスキルフレームワーク事例を引き、データと生成AIにより、長年掲げられながら実現できなかったスキル可視化と労働移動の好循環を、いよいよ実装できる段階に来たと述べた。岩本氏は、AIによって会計や人事の業務領域が自動化される時代に、管理間接部門ではなく経営に貢献する機能としての「コーポレートエグゼキューション」概念を提示。CEO・CFO・CHRO・CDOらの「CXO連携」とピープルアナリティクスを支えるデータ基盤として、People Data Platformの必然性を説いた。冨永氏は産業界の視点から、企業のリソースのうちモノとカネは見える化が進む一方、人だけは定量データが乏しく取り残されてきたと指摘。生成AIの非構造化データを構造化する能力を活用し、人の特徴やスキルを抽出する「人の可能性のすべてを見える化する」世界の実現を産学官で進めたいと結んだ。

基調講演後は、A・Bの2トラックで事例セッションが並行開催された。セッションA-1「人事戦略を武器に変える本質――タレントマネジメントはなぜ『形』で終わるのか?」では、ディー・エヌ・エー ヒューマンリソース本部本部長 菅原啓太氏、JBCCホールディングス執行役員CHRO 山﨑亙氏、jinjer CPO 松山雄一郎氏が、システム導入の目的設定とデータ設計の勘所を議論。セッションB-1「分断から統合へ。統合型人事データベースがもたらす実務の一貫性」では、社会福祉法人西春日井福祉会 法人事務局総務課係長 奥原剛志氏、jinjer 人事本部労務部ジェネラルマネージャー 井上千尋氏、kubellパートナー執行役員CAO 角田剛史氏が、1システム1データベースによる業務改革の実践を共有した。

後半のセッションA-2「業務効率化のその先へ――経営戦略を実現するデータドリブンな人事戦略推進」では、ベルーナ取締役専務執行役員 安野雄一朗氏、冨永氏、EYストラテジー・アンド・コンサルティング ピープル・コンサルティング アソシエートパートナー 髙浪司氏が、人事データ統合による経営戦略推進の実例を提示。セッションB-2「AI時代に求められる人事のスキルとは――経営と現場を繋ぐ『人事データの設計・構築力』」では、燈データアナリティクス ピープルアナリスト 佐久間祐司氏、jinjer 人事本部本部長 御厨陽明氏が、人事に必要なデータ設計・構築力について議論した。あわせて、ソフトバンク株式会社による「社員が『最高の自分』でいられる環境を」、株式会社タレンティオによる「採用と労務を、データで繋ぐ――jinjer×Talentioが描く新しい人事の形」のスポンサーセッションも開催された。



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