VFXと技術革新で映像制作を進化 業界分散とチーム制で成長する株式会社白組の経営戦略

(※本記事は「関東経済産業局 公式note」に2026年4月14日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

“良い映像をつくりたい”その想いが導いた経営のかたち~株式会社白組~

経営者の情熱を発信する“Project CHAIN”第63弾。

今回は、株式会社白組の小川洋一(おがわよういち)社長にお話を伺いました。

VFX(※)をはじめ、様々な技術を駆使して人々の心に残る映像を作り出す白組ですが、その卓越した経営手法についてあまり語られる機会がありませんでした。

小川社長は“たまたま運が良かっただけ”と振り返りますが、今回は「より良い映像のための技術革新」や、「特定の業界に依存しないポートフォリオ」、「マルチスキルなチーム制」など技術革新や社会情勢変化の荒波を乗り越え続けてきたその経営手法に迫るべく、白組の調布スタジオにお邪魔しました!

なお、本インタビューは、東京中小企業投資育成株式会社の紹介により実現したものです。

(※)VF:「Visual Effects」の略で、実写映像に視覚的な効果を加える技術のこと

“Project CHAIN”バックナンバー一覧

より良い映像のための技術革新

撮影機材が所狭しと並ぶスタジオ内
撮影機材が所狭しと並ぶスタジオ内

──白組といえば、アカデミー賞を受賞された「ゴジラ-1.0」をはじめ、VFXのイメージが強かったのですが、撮影機材やミニチュアの資材がたくさん並んでいて驚きました。

そうおっしゃる方が多くいますが、白組はVFXだけに拘ることなく、長年にわたって取り入れてきた様々な技術を駆使して映像を制作する会社です。

私が入社した1980年代はフィルムの時代で、「手作業による技術を身につければ、ずっと食っていける」と言われていました。しかし、ほどなくしてビデオテープの時代が到来し、やっとの思いで習得したフィルム向けの撮影技術の価値が失われてしまったことにとてもショックを受けたことを覚えています。

続いて1990年代には、CGをはじめとするデジタル技術の波が押し寄せてきました。元々、白組にはCGのノウハウが無かったのですが、スタッフは皆、「より良い映像を作りたい」という強い想いを抱いていたことから、新しい技術に対しても前向きで、キャッチアップするのに多くの時間はかかりませんでした。

2000年代に入ると、CG技術が発展したことで長尺の映像制作が可能となったことをきっかけに、ゲーム業界に参入しました。ゲーム用の映像制作には膨大な作業が必要になるため、社員数も増加、組織は拡大していきました。

各時代を振り返る小川社長
各時代を振り返る小川社長

特定の業界に依存しないポートフォリオ

──各年代それぞれに大きな波があったのですね。

はい、現在は急速に拡大している生成AIの波を乗り越えるため勉強中です。

また、各時代を経て転換したのは技術だけではありません。私たちが映像制作を手掛ける業界も、CM、ゲーム、アミューズメント等と拡大していきました。思えば、この業界の分散こそが白組を支える安定的な基盤となりました。具体的には、TVゲームの需要が減った一方で、スマホゲームの需要が拡大したこともありましたし、コロナ禍で映画の需要が落ち込んだ時期には、TVや配信サービスの需要が増加しました。このように特定の業界・依頼に偏らないことが白組の成長・発展に繋がり、また、自由に白組らしい映像を追求できる環境にも繋がったと感じています。

部門制ではなく「マルチスキルなチーム制」

──昔から映像制作を志していたのでしょうか?

私は学生時代からCM映像に興味がありました。当時のCMは数十秒の短尺に多額の資金がつぎ込まれ、人々を惹きつけるものが多かったです。そこで、はじめにCM制作会社へ就職しました。その後、とあるCM制作の際に白組と一緒に仕事をすることになったのですが、そこで目にしたアニメーション技術に興味を持ち、白組に転職しました。

白組の入社後、主にプロジェクトマネージャーとしてマネジメント業務に従事し、現在に至ります。

──なるほど。では、白組のマネジメントはどんなところに特徴がありますか?

現在、白組ではあえて映画、CM、ゲームといった業界毎に部門を分けていません。会社全体で8つのチームを配置し、各チームで複数の業界を兼任させる体制としています。これにより、ある業界で培った技術を違う業界での映像制作に活かすことが可能となり、スタッフの幅広い技術の習得・レベルアップに繋がっています。

また、各チームの規模を小さくするとともに、権限を委譲しています。その結果、各チームの自由度は高くなりますし、迅速な意思決定も可能となります。さらに、チーム間で競争してより良い映像を作ろうという雰囲気も醸成されています。

小川社長 明るく和やかなオフィス内
明るく和やかなオフィス内

監督は工場長!?──「チーム単位での分権化」

──このような現場の自由度の高さが素晴らしい映像を生み出す要因である一方で、これをマネジメントするのは大変ではないですか?

マネジメントは基本的に各チームのリーダーに任せています。例えば、山崎貴監督の映画であれば、彼に任せています。通常、映画監督は社外の人であることが多いのですが、山崎貴監督は白組の社員です。一社員として白組の制作現場を理解しているので、無理な注文はせず、でも妥協せず、良い映像を作り上げてくれます。山崎貴監督はいわば、優秀な「工場長」みたいなものです。リーダーを務めている人材はそういった「工場長」ばかりですので、基本的には彼らに一任しています。

──工場長!?まるでものづくり企業のようですね!

そうですね。うちはCG、VFXだけの会社ではなく、あらゆる技術を駆使して“よい映像”をつくる会社であると自負しています。

山崎貴監督と小川社長 次回作制作の合間にお邪魔しました!
山崎貴監督と小川社長 次回作制作の合間にお邪魔しました!

これからの作品づくり

映画『GAMBAガンバと仲間たち』のノロイのモデル
映画『GAMBAガンバと仲間たち』のノロイのモデル

──これはノロイですよね。作りが精巧で驚きます。でも、昔アニメで見ていたノロイとは形が大分違うような気が…

2015年にリメイクした「GAMBA ガンバと仲間たち」のノロイは、3Dで動かした時に臨場感が出せる形状にしました。これは形状を確認するために作成したモデルです。

今、世界中で日本のアニメが人気ですが、その多くは「セルルック」という「3DCGでありながらあたかも手描きアニメで描かれたように見える手法」で描かれたものです。もちろんそれも良いのですが、私は、白組が手掛けた「STAND BY ME ドラえもん」のような3D感のあるアニメ作品でも世界を驚かせたいと思っています。

白組には映像制作が「仕事であり、趣味である」というスタッフが沢山います。私もそうです。今でも時折、コマ撮りのような手作りのアニメを制作することがあります。

──今も手作りのアニメも制作するのはどうしてですか?

単純に「作りたいから」なのですが、その一方で、このようなアナログ技術の価値が見直される日が来るかもしれません。最新技術だけでなく、手描きやミニチュア制作といったアナログの技術もできる限り次世代に繋いでいきたいです。

ミニチュア等が生まれるものづくりの現場
ミニチュア等が生まれるものづくりの現場

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関東経済産業局 公式note