いすみ市 学校給食を基盤に、有機米の産地づくりに成功
房総半島南東部に位置するいすみ市は人口約3.7万人、里山・里海の暮らしが残る小さなまちだ。同市は2017年に学校給食の全量を地産有機米に切り替え、有機農業の先進自治体として知られるようになった。有機農業の産地形成までの歩みを、同事業を主導してきたいすみ市農林課の鮫田晋氏に聞いた。
環境保全×産業活性化は
コウノトリとの共生が手本
千葉県いすみ市は、2005年に夷隅郡夷隅町・大原町・岬町が合併により誕生した。多くの地方都市と同様に、高齢化や人口減少の課題を抱えていたが、2017年に学校給食の全量にあたる42トンの米を、地元産の有機米「いすみっこ」に切り替えたことがメディア等で話題となって脚光を浴びた。現在では、自然に恵まれた暮らしやすい風土とも相まってイメージアップに成功し、移住希望者が集まるブランド米の産地となっている。
同市における有機農業推進の発端は、2010年の関東広域自治体間連携「コウノトリ・トキの舞う関東自治体フォーラム」にさかのぼる。兵庫県豊岡市の「コウノトリと共生するまちづくり」に感銘を受けたいすみ市の太田洋市長(現在5期目)が、公民協働で環境保全型農業を推進する組織体制を整えようとトップダウンで呼びかけ、2012年に「自然と共生する里づくり連絡協議会」を発足。副市長を会長に、JAいすみの組合長を副会長に据え、協議会内には水稲生産者で構成する「環境保全型農業連絡部会」と環境NPOで構成する「自然環境保全・生物多様性連絡部会」を設置した。
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