豊岡観光DX基盤で地域の宿泊予約を可視化し、経営改善に繋げる

兵庫県豊岡市の城崎温泉で2022年3月、各旅館の予約・宿泊データを自動で収集・分析するプラットフォーム「豊岡観光DX基盤」の利用がスタートした。各旅館のデータを共有し、地域全体や他施設の傾向を参考にしながら、宿泊プランの企画や従業員のシフト管理などに生かしていこうという試みだ。

島津 太一(一般社団法人豊岡観光イノベーション 事業本部長)

予約データ共有を可能にした
「共存共栄」の精神

兵庫県北部に位置し、開湯から1300年以上の歴史を誇る城崎温泉。7カ所の外湯を歩いて巡る「外湯巡り」発祥の地として知られ、行ってみたい温泉ランキングでは常に上位を占める人気の温泉地だ。

城崎温泉の中心を流れる大谿川。川沿いを浴衣姿でそぞろ歩くのが醍醐味

「その一方で、城崎温泉は周辺の観光地に比べ、観光消費額や平均宿泊日数が少ないという課題を抱えていました。観光消費額単価の向上や、長期滞在化に向けた施策を模索していましたが、それぞれの宿泊施設が長年の勘と経験に基づいて宿泊料金を決めていたので、科学的なデータに基づいて決めるべきだという声が旅館の経営者らから上がっていました」と豊岡観光イノベーション事業本部長の島津太一氏は語る。

「若手旅館経営者らとともに、旅館が持つ予約・宿泊データ収集のためのシステム基盤の構想を具体化させていきました。その動きに拍車をかけたのが、コロナ禍です。自主的に休業する旅館もあり、温泉街全体を危機感が覆いました。生き残りのためにも、経営資源をいかに効率的に回していくかをさらに考えるようになりました」

こうした背景のもと、2022年3月に豊岡観光イノベーションを事務局とする豊岡観光DX基盤推進協議会が発足した。

地域でデータを共有するということは、企業秘密でもある自施設の情報をオープンにすることでもあるが、城崎温泉に根付く「共存共栄」の精神により一枚岩となり、実施することとなった。1925年に発生した北但大震災では、城崎温泉の温泉街全体が焼失したが、住民は復興にあたり自らの土地を1割ずつ町に寄付して、まちづくりをやり直したという歴史がある。また、城崎温泉ではまちを「一つの旅館」と捉える考え方が浸透。客が宿泊する旅館だけに留まるのではなく、7つある外湯めぐりをすることで、商店や飲食店、ひいてはまち全体が潤うという考えが根付いている。「駅が玄関、道は廊下、旅館が客室、外湯は大浴場」といわれる所以だ。

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