欧州の気候変動対策の実態 危機感に裏付けされた価値感の転換

このまま気温の上昇が続けば、日本でも沿岸都市は洪水などの被害に見舞われるようになる。危機感を持った気候変動対策で日本の先を行く欧州の環境施策と、環境への取り組みで欧州最先端を行く企業の活動を紹介する。

スティーブ・モリヤマ(事業構想大学院大学 客員教授)

激しいゲリラ雨のなか、タワマンや高層ビルの間を小舟を使って人々が移動している。都心の元住人のうち、中流以上の人たちはすでに郊外に引っ越してしまっていて、タワマンはもはや高級イメージではとらえられていない。移住する余裕のない人たちだけが都心にとどまり、かつてのベニスのように人々は水上交通による移動を強いられている。もちろん、ベニスと違って、なんの変哲もないボートに乗客がすし詰めにされている。それでも東京がましなのは、まだベニスのように水没していない点だ。

2019年11月、イタリア・ベニスは記録的な高潮に襲われ、全市で浸水被害が出た (Photo by Ihor/Adobe Stock)

ここ何年も毎年のように新しいウイルスが世界的に猛威をふるい、こんな3密の船に乗るのはご免こうむりたい。しかも、乗車率が高すぎて、船の端っこにいると、大雨で服がずぶぬれになってしまう。でも、他に移動手段がないから仕方がない。制御不能となった地球温暖化加速により、そんな風に変わり果てた東京の姿を想像することができるだろうか。

日本でも「ネット・ゼロ」や「サステイナブル」をはじめ、環境関連の様々な横文字が日本語の語彙に入って久しい。だが、人類が気候変動対策を怠った場合に被る問題について、具体的にイメージできている人はどれだけいるのだろうか。

筆者は欧州で30年以上仕事をしているが、「気候変動対策について、欧州と日本の最大の違いは何か?」と問われれば、躊躇なく、今そこに迫りつつある気候変動危機について、圧倒的リアリティをもって最悪のシナリオをイメージできている人々のリーダー層における割合と答えるだろう。

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