KGモーターズ 超小型モビリティで脱炭素社会へ貢献

広島発のKGモーターズは、環境性能が高く、原付と同等の維持費で所有できる超小型モビリティの開発を進めている。また、その開発過程をYouTubeで配信するという、従来の自動車メーカーにはないPR戦略でも大きな注目を集めている。開発秘話や同社の成長戦略を、社長の楠一成氏に聞いた。

楠 一成(KGモーターズ株式会社 代表取締役兼CEO)

開発過程をYouTubeで公開し
注目を集めるEVメーカー

日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル実現」に向けて、自動車メーカー各社が電動化でしのぎを削っている。しかし、現在開発されている電気自動車(EV)の多くは、長距離移動を視野に入れたバッテリーの大型化を進めており、製造時にも廃棄時にも大量の二酸化炭素を排出している。そうした中、「楽しさを追求したモビリティで脱炭素社会を実現する」をビジョンに掲げ、世界に通用するEVメーカーを目指しているのが広島発のスタートアップ、KGモーターズだ。

代表の楠一成氏は、呉市の出身。元々は自動車のアフターマーケットパーツ開発の会社を経営していたが、共同経営者に経営権を譲り、2022年7月にKGモーターズを創業した。脱炭素の世界的な潮流を受け、2018年から小型モビリティ事業に本格参入するに至った。

「学生の頃に新聞配達をしていたのですが、呉市は道が狭くて坂が多いため、全て歩きで配っていたので大変苦労しました。また、住民も軽自動車のミラーを畳み、タイヤの半分を側溝の上に乗せてようやく通れるといった状況でした。そんな日常を目の当たりにするうちに、日本の道路事情に合った1人乗りモビリティをつくりたいと考えるようになり、当時から構想を温めてきました」

小型モビリティ事業の開始にあたり、楠氏がまず打ち出したのは、YouTubeでの動画配信によるPR戦略だった。配信を開始した当初は車やバイクのカスタマイズをネタに、車の楽しさを伝えるような動画を作っていたが、2020年秋に小型モビリティの開発を宣言し、開発過程を動画で積極的に発信していった。大手メーカーでは考えられないアプローチだが、そのおかげでマスコミに取り上げられる機会が増え、チャンネル登録数は右肩上がりで増加した。

「例えばテスラは広告宣伝費を使わずに直販だけで成長を続けていますが、リソースの足りないスタートアップこそ、これを見習うべきです。YouTubeを通じて発売前からファンを獲得したり、開発への協力を申し出てくださる専門家や企業が現れたことは、非常に大きな収穫でした」

現在KGモーターズが開発中の1人乗りモビリティ「Minimum Mobility Concept」。2024年に実証実験としてモニター車のリースを行い、2025年頃から量産予定

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